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脱出

引き続き魔王様の隠れ家。

カンペ―キには新たな隠れ家を任せることに。

ここが手狭になったと言うのが表向きの理由。

実際は三体が一堂に揃う場所がどうしても必要だから。

そこを最後の場所に。最終決戦にと決めている。

このことは手下にも魔女にも国王にも秘密。

悟られてはいけない。ただカンペ―キのことだから何か感じ取ったかもしれない。


「十日以内に完成させろ。できるな? 」

無理な注文だがこれくらい応えられるのがカンペ―キ。

それにもう本当にいつこの世界が消滅するか分からない。

できるならあと五日以内には完成してもらいたいのが本音。焦らせても仕方ない。


「ただの隠れ家なら問題ありませんが魔王様がお寛ぎになられるのでしたら……」

「いやスピード重視だ。安全で誰にも知られない隠れ家を作って欲しい」

「ははあ! 仰せのままに! 」

「よし下がるがいい。おっと忘れるところだった。

眠り病について分かったことはあるか? 」

これはボクがうまくやって行けるようにと女神様が広めたもの。


「徐々に広がってる模様です。我が部隊も罹った者が数名。

現在回復していますのでどうぞご心配なさらずに」

カンペ―キに任せておけば問題ないだろう。

さあそろそろ眠るとしよう。


宮殿。

地下牢では特にやることもないのでのんびり寛ぐ。

「おい起きろ! 」

不機嫌な見張りが近づいてきた。

「どうだった? 奴らは逃げ帰ったろ? 」

カンペ―キを使って襲撃者を追い払った。

警備も我が隊も駆り出されたはずだがそれでも大して戦わずに勝利を収めたはず。

何も知らない者からしたら奇跡だと騒ぎたくもなる。

実際何が起きたのかどうなったのか誰も理解してない。

離れた本隊がやられて襲撃者は逃げ場を失い戦意を喪失し投降しただろう。

この地下牢からでも手に取るように分かる。

それこそがカンペ―キの華麗な技によるもの。


「どうしたんだ? 元気がないがまさか陥落する方に賭けたんじゃ? 」

見張りは返事をしない。俺が寝てる間に優勢な方に賭け直したんだろう。

そのままにしてればよかったものを。

もうダメだと。この牢も破られるとの見方が優勢だった。

それが敵勢が追い返され宮殿は大した被害を受けずに済んだ。

兵士も無傷とはいかないまでも大怪我する者もなく行方不明者もいない。

当然敵に捕まった可能性もあるが完全勝利に近いだろう。

奴らは我々と戦ったのではなくモンスターに駆逐されたのだ。


「ああ…… 有り金を全部つぎ込んだ」

白状してしまう見張り。

彼もやはり人間。勝つ方に賭けるのが当然。しかしな…… 

「あんた自分とこが負けると本気で考えたのかい? 」

爺さんが落ち込んでる見張りをここぞと追い詰める。

自分だって陥落する方に賭けてるくせによくやるよ。

「うるさい! 誰が負け戦に参戦するかよ! 」

どうやら我々の隊を見くびっていたらしい。


「ははは…… 爺さんだって結局負ける方に賭けたろ? 」

囚人たちがはしゃぐ。

「うるさい! 今は儂は関係ないさ」

他の奴は突破されると読んだらしい。本当に情けない連中だぜ。

こいつらは一体何を考えてるのだろうか?


完勝で気分がいいところで一つ提案してみることに。

「ボクを今すぐここから出してくれないか? 」

見張りと交渉。賭けに負け落ち込んでるこのタイミングがベスト。

「はああ? 何を言ってるんだお前は? ここは宿じゃないんだぞ」

見張りは笑う。

「いいのか? ボクを出さないと後悔することになるぞ」

こうやって脅して相手の出方を窺う。

「お前バカなのか? 誰が囚人を出してやる奴がいるんだ? 」

「勝手にしろ! しかし手柄を立てることも可能だ」

「手柄? いや俺の任務はお前らの監視だ。

お前も余計なことばかり言ってないで大人しくしてろ! 」

まったく相手にされない。仕方ないか。


「いいんだな? この宮殿がどうなっても」

ここにいるのは裏切り者かもしれないが罪人などでは決してない。

ただ作戦中に失敗して反省させられているだけで誰一人として犯罪者ではない。

だからこいつらは大げさに言えばボクの忠実な部下であり仲間になり得る。


「ボクが進言して国王を導く。それで文句ないだろ? 」

「ああ…… 分かった。とりあえず話だけでもしてみる。大人しく待ってろ! 」

やる気のない見張りが重い腰を上げる。


三十分後に見張りが戻って来た。

どうしたのだろう? 汗が滴り落ちているが。

何か言われたか? 何かあったか?

「国王様の命だ。お前を解放する。大人しくついて来るがいい」

どうやら予想外で震えてるらしい。


「さあ着いてこい! 」

そう言って生意気を言う。だからあえて動かない。

これで見張りは追い詰められることになる。

「どうした? お前の希望だろうが」

見張りは冷静を装っているが内心では震えてるに違いないのだ。

その証拠に足がブルブル。

何て情けない。俺はただの勇者で魔王様なんかじゃない。

魔王様が板についてつい誤解されるように振る舞っていたか?


「お前はボクの力を恐れている。違うか? 」

もう限界の見張り。

「済まん許してくれ! 俺を見捨てないでくれ」

どうやらここまで来ると上はボクを隊長に戻す算段をしているんだろうな。

だからボクに追い詰められると思ってるんだろうな。


少しからかうことに。

「見張りはいいのか? 」

「ああ放っておいて問題ないだろうよ。さあ早くしろ! 」

まだ己の立場が分かってないらしい。

「一つ頼みたいことがあるんだが」

「ああん? 何を…… おっしゃってるんです? 」

明らかに態度が変わった。


「閉じ込められてる者を解放してやりたい…… 」

五人の仲間がいる。きっと我が部隊のために体を張ってくれるはずだ。

「無茶を…… 分かった聞いてみる。いやあんたが聞いたらいいだろ? 」

もう自由だから勝手にしろと止めも勧めもしない。

こうして我がままが通ることに。


囚人たちは悪人ではない。作戦中にヘマをしただけと。

だから仲間として取り入れるにもさほど戸惑いはない。


                続く

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