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女神の祈り

国王様からのありがたいお言葉。

「よしお前たち。これから魔王軍との戦いが激化するであろう。

その時は怯まずに命がけで戦って欲しい」

「仰せのままに! 」


謁見を終え招集が掛かるまで引き続き宮殿内で待機。

今は微妙な時期。何と言っても敵のアジトも分からず探し回ってる段階。

とは言え姫奪還作戦は着実に進んでいる。

本来だったら魔王退治のはずが目的が変更されて姫救出に。

とりあえず動きがあるまで待機するとしよう。

招集はいつになるか分からない。それまでに体を休め力を蓄えておかなければ。


あれ…… 雨が降ってきた。

そう言えばどことなく温かい。これほど温かいのはなぜだろう?

ううう…… 温かくなったと思ったら今度はまるで熱を失うように冷えて行く。

特に下半身の方が冷えている。これは異常事態?

どうしよう! どうしよう! 体が! 体が!

急激な体調の変化について行けない。

まずい…… これはまずいぞ。



起きて! 起きて!

どこからともなく聞こえる叫び声。相当焦ってるな。

これはただ事ではないぞ。

「あーん。まだ眠いよ。へへへ…… 」

「ほら早く起きるの! だらしないわね」

頬を数発張られてようやく覚醒。


あれここは……

「お目覚めですか大勇者様? 」

嫌味を言う妖精。まだ何一つ成し遂げていない。よくやるよ。

俺まだ眠いし第一疲れてるんだけどな。


「またここ? 」

「そんなこと言わずにシャキっとする! ホラいいわね? では女神様どうぞ」

この様子だと何か重要な事実が判明したのだろう。

それにしてもこの妖精はいつも人の頬を張るんだよな。

何か恨みでもあるのか? ただ気に食わないだけ? すごく痛いんですけど。


「分かったよ…… あれ? 」

「どうしたの? 挙動がおかしいわよ? 」

くそ! こんな時に。目ざとい妖精だ。

何でもないと返すが疑いの目を向ける。

「ほら女神様から大切なお話があるんだから! 寝てないで布団から出なさい!」

こんな時に限って拘る。そんな細かいことどうでもいいじゃないか?


「いやでも…… 」

「ほらほら! 失礼でしょう? 」

いくら妖精に言われようとそこから動かない。いや動けない。

粘るんだ。なるべく長引かせて乾くまで。へへへ……

「もう仕方ないわね。では女神様。よろしくお願いします」

どうにかごねてごまかした。これでいい。これで。

プライドに賭けても気づかれる訳には行かない。


<大変なことが分かりました。どうか落ち着いて聞いてください」

女神様は覇気がない。これはよっぽどのことだぞ。

微笑の女神様から笑顔が消えた。その原因は恐らく……


<はあ…… 何て言えばいいのでしょう? >

ため息ばかりの女神様。もう俺たちは終わったかも? 心して聞くことにしよう。

「女神様。気持ちは分かりますが本人にきちんと伝えなければ。

このままと言う訳にも行きませんよ」


女神様も妖精も俺に何が降りかかろうとしてるのか心得ているのだろう。

そんな状況で俺だけが知らない。仲間外れはよくない。

だが一向に教えようとしない女神様。

だったら代わりに妖精が言えばいいじゃないか。

ははは…… そう言う訳にも行かないのだろうな。


「はっきり言ってくれ! 俺はどうなるんだ? 知ってるんだろ? 」

我慢しきれずに女神様に食ってかかる。

何だかここだけシリアスな展開。ほぼギャグなのにな。おかしいぜ。


<ではあなたの身に起こるとんでもない事実をお話しましょう。

実はあなたのいる異世界は残念なことに約十日後に消滅します。以上です>

女神様はまるで感情を込めないように淡々と語っている。

確かその話なら前にも。小出しにされても困るんですが。


「ちょっと待ってくれよ! それだけ? もっと詳しく教えないのか? 」

<ですがほぼギャグのような世界観ですから。

そこに相容れないシリアスパートなのでこれくらいさらっと>

女神が気を遣う。その裏には絶望的な未来が待っている。

これは思ってる以上にまずいな。解決策はないのか?

普通は衝撃の真実と共に解決方法を示すんじゃないのか?


「ああ女神様もう少しだけ! 」

「ちょっとあなたふざけない! 」

女神様に代わって生意気な遅刻魔の妖精に怒られてしまう。

「でも…… ボク不安なんだ」

いつの間にか足が震えている。体だってこんなに濡れている?

「もう情けないわね! 」

「そんなこと言ったって…… ううう…… 」

足から伝わった震えは全体に。ついには声まで震えてしまう。


<迷える子羊よ。その魂を救い給え! >

女神様はもはや自分ではどうすることもできずに祈りを捧げる。

一体どこの誰に? 女神様がこの世界で一番ではないのか?

ただの責任放棄。または現実逃避。

これはますます危なくなってきたぞ。


<救い給え! >

「ああ救い給え! 」

仕方なく後に続く。

三人で無心に祈り続ける。

これで少しは助かる確率は上がるのだろうか?


そろそろ乾いたかな?


                続く

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