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国王のコレクション

宮殿にて勇者・ノアのターン。

王命を受け伝説の剣の捜索開始。

「はい国王様が? それでしたらこちらでございます」

爺さん紹介のメイドに宮殿内を案内してもらう。


名をギャンギャンと言う。

本名ではなく何かと騒がしいからとあの爺さんが勝手に命名したらしい。

彼女は国王からの信頼も厚く秘密の部屋の管理も任されている。

その一つに国王のコレクションルームがある。


「どうぞお入りください」

展示室と言ったところか。

中には国王が世界中から集めたコレクションが展示されている。

部屋に鍵が掛かっていないのは誰でも見学できるようにとの配慮からだそう。

盗難など夢にも思っていないのだろうな。この宮殿内なら当然安全。

昨夜みたいな窃盗犯が興味を示さなければだが。

ただ仮にそんな不届き者がいたとして持ち出すことは不可能に近い。

入る時はもちろん出る時も荷物を調べられるからな。それも徹底的に。

部屋から持ち出せても外へ持ち出せなければ意味がない。

妙な気を起こしても次の日には冷静になり元の場所へ戻すことになる。


ボクも他の者には見えない妖精を隠し持っているからな。

それはモノではなく勝手に動く生物でボクにはどうすることもできないが。

万が一見つかったらと思うと緊張してしまう。

変に疑われたらお終い。昨夜みたいなことは何としても避けなければ。

さあどれを頂きましょうか? などと冗談でも言えない。


「これなどいかがでしょうか? 」

勧められるがボクは伝説の剣を探してるのであってそんなゴミに興味はない。

「えっと…… これは何かな? 」

「国王様の書でございます」

コレクションの中に紛れ込ます形で下手くそな書なるものが飾られている。

おいおい恥ずかしくないのかよ? 情けなくなってくるぜ。 

呆れているとなぜかギャンギャン泣き出した。

一体どうしたと言うのだろう? 何だか面倒臭そうな人だな。

訳を聞くのもちょっと…… 


「何て素晴らしいのでしょう! いつも入るたびに感動しているんです」

ギャンギャン喚き始めた。うるさくて堪らないんですが?

「あなたもそう思いませんか? 」

静かになったと思ったら今度は迫ってくる。

一癖も二癖もあるな。圧が強すぎてつい冷静さを失いそうになる。

ただのゴミが宝に早変わり。あるいは資源か財産に早変わり。

「これが? いえ別に…… 」

ただの下手な字だろ。どうでもいいっての。まったく興味ないんですけど。

ここに国王がいる訳でもないし。今はそんな落書きに構ってる暇はない。

伝説の剣を持って行かなければならないのだから。


「そうですか。それではもうこれで」

そう言うと強引に部屋から追い出されてしまう。

「ちょっとそれはないよ…… 」

「でしたらこれが最後のチャンスです」

コレクションルームに戻された。もうギャンギャンに逆らうのはよそう。


「何て素晴らしいのでしょう! そうは思いませんか? 」

また泣き始めた。感動してのことらしい。

そこまでして国王を持ち上げるのか? 苦労するな。

本人が好きでやってるのならいいのか。

ボクも久しぶりに持ち上げるとするか。現世ではたまにやっていたもんな。

少々懐かしい気がして来た。

「そうだね。うんうん」

「ああやっぱり。心にもないことは言えませんものね」

納得した様子だがどうもまだダメらしい。番人はせっかく開いた道を塞ぐ。


「感動しましたよね? 」

そう言って再び涙を流す。

どうやら同じだけ感動しろと言うことらしい。

要するにボクの受け答えには感情が入ってないのだろう。

当然か。適当に合わせただけだからな。無茶を言わずにこれくらいで我慢してよ。

「おおお! 何て素晴らしいのだこの書は! 信じられない! 」

目を瞑り大げさに演技をする。これはさすがにオーバー過ぎたかな?


「それで? 」

それでと来やがった。まさか次を要求されるとは。どうすればいい?。

どうやらギャンギャンは泣けと言ってるらしい。

「ううう…… 素晴らし過ぎて涙が止まりません! うおおお! 」

泣き真似を披露。これで文句はないだろう?

だが彼女はまだ納得してない様子。厳しい。

どれほどのパフォーマンスを求めているのか?


「もっと激しく! 」

泣き方や感動の仕方まで事細かに指示を出す。意外にも優秀な指導者。

彼女なら立派な国王様応援隊が作れるだろう。ボクは入らないけどね。

でも作ってどうすると言うのか? 


どうやら国王の書に感動した者以外を入れるつもりはないらしい。

仕方ないから要求に応えよう。これもミッションクリアのため。

これを切り抜ければ伝説の剣が手に入る。これくらいどうってことないさ。

どうってことないが嘘を吐いてるみたいで心が痛む。


「あああ…… 何て素晴らしい! ううう…… 感動だ! 感動だぞ! 」

「あらまあ。ではごゆっくり」

ようやく伝説の剣の捜索を許された。

粘った後は拍子抜けするほどあっさりと。


「あの…… 伝説の剣はどこでしょうか? 」

「さあそこまでは…… 剣には興味がありませんので」

一人で探すと言うも手伝うと頑なだ。

まさかボクが盗むとでも思ってるのか?


とりあえず第一関門を突破した。

それにしてもトレジャーセイバーのギャンギャンは強敵だったな。


               続く

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