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試し切りの代償

混乱する宮殿内。中庭には徐々に人が。

おいおい大騒ぎするほどのことか? ただの試し切りではないか?

その犠牲者が一番の若者。これはよくあることさ。


剣を放り投げ倒れてる男を抱え上げる。

「許せ! まさかこれほどとは…… 」

あれ? 血が溢れてない。どこも傷ついてない。

「ううん? もう隊長! 何をするんですか…… 」

ダメだ。まだ意識が朦朧としているよう。


「お前は切られて死んだのではないのか? 」

立ち上がろうとするので肩を貸す。

「もう隊長酷いですよ! 切り刻むなんて」

「だがお前は血も流れてなければ傷もないぞ。痛みは? 」

「さああ? びっくりして気を失ったらしくてよく覚えてないんですよ」

そう言うが確かに切り刻んだ感触はあった。

あの感触が今もこの手に残っている。

とは言えこの男が無傷で無事ならそれは何もしてないことになる。

おかしなこともあるもの。考えるにこれは奇跡なのかもしれないな。


「済まないが誰か彼をベッドに連れて行ってやってくれないか」

数名がかりで男を連れて行く。

「大丈夫ですって。隊長…… 」

おかしいな? なぜこんなことがあり得る?

まあ宮殿内で刃傷沙汰にせずに済んで助かってはいるんだが。

果たしてボクの処分は?


「そやつを捕らえよ! 」

宮殿警備隊に囲まれてしまった。

「お前たち! ボクは魔王討伐隊の隊長だぞ? 分かっているのか? 」

魔剣を手に切りかかることもできるが今は大人しくしてる方が得策だろう。

どうせ今のボクにはどうすることもできない。

「隊長であろうと王命であろうと関係ない! 

どんな理由があろうと宮殿内での刃傷沙汰は見逃しはしない! 」

どうやらボクは宮殿内の治安を著しく乱したらしい。

それは認める。だが言い訳も聞かずに捕まえるのはなしにしてよね。


「よし連れて行け! 」

こうしていつの間にか罪人扱い。

地下牢に閉じ込められてしまう。


「ちょっと待ってくれ! 隊長はどうする? 王命で動いているのだぞ」

一応は釈明してみる。

「さあな。もうお前には関係ないこと! 」

「待ってくれ…… それはないだろ? 」

ダメだ。行ってしまった。

見張りの男一名を残し皆姿を消した。

まあいいか。ここは整理するのにはちょうどいい。

旅の疲れもあるしね。



魔王様の隠れ家。

クマルには次の戦いの準備をしてもらっている。それと姫の監視も。

カンペ―キには日課の散歩に加え新たな住処を探す名目で洞窟に。

それから対抗勢力の排除も任せている。


「ボグー 」

「はい。ではこれでお終いでーす」

たくさんの美女に囲まれ何やらしていたのだがもう終了だそう。

「ボグ―」

「はいはい。次の機会にまたどうぞ」

そう言って去って行った美女軍団。

まだ何もしてないのにこれではストレス発散どころか逆にたまる一方。

まったくなぜいつもこうタイミングが悪いのだろう?


「魔王様。存分に楽しまれたようで…… 」

「ボグ―! 」

「ははは…… 魔王様もお好きですね。大丈夫。また来ますのでご安心を」

「うるさい! 今とても機嫌が悪いのだ! 」

自分のせいとは言え魔剣を振り回したことで閉じ込められている。

隊長のボクを閉じ込めることないのに。


「襲撃はまだか? 」

「はあ…… 何と言ってもあのクマルですから何とも」

「遅いと言え! 早く魔剣を取り戻すのだ! 」

「ははあ! それが悲願ですからな。ですが焦ってはいけません魔王様」

諭されて大人しくなる魔王様であるものか。


「うるさい! あれを思いっきり振り回したいのだ! 」

「ご冗談を! あれは魔王様にしか効きません。

ですから大弱点でありこの手で封印すべきものなのです」

「人間には効かないのか? 」

「もちろん! これは魔王退治のために作り出されたもの。

人間はおろか我々にも効果はありません。まさかそんなことも忘れたのですか?」

訝しがる忠実なしもべ。


「忘れたのではない! ただお前を試してみたのだ」

「それは私どもも実際に触れたことはありませんでしたので。

魔王様の命で魔王城の地下深くに封じ込めたはず。

それをあろうことか先の戦いで魔王城が陥落魔剣が奪い去られた経緯があります」

「そうだ。あの時の屈辱を決して忘れん! 

よいか皆にもそのことを肝に銘じるようによく伝えておけ! 」

「ははあ! 仰せのままに! 」

こうしてどうにかごまかせたが危なかった。

もう少しで正体がバレるところだったな。

それにしてもあの魔剣は魔王封じのために作られたのか。

どおりで誰も死なず怪我もせずに無傷だった訳だ。


これも極秘情報。

当然このことは魔王様にしろモンスターにしろクマルにしろ知ってる常識。

超常識なのだろう。

そして国王も魔王城進軍した者たちもよく知っているのだろう。

もしかしたら姫にだってその秘密を伝えたかもしれない。

何かあったらこの魔剣で仕留めろってね。


だが現世からやって来た魔王様であるボクはその常識を知らない。

もし魔女にしろ妖精にしろ知っていてもこの重要情報はあえて口にしないだろう。

それはいくらお助けキャラだとしても有利になることは言えない。


ふう疲れたな。寝るとしよう。


                続く

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