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助かる方法

始まりの場所。

目を覚ますと女神様の浮かない顔が。

「あの…… 何かありましたか? 」

ついアーノ姫のままで答えてしまう。

<あなたにお伝えしなければならないことがあります>

神妙な顔。これはどうやら想像を超える新発見があったらしい。


<実はこの世界は崩壊します>

さも初めてであるかのように。これで三度目では?

「それは聞きました」

<あと七日もありません>

「ハイそうですね」

<終わりなんですよ? >

「そうですね! 」

<髪切った? >

「そうですね! 」

なぜ同じことを繰り返す? まだ迷ってるのかすごく言いにくそう。

どうも遠回りして反応を見てるかのよう。


<どうすれば回避できるかですが…… 一つだけ確実な方法があります>

やった! 何だ問題ないじゃないか。確実な方法があれば恐れることはない。

後はサクッと済ましてのんびり過ごそう。

この世界にも慣れてきた頃だしな。


<一つになるんです>

三つの人格を一つにする。それは前回も聞いた気がする。

「だからその方法を教えてくださいよ」

もう土下座でも何でもするから回避させてほしい。

これはもうボクだけで済む話じゃない。

この世界に生きる多くの者の命が懸かっている。

ふざけられる状況にない。転生失敗しもう後がないのだ。


<落ち着いて聞いてください。三人が一つに戻れる方法が一つだけあります。

ですがそれはあまりに非現実的で衝撃的なのです>

女神様は当然ボクの女神様だ。それと同時に全員の女神様でもある。

この異世界を作ったのも恐らくこの女神様。

それだけに女神様の落胆は辛くて見ていられない。


「長くなりますか? 」

<いえあなたが承知するならすぐにでもはっきりと>

そう言われては返す言葉が見つからない。

沈黙が支配する。


「もう早く答えなさいよ! 」

張りつめた空気の中沈黙を破ったのは妖精だった。

こんな時に急かすんだからな。超重要な決断なんだぞ?

「分かったって! 承知しました女神様。どうぞお教えください! 」

ついに覚悟を決める。

これから何を言われても耐える。それだけさ。

<分かりました。愚かな子羊に幸あれ! ではお伝えします>

女神様も決心がついたらしい。


<確実に戻れる方法。それは…… >

「それは? 」

<二つの人格を葬り去る! >

女神にしては言葉が強めだ。しかし意味不明ではないか?


「どうやって? 」

<しかるべき日にしかるべきやり方で>

女神様はそう言うがとても抽象的なんですが? もう少し具体的にお願いしたい。

どうやら分かったことはここまでらしい。

しかるべき日がいつを指すのかまだ女神様には分かってないのだとか。

それはまあいいとしてしかるべきやり方が問題だな。


「それはまさか…… 」

妖精の方は閃いたらしい。ボクはちっとも。

「しかるべきやり方…… 」

何度も繰り返してみる。

<これがどう言う意味か分かりますよね? >

しかるべきやり方とはどうやらこの手で殺害せよと言うことらしい。


実にシンプルな答えだ。しかしそんなことがボクにできるのか?

元々しがないサラリーマンで殺しなんかしたこともない。

犯罪だってバレたのは片手で数えられる程度。

おっと…… 余計なことだったかな? もちろん冗談さ。


殺し屋でもないのに無茶言うなよな。

そもそも近づくことも許されないのにどうやって?

実行不可能なことを言われてもただ茫然とするだけ。


<以上です。しかるべき時がいつなのかは分かり次第またお伝えします>

こうして質問も許されずに再び異世界へ。



新たな一日が始まる。

早朝。馬車で田舎へ向かう勇者・ノア。


女神様のお言葉が頭から離れない。

しかるべき時とはいつなんだ?

今宮殿を離れてしまったが本当によかったのだろうか?

くそ! もう何が何だか分からない。頭がこんがらがる。

この世界はもう間もなく消滅する。

それは紛れもない事実らしい。だが回避する方法もあるとのこと。

僅かな可能性に賭けるにしてもまだどうすればいいかよく分かってない。


ボクは一体どうしたらいいのだろう? どうしたら……

恐らくどうすることもできないんだろうな。

ボクには僅かな可能性に賭けられない理由がある。

それは女神様が一番よく知っている。

悪人を処分するのに心が痛むことはない。

だが善人とまでいかないにせよただの人間を処分しろと言うのか?

果たしてそんなことボクにできるのか?

プレッシャーは半端ない。責任も伴うものだ。

ただ目の前のことに集中してればいい類のものではない。

しかるべき時とはいつなんだ? ボクは本当に耐えられるのか?


これが二者択一ならまだいい。しかし両者ともこの手で…… 

そんなのできる訳が…… できるはずがないんだ。

どうする? どうすればいいんだ?


「あーどうしましたか? さっきからブツブツ言ってますが」

おじさんが心配になって声をかける。

彼はこの道三十年以上のベテランで専属ではないがよくお世話になってるそう。


目の前に巨大な川が見えてくる。

「まだ着かないの? 」

「すんません。川が氾濫しちまって遠回りしますね」

おじさんの話ではこの川は雨が降るとすぐに氾濫するのだとか。

だから今までまともに行けた試しがないと笑う。

「分かった。急いでくれ。これは王命なんだ! 」

それだけじゃない。すべては女神令。どうせ言っても無駄なんだろうな?

気が狂ったと思われるだけ。


馬車はぐるっと大回りすることに。

そこに今怪しい影が近づこうとしている。

「おい止まれ! そこの馬車止まれ! 」


まずい盗賊だ! 囲まれた?


               続く

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