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幼馴染との再会

魔王様の隠れ家。

「魔王様! 宮殿で動きが! 」

息を切らし慌てた様子の者が報告に。

「こら! 魔王様はまだお休みの最中だ! 」

どうも眠くて仕方がない。

まだ前世の睡眠不足が解消してないのか巷で流行ってる眠り病のせいか。

心配される前にそろそろ起きるとしよう。

疑われでもしたら厄介だからな。


ボグー

おはようの雄たけびを上げる。

もう体に染みついてしまった習慣。

これがないと一日が始まらない。魔王様だって始まらない。

「魔王様! 機嫌がすこぶる悪いご様子で。ほれ手が付けられないではないか」

勝手に勘違いされて恐れられてしまう。


「魔王様? 魔王様? 」

「いや昨日は疲れてな。どうも今朝はその疲れが取れんのだ」

散歩したはいいが雨だったからな。滑って転ぶなどあってはならないこと。

魔王様の威厳にも関わること。だから慎重にもなった。

そもそもが魔王様は運動不足。外出は久しぶりだとか。


「それでしたら今日は無理なさらずにお呼びした者を返しましょう」

余計な気を遣う。この魔王様を思ってのことだから反論しづらい。

だから心の叫びで対抗することに。

「ボグ―! 」

「どうされました魔王様? まさか不満があるのですか? 」

「ボグ―! ボグ―! 」

「そればっかりは分かりかねます」

「ボグ―! ボグ―! 」

「察せよと…… では偉大な魔王様はいつも通りでよいと」

どうにか希望が伝わった。

これでこそ魔王様になった甲斐があると言うもの。


「それで先ほどの件なんですが宮殿に向かって馬が。どうやら娘らしいのですが。

今監視をつけています。どうなされますか? 」

どうでもいいことをいちいち聞きやがって。勝手に判断しろっての。

「そうだな。まあ問題ないだろう。無視して構わない」

「ではさっそく」

息を切らし入ってきた者は再び走って行ってしまった。

まったく忙しない奴だな。


宮殿に近づく者が一名。娘と言っていたが誰だろうか?

アーノ姫だったら一大事だがそれはないよな。

今はクマルに軟禁されて不自由してる訳だしな。

そうすると…… まあいいか。今はそんなことよりも息抜きをするとしよう。


ボグ―!

雄たけびを上げたものだからモンスター共が慌てふためく。

くくく…… いい気分だこれは。この後はもっといい気分になるはず。

では思いっきり楽しむとするかな。



宮殿。勇者・ノアに迫る脅威。

「申し上げます! お客様がお越しになられました」

取り次いだ者が慌てた様子で爺さんに報告する。

「ほう客とは珍しいな。それで何者だ? 他国の使者か? 」

雨も上がりすっきりした朝に珍客登場と色めき立つ者たち。

「はい。何でも田舎の村から来たとかで会わせろとそれだけです」

「ううん? 誰にだ? 」

「それが興奮して聞き取れないらしく…… 」

「うーん。それでは会わせる訳にはいかんな。よし隊長。様子を見てきてくれ」

この爺さんどうでもいいことを押し付けやがる。

ボクは魔王討伐の指揮を任されたのであってそんな雑務を押し付けられて堪るか。

それにボクは国王様の命令に従うのであって爺さんに従う義理はない。

しかし…… まあどうせ暇だからな。面倒だけど引き受けてやるか。


嫌々ながら訪問客の相手をすることに。

入れろ会わせろとしつこい女。若い娘らしいが一体何者だ?

嫌な予感がする。


「どうした? 」

男女が言い争いをしている。

「隊長! 助けてくださいよ。この女がしつこくて」

現在魔王討伐隊は暇なので宮殿のお仕事を手伝っている。

「分かった分かった。それであなたは? 」

代わりに要件を聞いてやることに。


「何だ。やっぱりいるじゃない! ごねてばかりでちっとも進まないんだから!」

「あの…… どちら様でしょうか? 」

どっかで見たことがあるがもう忘れた。へへへ…… 女に未練はないのさ。

「何を他人行儀な! 幼馴染がやって来たのにそんな扱いないでしょう! 」

泣く振りをする姑息な女。幼馴染ってもしかして……

そう言えば旅立つ時に見送ってもらった覚えがある。


「ああ君か…… それで何の用だ? 」

「君? 何て他人行儀なの? 将来を誓いあった仲なのに酷い! 」

どんどん声が大きくなるものだから恥ずかしくて仕方がない。

「分かった。外で話そう」

「うん? まさか私の名前を忘れたんじゃないでしょうね? 」

ごねる幼馴染を連れ出して中庭で愛を語り合う。


「忘れるものか! いつも君のことが頭から離れないよ」

「本当? だったらうれしい! 」

どうにかごまかすが結局この女の名前さえ思い出せない。


君の名は? それが言えたらな……

当然ボクは彼女を知ってなければならない。

だから言えるはずがない。


「あなた少し変わった? 前は俺だったのに今はボクだって」

鋭い指摘。これは三人も演じるのでボクに統一した関係でこうなっただけ。

大して深い意味はない。

「ガキでもないんだ。少しぐらい変わるさ。成長するもんだ」

「ボクだと成長とは逆な気がするんだけど」

まずい。どんどん追い込まれていく。

ここは急いで妖精と相談だ。


「済まない。トイレに行ってくるから待っててくれ」

どうにか離れたところで妖精に泣きつく。


               続く

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