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鏡の中のお姫様

始まりの地。

女神様が姿を消し一人取り残される。

この真っ白な世界で一人ぼっち。何だかすごく寂しい。孤独を感じる。

おっと…… ネガティブになってどうする? 切り替えよう。

こんな時は体を動かすのが一番。さあ暇潰しに運動でもするかな。

レッツトレーニング!


最近仕事仕事で運動をサボり気味。やってるのは行き帰りの歩きだけ。

後はたまにやるランニング。

先月も一度。今月はまだ一度も。これでは体がなまって仕方がない。

まずは軽く準備運動。そして深呼吸で精神を統一する。


本格的に筋トレ。

いきなり腕立て伏せはきついからスクワットを十回ほど。

はあはあ

はあはあ

ははは…… 情けないことにもう息が上がってるよ。


続いて背筋を鍛える。

うつぶせになって十回。

もう限界だぜ。息が苦しい。


次に腹筋を鍛える。

仰向けになって一回…… 

ダメだ。ちっともできやしない。体が硬い。

うわ…… これは腰にくる。まずいな。どこか……

目の前にちょうどいいものが。

この布団の上でやればいいんだ。

高級そうな布団を汗と涎で汚すのは忍びないがまあいいよね。

これは運動の一環で寝る訳でもないしな。


まず一回……

どうにか一回はできた。続けて二回目に……

やっぱりダメだ。運動不足で思うように体が動かない。

立ち上がることさえままならない。


はあはあ

はあはあ

まずい…… このままでは危険だ。

何だか意識が遠のくような感じが……

すうすう

すうすう

いつの間にか夢の世界へ誘われていく。



「起きてください姫! 国王様がお呼びです」

「ううん。眠いよ…… 俺まだ眠いんだって…… 」

「俺? 何と下品な言葉遣い。信じられません! 

いつもいつも近所の悪ガキとつるんでるからそんな言葉づかいになるんですよ」

別に普通だと思うんだけどな。初対面の者に言われたくないな。

それでこの人は誰? ここはどこなんだ? 

まずは無難な質問から始めるとしよう。


「それで国王様って? 」

「あなたのお父上様でしょう? まさかケンカでもされたのですか? 」

このお付きの者は何でも知ってるらしい。

「昨日だってあんなに夜遅くまで…… 」

説教が始まる。俺まだ眠いんだけどな。

「ほら寝ぼけてないで! きちんと顔を洗って下さいね」

うん? 顔? 

寝ぼけ眼で顔を洗う。今日は何度目のお目覚めだよ。


顔を洗い髭を剃る。そして女子高生を…… おっと間違えた。

では真面目に。髭剃りどこかな?

ルーティンをしようとしても肝心の髭剃りがない。

まあ面倒臭いからこの際無精髭のままでもいいか。


ではもう一度。

顔を洗う。髭を剃らずに鏡を見る。

うん。かわいいな。俺って?

はあ? かわいいはずないだろ? 俺だぜ?

筋トレして汗だくな俺がかわいいはずがない。

でも鏡はなぜかかわいい女の子を映し出す。それこそ姫のよう。


「鏡よ鏡。私よりもかわいい者は? 」

<はい田舎の田舎の毒リンゴ姫です>

うん。やっぱりこの世界はおかしいな。


「どうされました姫様。まさか美貌に見惚れておりましたか? 」

どちらかって言うとかわいい系のメイドが数名で煽てる。

「いやだから…… かわいいはおかしいだろ? 」

「もうまだ格好いいに憧れてるんですか? そろそろ卒業なさいませ」

「ねえ俺…… じゃなくて私は姫なの? 」

「はい。そうですよ姫様。変ですよ姫様? お体でも悪いのですか? 」

そう言って服を脱がせようとする悪戯。

「無礼な! 何をする? 」

「冗談ですよ。それよりも国王様がお呼びだと。早く願います」

もう訳が分かない。まあいいか。国王に聞けば何か分かるだろう。


「お待ちを姫様! 」

そう言うと強引にシャワールームへ。

さも当然と皆で服を剥いでいく。

「ちょっと…… 」

「ホラ恥ずかしがらずに。朝の習慣でございますよ」

おいまさか姫様ってのはメイドに脱がされるものなのか?

何て大胆な。嬉しいような悲しいような。


「ちょっと! あなたたちも一緒? 」

「はい。いつものことではありませんか? 」

シャワーを終えると巨大なお風呂場へ。

本来は身に着けて入るのだがどうやらこの姫様の我がままで裸で入るそう。

本気かよ? 俺は耐えられるのか?

振り返ったらメイドたちのあられもない姿が見える訳で。

ダメだ興奮してきた。どうしよう?

まだ心の準備ができてない。だってお姫様なんですもの。

そうふざけてる時ではなさそう。


こんな重大な時にクソ上司の言葉が下りてくる。

『チャンスを逃してはいけない! お前はいつもそうやって失敗してばかりだ』

分かってますって。チャンスは逃しませんよ。

さあ振り向くとするか。でも不自然じゃないかな?

ここはいっそのこと風呂場まで行って自然に見るのがいい。

見たいか見たくないかで言ったら自分にもよく分からないが。


「入ります! 」

入ります…… うん入ります? 

夢とは不思議なもので夢だと思った途端に目が覚める。

でもここって異世界のはずなんだけどな。


                続く

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