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囚われの姫に迫るクマルの魔の手

消滅まで七日。カウントダウン開始!

消滅予定都市・ザンチペンスタンの運命はいかに?


「ごめんね。私たちにもどうすることもできないの。分かって欲しい」

神妙な顔をする妖精。らしくない。ちっともらしくない。

女神様にしろ妖精にしろ普段と違う行動をとるのは相当追い込まれている証拠。

それは即ち俺には未来がないことを意味している。

「ははは! 何とかなるって。十日以内に解決すればいいんだろう? 楽勝さ」

ネガティブに捉えるのはよそう。もっと楽しく明るく元気に。

「違うって! 七日でしょう? しっかりしてよね! 」

いちいち訂正する細かい妖精。それくらい分かってるんだって。


「それで女神様。ボクはどうすればいいんでしょうか? 」

<まだ何も…… 不明な点も多くよく分からないんです>

「そんな…… それはないよ! 」

<ですからこれはかつてない脅威だと。

初めてのことですから予想でしかなくそれも当てになるかどうか…… >

随分と控えめな女神様。


七日後に消滅することは紛れもない事実。そのことだけは分かっている。

俺がいたずらにひょいひょい乗り移った結果。ただ寝て夢を見ただけだけどね。

もはや歴史と言っても過言ではない近い未来に起こり得る確定事項。

それを止めるには一体どうすればいい?


<前にも言った通り恐らく一人の人格に戻る必要が。それが回避策。

それはあなたにとって辛い決断が待っていることに>

それ以上具体的なことは語ってくれない。

とは言えどうにか回避する方法がある。それだけでも救いだ。


「一人の人格に戻るか…… 」

<とにかく細かいことは時間を要します。

今あなたにやれることは絶対に遭遇しないこと。

それからもしもの場合に備えていつでも近くにいてくださいね>

女神様は近づき過ぎず遠ざかり過ぎずにと注文をつける。

だがそんなこと俺一人の力ではとても不可能だ。

勇者にしろ姫にしろ魔王様にしろそれぞれが協力し合うしかない。

それにはどうしても協力者が必要。


勇者には遅刻魔の天使。ただ今消滅に女神様と立ち向かっており動きが取れない。

だからどうしてももう一人協力者が必要。

すべてを告白できる者ならベストだが恐らく隠しながらどうにかすべきだろうな。


姫には魔女がいるから心配ない。ただどこまで協力してくれるかは不透明。

今後の展開次第。


魔王様にはやっぱりクマルだろうな。

きちんと命令を守りそれでも失敗してくれるありがたい存在。

魔王軍のお荷物ではあるがこれがカンペ―キだと任務を遂行してしまうからな。

ただ大事な部分はクマルには任せられないからカンペ―キを。

ライバル二人を使い分け思惑通りに動いてもらうことに。


もちろんこれだけで充分とは言えない。

どうにもこうにも難易度の高い舵取りになる。

思ってる以上に危険だろうな。


「分かりました。何とかしてみます」

<その意気です。決して諦めないでくださいね。

あなたは世界に残されたたった一つの希望なのですから>

そんなこと言ってるが俺が引っ掻き回して世界を消滅させようとしてるだけ。

残された最後の希望などと褒められても嬉しくない。ただ空しいだけ。


こうして不安な中で三日目を迎えることに。



廃屋。

クマルによって閉じ込められた哀れなアーノ姫。


ドンドン

ドンドン

「今度は何だ? 静かにしろ! 」

明らかに不機嫌なクマル。生意気なんだから。

「お腹空いた! 何か食べさせてよ! 」

「ああん? 」

凄むがちっとも怖くない。顔は怖いんですけどね。もう慣れてしまった。


「ほら魔王様が…… 」

魔王様をちらつかせてクマルをコントロールする。

ただやり過ぎてコントロールを誤ると痛い目を見ることになる。

今のところそれでもクマルは堪えてるようですが。


「お前性格が悪いって言われるだろう? 」

失礼なクマル。まさか姫様にそのような無礼な口を利くなんて。呆れた。

でもモンスターだから仕方ないか。大体クマルだし。

ここはしっかり教育しないと一人前の使用人にはなれない。とりあえず反論する。

「とても礼儀正しく美しい姫様だと皆から憧れの目で見られています。

いいから早く食事の用意をしなさいよ! 」

ついきつくなってしまう。


「まったく何て奴だ。魔王様の指示がなければお前など…… 」

「いいんですか? 魔王様の大事な大事なお相手なんですよ。

本来あなたのような獣と口を利くのも憚られる存在。

それが一国の姫。いい加減その辺のことを理解しなさいよ! 」

「何だと! この…… 」

そう言うと汚い手で触れようとする。

「ちょっとやめて! そんな汚い手で触らないで! 」

「おい! 興奮するなって。それにこれは手じゃなくて前足だ」

下手な言い訳でごまかそうとするクマル。

気持ちは痛いほど分かる。そこにきれいな花があれば摘みたくなるもの。


「魔王様に叱られてもいいの? 言いつけても構わないんですよ」

人間の醜い部分が出てしまう。

こんなにも美しい姫様がいくら捕まって余裕がないとは言え情けない。

本来ボクはこんなことしたくない。でも毒には毒で制するのが戦い方。

こんな風にどうにか言い訳して精神を保っている。


「クソ! 分かったよ。だったら大人しく待ってろ! 調達してきてやるからな」

渋々従う使用人見習いのクマル。頑張ればお付きにしてあげなくもない。

「急いでね。ほら頑張って」

こうしてクマルを使っての軟禁生活。

少々不便ですがこれも国のため。民のため。

できたら魔女やお付きの者がいれば暇つぶしになるんだけどな。

贅沢は言ってられないか。


クマルを送り出してのんびりすることに。


                続く

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