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異世界消滅妖精日記

二日目を終える。

スタート地点である始まりの場所へ。


「がおおお! って恥ずかしいところで呼び戻すなよな」

妖精の冷たい視線が刺さる。

でも俺だって真面目に魔王様を演じてるだけだからさ。

「あれ? あんた勇者で戻したはずだけど。勘違い? 」

「そこから進んで魔王様まで来たわ! 」

「おかしい。どうしたんだろう? 」

妖精が首を傾げる。どうやらタイムラグが発生してるらしい。

まさか消滅の影響? でもこれくらいどうってことないさ。


「仕方ないわね。だったら保全のためにも日記を付けておいて」

そう言うと一冊のノートを手渡す。

「これは? 」

「だから。もしものためだって言ってるでしょう? 」 

しっかり今日あった出来事を書き留めるようにと。

「もしかしてこれでセーブができるのか? 」

「そうだけど…… でもそこからやり直しは無理よ。

これは記憶保持のために活用して欲しいの。今日の出来事を克明に記すのよ」

こうしてなぜか何年ぶりかの日記を書く羽目に。


「ほら字が汚い! 読めないでしょう? 」

イチイチ細かいことを注意されるとイライラする。ボグ―と叫びたい気分。

「うるさいな! 読めればいいだろう? 」

「いいから。きちんと書く! これはとても大事なことなのよ」

そう言われたら大人しく従うしかない。


「こんな感じでいいですか? 」

「そうそう。やればできるじゃない」

どうにか三回目でようやく認められる。


「もうこれで用は済んだのか? 」

「何を言ってるの? いいから話を聞く! 」

どうやら本題はこれかららしい。面倒臭いな。

「へいへい。それでどうなんだよ? 」

当然何かが分かったから呼び戻したのだろうけれど。

妖精が生意気だからまともに聞く気になれない。

魔王様の影響かな? 気をつけなくては。


<この哀れな子羊を救い給え>

祈りを捧げる女神様。これは実に不吉なこと。

自分の力ではどうすることもできずにただ祈っている訳だから。


「女神様。何かお分かりになったのですか? 」

聞きたいような聞きたくないような…… 耳を塞ぎたい気分。

<落ち着いて聞いてください。祈り虚しく最悪の事態になりつつあります>

女神様は引きつった笑顔でそう告げる。

「待ってください! これ以上のことがあると言うのですか? 」

女神様のお言葉に耳を疑う。ああなぜボクを試すようなことを?

<はい。お伝えしたようにこの世界は消滅します。

ですがそれがいつかはっきり分かりませんでした>

どうやら結論が出たらしい。

消滅までのカウントダウンが開始されたことになる。


「何でだよ! 夢じゃないの? そんなの酷いよ! 」

分かっていたことだが納得できずに大げさに女神様に泣きついてみる。

頼みの女神様は無言でただ首を振るばかり。

女神様にもできることとできないことがあるそう。

「あんたが余計なことばかりするからこうなったんでしょう! 」

呆れた様子の妖精。正面から叱責する。

「俺は何も…… 」

どうにか言い逃れるも意味がない。


<愚かな人間よ。あなたは今までの誰よりも情熱的で愚かでクレイジーでした>

諦めの女神様。らしからぬ悪口。これでも言葉を選んでるらしい。

「一体俺が何をした? 」

したかもしれないがすっかり忘れてる。仮にしたとしてもう時効もいいところだ。

「あんたいい加減にしなさいよ! 勝手に寝て三人もの人間に乗り移るんだから。

こっちの苦労も知らないで。ねえ女神様」

怒り狂う妖精。まさかボクが何かとんでもない失態を犯した?

自覚がなく無意識下でやったのだから当然許されるべき。

おお女神様もう少しだけ!


<残念ですがその通りです。あなたはタブーを犯した。

だからこのような事態を引き起こしたのです>

珍しく叱責する女神様。これは相当お怒りになってるな。

「それなら早く結果を言いやがれ! 」

つい魔王様の時の癖が抜けない。

女神様から笑顔が消え二人から集中砲火を浴びる。

どうしてこうなった? 絶対俺のせいじゃないのに。


<あなたは元々勇者に転生するようになっていました。しかし手違いがあった。

一人ならず二人もですからこのような事例は過去に例がありません。

それ故に予測でしかありません。それを今発表するつもりです>

ついに真実。転生した異世界の真実が分かる時がやって来た。


「あの女神様…… これ以上は危険では? 」

妖精は俺の心が持たないと指摘する。

それは確かにそうだ。聞くにしてもまだ心の準備ができてない。

<危険は重々承知です。いいですか? あなたは大変な失敗を犯したのです。

その責を負うのがあなたの使命。では落ち着いて聞いてくださいね>


<消滅まで七日。これがあなたに残された時間です>

女神様は断定する。


「ははは…… 嘘ですよね女神様? 嘘だと言ってくれ! 」

<女神は嘘を吐きません。これは純然たる事実です>

「いやいや冗談だって。もちろん冗談なんですよね? 」

<決して冗談など言いません。信じがたいとしてもそれが真実なのです>

一歩も引かない女神様。


これって相当まずい展開だよな?

消滅は前回聞いたがまさかその期限が僅か七日とは…… 

もしかして二日が過ぎたから七日なのか?

でも計算が合わないぞ。約十日とは九日なのか?


「一年。いや半年! 一か月でもいいんです。もう少しだけでも猶予を! 」

交渉するもできませんの一言。

それこそ時間の無駄以外の何物でもない。


<愚かな人間よ。現実を受け入れるのです。

そして七日以内に消滅を阻止するのです>

女神様から命を受ける。

とても名誉で尊いことだ。でも俺にどうしろと言うのだろう?


女神にせよ妖精にせよポンコツ感が拭えない。

クマルほどではないが自分たちの失敗を擦り付けている。

その上で無理難題を押し付けてる気がしてならない。


                続く

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