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カンペ―キ報告

宮殿にて。

「暇だな…… 」

ここでも引き続き暇を持て余すボクこと勇者・ノア。


「ははは! ノアは本当にやる気ねえな」

こいつはトロイ。魔王討伐隊では常に後ろを歩く仲間。

トレードよりも軽くお調子者タイプ。

ボクが出世しても変わらずに接してくれるありがたい存在。

だけどそれだと周りに示しがつかないので心を鬼にして叱ることに。


「部隊長だぞ? 生意気な口を利くな! 」

「へいへい。分かりましたよ部隊長様」

「まったくお前と言う奴は本当に…… 」

「そんなことよりお前さ人が変わったような気がするんだよな。気のせい? 」

またしても生意気な口を利く。

「余計なことを考えずにお前も少しは知恵を絞れ! 」


現在姫奪還作戦を皆で考えてるところ。

明後日までは雨が続くそうでまったく動きが取れない状態。

もちろん雨の中強行することだってある。何と言っても後十日しかないからな。

だが今はその時ではない。しかも動かずその場に留まるのは不安だが意味はある。

ボクたちが遭遇する確率が減る。

魔王にせよ姫にせよ宮殿に来ることはない。特に姫は確認済み。

できるならこのまま何もせずにゆっくりここで過ごしたい。


それにしてもトロイの奴めおかしなこと言いやがって。

俺がまるで人が変わったようだとか意味不明もいいところだ。

さっきまでアーノ姫だったからそう言えなくもないが。考え過ぎだ。

トロイか…… 意外にも侮れない奴。


「それで隊長のお考えは? 」

「そうだな。まずは腹を満たすことから始めよう。

下手すれば何日も掛かる作戦。今のうちに食い溜めするのがいいだろう」

隊長に抜擢され姫奪還作戦もすべて任された。

それだけ信頼されている証拠。やる気が出るというもの。

だがもちろん下手に動けない。そこがジレンマ。


「飯は充分ですから隊長のお考えを聞かせてください」

「そうだそうだ! 」

結局のところ寄せ集め。自分で考えようとはせず人任せが染みついている。

だからこそまとめ役が重要。


「そうだな。姫の居所が掴めるまでは余計なことをせず待機した方がいいかと。

きっと姫だってそう思ってるに違いない」

まずい…… つい断定してしまった。でもこれは間違ってない。

人の心を読めるのでなくただ今の気持ちを表明したに過ぎない。


「そうですね。俺もそう思います」

やる気のない者を中心に賛成を得る。

ここに集まる者は精鋭部隊なんかじゃない。ただの役立たずだ。

それは一番後ろについてきたボクが一番分かっていること。


「待ってくれ隊長! 」

情熱的な者が一名。それは元隊長だ。

今は副隊長に降格。何とか手柄を立てて再び隊長の座に返り咲こうと必死。

「分かった副隊長。あなたの好きなようにしてくれ」

実際その手のことに詳しくない。

やる気のある者に任せた方がきっといい案が出る。

ただ案が出たところで採用するかは隊長であるボクが決めること。


「ありがとうございます。よしではまず魔王の住処を見つけるところから始める」

元々が悪さをする魔王軍と戦うために結成された部隊。

結果こうなることは目に見えていた。

こうして一日を作戦に費やすことに。



その頃魔王の住処では。

「魔王様! 魔王様! 」

「ボグ―! 」

「お休みのところ申し訳ありません。カンペ―キが戻ってきました」

カンペ―キ? クマルではなくてカンペ―キ?

一体何を頼んだんだっけな? もう覚えてないや。


「報告いたします。どうやら敵は一人だけではなかった模様。

姫を人質によからぬことを企んでるとのことです」

カンペ―キ報告は簡潔で分かり易い。

「やはり我々以外にも暗躍していたか。それでどこの誰だ? 」

後で面倒な事態になる前に潰す必要がある。


我が姫を危険に晒す不届き者。我々の婚姻を邪魔する者はすべて焼き尽くす!

うーん。魔王様になるとどうも暴力的で短絡的な考えに支配されやすい。

いやはや困ったものだ。


「アンダーモス地方のマックでございます魔王様」

「ああん? 誰だそいつは? 知らんぞそんな奴は! 」

逆切れしてみる。


「落ち着いてください魔王様。奴は卑怯者と噂の小国の王。

奴のターゲットになった者は悉く不審な死を遂げているのです」

胡散臭い輩の登場。とんでもない野郎なのは間違いない。

とは言えやってることは我々の方が酷いのだが。

姫を無理やりさらって契りを結ぼうとしてる訳だからな。


「うん。カンペ―キよ。お前は頼りになるな! 」

これで国王様に報告すればいい点数稼ぎにもなる。

魔王軍の機密情報を流す不届き者は誰だ?

それは魔王様。

「ありがたき幸せ! 」

「下がるがよい! 」

「ははあ! 」


情報収集にはカンペ―キが向いてる。

これだけはまともなものに任せるに限る。

クマルでは魔王軍に危機が訪れることになる。

絶対に判断は誤れない。


「おいクマルは? クマルはどうした? 」

カンペ―キがこれだけやったんだクマルだって報告があっていい。

「申し訳ありません魔王様。それがクマルの奴現在行方不明中でして。

明日には戻ると思うのでどうぞご勘弁を」

「ボグ―! 」

イライラを表現する。


これで少しは魔王様らしいかな?

未だに魔王様の振る舞いがよく分かってない。手探り状態。

姫はもっとだけどな。


               続く

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