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帰らないの?

魔王様の隠れ家。

「ははは! もはやアーノ姫は我が手に! 」

いくら忠実なしもべとは言え手下たちも心変わりには敏感だ。

この魔王様がアーノ姫を妃に迎え国王を屈服させて最終的に国も民も奪う。

そう思わせ続ける必要がある。

魔王様でも安泰ではないのだ。希望を叶え導くのが魔王様。


それにしても手下がおべっかばかり使うので調子が狂っていけない。

分かってはいるがいい気分だ。ただ何か足りない気もする。何だろう?

もっと気持ちよくなりたい。もっともっとだ!


「おいまだか? 魔王様がお待ちかねだぞ! 」

気を回すがそんな情けない魔王様じゃない。

恐怖と殺戮で世界を支配するのだ。そんなつまらないこと……

「はーい魔王様。楽しみましょうね」

魔王様だと言うのに子ども扱い。舐めてるのか?

だが魔王様は紳士だからな。ここは抑える。

「ボグ―! 」

威厳を保とうとするが女たちはお構いなし。

これが人間? これが女と言うものか? 美しい。何て美しいのだろうか?

我が姫も近づけばもっと美しく輝くのだろうな。ふふふ…… 楽しみだ。


「さあ魔王様。服を脱ぎ脱ぎしましょうね」

「ボグ―! 」

「ではお楽しみください魔王様。私どもはこれで」

そう言っていらぬ配慮をする。

「ボグ―! 」

「はい。キレイキレイしましょうね」

頼んでもいないのに勝手に…… ダメだ。もう堪え切れそうにない。

無念だ。ここは潔く従うことに。


「ほら魔王様」

「ボグ―! 」

興奮が止まらない。さあ楽しむとするか。

とんでもない興奮状態。これはまずい。


再び意識を失う。



宮殿。勇者・ノアとブシュ―の再会。

中庭を一周してようやく幼馴染を捕まえる。

「ボグ―! 」

「ちょっと痛い! 興奮しないでよバカ! もう知らない! 」

酷い言われよう。一体俺が何をしたって言うんだよ?

確かに先ほどまでいい展開だったのは認めるけどさ。

でもどうせまた魔王様に戻ったら終わってるんだろうな。ああ残念だよ。


「ごめん。本当に君とは結婚できないんだ」

正直に伝える。

「まさか他に好きな人がいるの? 姫様がいいのね? 」

ブシュ―はおかしな考えに囚われ嫉妬から姫を目の敵にする。

冷静に考えればボクと姫が結婚するはずがない。

だって二人は決して結ばれない運命なのだから。

どんなに思おうと慕おうと関係ない。運命が二人の間を切り裂く。


「そうじゃないと何度も言ってるだろう? どうして理解してくれないんだ!

よし分かった。だったら十日後に来てくれ。その時また結婚の話をしよう」

「そうやってはぐらかす」

「ブシュ―? 」

「もう分かった。それでいい」

こうしてどうにか幼馴染を説得した。

さあ果たして十日後にこの世界は存在してるだろうか? 

仮に助かったのなら結婚でも何でもしてやるさ。


手を叩いてお客様のお帰りを知らせる。

「またなブシュ―」

「待って! 私ここでもう少しゆっくりして行くからお構いなく」

ブシュ―はまだ帰らないそうだ。まさかまだボクを疑っているのか?

「あっそ。好きにすれば」

あえて冷たく対応する。


幼馴染のブシュ―は部屋を与えられた。

隊長の幼馴染だからと国王様も快諾。

こうして突如起きた幼馴染問題は一件落着。

ではそろそろ情報収集を本格的にするとしようか。



廃屋にて。

クマルとのお食事を終え大掃除に取り掛かる。

床を掃きホコリ塗れの室内を順番にきれいにしていく。

最後に床全体を濡れ雑巾で拭いたら完了。


「しっかり。ダメダメ! まだ拭き残しがある」

いくら言ってもクマルは同じ失敗を繰り返す。

「ほら急がない! ゆっくり時間をかけて丁寧にね」

いつも目の前で見ているのでどうすればいいか何となく分かる。

だからクマルにアドバイスをする。


「俺ばっかりかよ? お前も手伝え! 積極的に手伝うべきじゃないのか? 」

文句ばかり言って一向にきれいになる様子がない。これは手を抜いてるな?

「いい? ピカピカにするのよ? 話はそれから」

クマルは何も分かっていない。ボクはお嬢様。

そんじょそこらのお嬢様ではない。国王様の娘で一国の姫様なのだ。

そんなお方がへばりついて体を動かすでしょうか?

誰がそんな姿を見たいのですか?

優雅にお茶でも飲みながら見守るのが姫様らしい。

ここはクマルのような使用人をこき使うのが正しい。


「へいへい。とんでもない姫様だなこいつは」

意外にも従順なクマル。まさか命令されると弱い?

それとも魔王様と姫様がどことなく似てるとでも思ってる?


大掃除を終え今日のところはこれくらいでいいでしょう。

のんびり読書でもしますか。

「そうだ。あなた帰らなくていいの? 」

心配する。クマルが帰らないと変に疑われる。

「うるさい! これも魔王様の命令なんだろう? 」

まずい。これ以上クマルをここに置いておくと何かと邪魔になる。

見た目に反して勘は鋭いですからね。

「そうだけど。一度帰ったら? 報告もあるでしょう? 」

クマルに帰るよう促す。

だが言い訳ばかりのクマルは中々動こうとしない。


「いいの? ライバルと差をつけられわよ」

「大丈夫だって。魔王様には気に入られてるんだから」

どうやら自覚はあるらしい。

「いいから早く行きなさい! 」


こうしてクマルは一度魔王様の隠れ家へ戻ることに。


「大人しくしてろよ。逃げ出そうとしたらだだではおかないからな! 」

翼を広げ旅立とうとする時でさえしつこく脅しをかける。

当たり前じゃない。誰が逃げるものですか! これも作戦の内なんだからさ。


さあこの無能なクマルをどういたぶってあげましょうか。

ふふふ…… 楽しみ。


               続く

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