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疑問点

引き続き魔王様の隠れ家。

なぜ我々はアーノ姫を?

ふとした疑問が頭に浮かぶ。

別に姫なら他にも。なぜアーノ姫を選んだのか?

今一度初心に戻り疑問点を取り上げて行く。

それがこの世界の消滅回避に繋がるかもしれない。


「嫌ですか魔王様? 」

「そうではない! ただ迷っておるのだ」

あの可憐で上品で美しい神聖なアーノ姫を我が妃にしていいのか?

相手はこの魔王様なのだぞ? 醜くて凶暴で残忍な魔王様では釣り合わない。

そんなこと最初から分かってるのだが。だからこそ。


「ははは…… 魔王様がですか? 」

冗談だと思われてるらしい。でも本気なのだ。

どうしてもアーノ姫を狙った理由が知りたい。

ただ気に入ったからだと言うならそれはそれで構わない。

しかし別に何か意図があるのだとすれば知っておかなければ。


「そんな時もあるだろう? 」

「ご心配なく。そう言う設定と言うだけです」

訳の分からないことをさも当たり前に。できるなこいつ。


「設定と言うのはこの世界のルールのことか? 」

「はい。この世界を作られた時にバランスを保つために創造されたと聞きます」

奴の言うことが本当なら女神様がすべて知っていることになる。

でもなぜか詳しくは何一つ。たぶん妖精の役目。

手を抜いていたな? そう考えるのが自然。

きりがないだとか知らない方が面白いだとか。

適当な理由をつけて重要なことを隠していた。そうに違いない。


「ではなぜたかが一国の姫と契りを結ばなければならない? 」

「それは魔王様がどうしてもと言うから…… 考えでも変わりましたかな? 」

疑いの目を向けられる。心外だ。この魔王様に逆らうつもりか?

どんなに怪しまれようと魔王様は魔王様。多少変でもごまかせる。

「そうではないがまあいい。会えずにいるのは辛いものだぞ」

これ以上怪しまれては困るので切り替える。


しかし隙を見せたために追及されてしまう。

「クマルの話では魔王様の指示で連れて来るなとのことでしたが」

ううう…… クマルの奴め。余計なことをべらべらと。

そう言えば口止めはしていなった。クマルが自慢する顔が浮かぶ。


「まさかお前はこの魔王様よりもクマルを信じると? 」

有無は言わせない。睨みつける。立場が危うくなったら強く迫ればいい。簡単だ。

魔王様の役割は傍から見れば楽そうに見えるだろうな。

仮に今からクマルが可哀想だと説得されたとしても突っぱねる。

「いえもちろんそのようなことは…… 」

しどろもどろになる。そうだろ? 魔王様は偉いのだ。怖いのだ。


「はっきりしないか! 」

「魔王様がすべて正しいです! 」

無理やり言わせた感があり少々可哀想だががこれも魔王様の威厳を保つため。

「まあいい。それでクマルの奴はどう処分する? 」

クマルめ。この魔王様に恥を掻かせおって。ただでは済まさんぞ!


「それは…… 」

「だからはっきりせいと言ってるだろう? 庇うつもりか? 」

「滅相もございません! しかし今は作戦遂行中でありまして…… 」

「何だと! 」

「ひいい…… お許しを! これはどうにもならないことでございます」

「まあいい。作戦終了次第呼び寄せろ! もうあいつはただではおかぬ! 」

「どうか! どうか穏便に! 魔王様! 」

懇願する。ちょっとやり過ぎたかな?

でもこれくらい傍若無人に振る舞わないと疑われる。


「済まん。興奮してしまったようだ。クマルには後で必ず来るように伝えろ! 」

もう絶対にあいつを許さない。

「はい。ですが穏便に穏便に! 」

間に入るのも大変なんだな。

「穏便だな? しかしいいのか? 穏便で済ませば他の者に示しがつかない」

これがクマルに関しての評価。失敗しても許して甘やかしていると。

「それはこちらでうまく処理しますので。粛清されては皆が萎縮しますから」

「ふふふ…… 緊張感があっていいではないか」

「魔王様それだけはどうぞお願いします! 」

そう言って跪く。

まったくこいつはちょっとのことでオーバーなんだから。

「分かった。それよりもカンペ―キを呼んでくれないか」

クマルがダメならカンペ―キに。


「もちろん構いませんが…… 」

「心配するな。新たに指示を出すだけだ」

こうして威厳を保ちつつクマルを守った。

もう守る義理はないのだが奴には熊から救ってもらった恩があるからな。

何だかんだクマルには甘いのは自覚している。

ただ奴の能力のおかげでうまく行ってるのも間違いない。

今回の作戦だってうまく失敗してくれるさ。

そう言う面では奴は天才的とも言える。

うまく導くのも手腕とも言えるが。


十分もするとカンペ―キが姿を見せた。

「遅いではないか! 」

今日はものすごく機嫌が悪い。それは皆に伝わってるはずだ。

「申し訳ございません魔王様! 」

「よい。先の活躍ご苦労であったな」

指示通りライバル国を撃退した。

「いえこれくらいどうってことありません」

謙遜するカンペ―キ。これがクマルとの違い。

さすがはカンペ―キだ。もう右腕と言っても過言ではない。


「もう散歩も充分。お前には引き続きダンジョン探索を頼む。

もしものための秘密の場所だ。

決して人間には気づかれるな。そして逐一報告するんだぞ」

「はは! 今取り掛かってる最中であります」

やはりカンペ―キは安心だ。これがクマルだと目も当てられない事態となる。


「十日以内に完成させろ! できるな? 」

明らかに不可能だろうがこれくらい応えられるのがカンペ―キ。

それにもう本当にいつこの世界が消滅するか分からない。急がねば。


               続く

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