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お届けもの

引き続き宮殿。

コレクションルームでメイドのギャンギャンと伝説の剣探し。


立派な装飾の王冠が目に留まる。

「これは国王即位時に使用したもの。普段の王冠はシンプルですので。

比べてみるとよく分かりますよ」

ギャンギャンが詳しく解説してくれる。


「首飾り発見! これは? 」

「それは妃様の…… 」

そこで止まったので何かあるのだろう。いわく付きだったりして?

うん。これ以上はやめよう。危険過ぎる。


「これなんか大したことないんじゃないか? 」

使い方の分からない西洋のボードゲームらしきもの。

「さあ金銀財宝と一緒にあったものと記憶しておりますが。

どこかの沈没船から引き揚げられたとか何とか。詳しいことは分かりかねます」

「だったらこれは? 」

「それは姫様が幼い頃にプレゼントしたもの」

どうやら国王やギャンギャンにとっては大変価値のあるものらしい。


「ねえこの中で一番高いのは? 」

相当なお宝が眠ってると見て間違いない。俄然興味が湧いてきたぞ。

「申し訳ありません。すべてが何らかの珍品ですので。

いわゆるプライスレスなのでございます」

うまくかわしたな。まさか危険だと疑われたか? 

「それよりも伝説の剣だ! どこにあるかな? 」

「さあ…… ですから私には何とも…… 」

非協力的なギャンギャン。ただ横で騒いでるだけ。


お宝の間に隠されるように置かれていた大きな箱が目に入った。

「これは? 」

「はい。何でも魔王城で見つけたもので戦利品だとか」

魔王城? 関係あるかもしれない。

さっそく箱を開けてみる。


ガチャガチャ

ガチャガチャ

ダメだ。鍵が掛かってる。

下手にこれ以上動かせば壊れて一生開かない恐れも。

ここは無理せずに正攻法で行こう。


「この鍵はどこに? 」

「はい。確か雑用兼鍵係のビエンが…… 」

「だったら早くそのビエンを呼んできてくれないか? これは王命だ! 」

こう言えば分かってくれるだろう。

ギャンギャンは国王に心酔しきってる。王命と聞けば真剣に対応してくれるはず。


「申し訳ありません。それがビエンは三日前に故郷に…… 」

「いつ戻るんだ? 」

「さあそこまでは。弟が鼻の病気だとかでズル休みをしてるんです」

どうやらいい機会だからとお見舞いついでに故郷でゆっくり羽を伸ばすそう。

うらやましいな…… ってそんなこと言ってられない。

王命でしかも時間がない。

分かっていながら引き留めないなんて……

この一大事にトラブル発生か? ついてない。

まあこれくらいでないと面白くないとも言えるが。


「早く呼び戻せ! これは王命なのだぞ! 」

「しかし…… 早くても一週間ほどは掛かるかと」

ビエンは宮殿に仕えてるとは言えただのメイド。

馬車を使えるはずもなく歩いて帰るには三日は掛かる。

下手したら四日も。だから今から急かしても一週間は見る必要があると。

だがそんなにのんびり待っていられない。消滅しちゃうよ。


「至急馬車を手配してくれないか? 」

「はあ…… 待ってはいかがでしょう?

ビエンが戻ってくるまでゆっくりしていればよろしいのかと」

呑気だな。間もなくこの世界そのものがなくなると言うのに。

何も知らないとは恐ろしい。


「これは王命だぞ! 一週間も待っていられるか! 」

しかも戻って来るかも分からないメイドをただ待てと?

下手すればビエンが戻って来る前に消滅するかもしれないと言うのに。


こうして馬車を走らせビエンの故郷の村まで。



廃屋。姫様優雅にお寛ぎ中。

「お届けものです」

「はーい」

うわわ…… 豪快に獣肉を一頭丸々。

「これで一週間は持つはずだ。後のことは知らない。じゃあな! 」

クマルは何も言わずに肉だけを置いて行った。

一体誰が中まで運ぶと言うのでしょう?


「肉だけでどうしろっての? せめて野菜を。パンだって置いて行きなさいよ!」

夕空に消えていく翼の化け物に叫ぶ。

戻って来られても厄介なのでこれでいいですが本当に嫌になる。

クマルには常識と言うものがないらしい。


「どうしました姫様? 」

「二人とも手伝って! 」

魔女がいるので持ち運びは楽。


「さあこれで邪魔者はいなくなった。後はあんただけだね」

そう言うと魔女がお付きの者を追い払う。

「ちょっと冗談でしょう? 姫様も何か言ってくださいな」

「そこまでしなくても…… 」

「ダメだね! 勝手な行動を取る者は信用できない」

魔女はきっぱりはっきり言う。どうやら本気らしい。


「待ってください。一体何を言ってるのか…… 」

お付きの者はなおも言い逃れようとする。

「あんたが逐次報告してるのは知っているんだ! 」

追及の手を緩めない魔女。

「それは…… でもすべて姫様の安全を考えてこその行動で…… 」

追い詰められるお付きの者。


「嘘でしょう? なぜそのようなことを? 」

「ですから万が一のことも考えて居所をお伝えしたまでで」

どうやら裏切ったのではなさそう。


「分かりました。今一度信じてみましょう」

「そうですよ姫様。長い付き合いなんですからね」

こうしてすべての芽を摘むことはせずに泳がせることに。

果たしてお付きの者は本当に信用に値する人物なのか?


「さあ姫様。食事にしましょうね」

無事に今日も何事もなく過ぎて行った。


                続く

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