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新隊長就任

早朝。魔王様の隠れ家。

「魔王様。起きてください! 」

寝てるところにいきなり醜悪な顔を近づける困った奴。

恐怖に駆られつい大声が出てしまう。

「どうしました魔王様? 」

「ボグ―! ボグ―! 」

何度注意すればいい? 今度やったらタダでは置かない。


「それでどうした? 騒々しいぞ」

「クマルが迷った末に戻って参りました」

「ほう…… クマルがな」

「どうもクマルは当てにりません。カンペ―キに任せてみてはいかがでしょう?」

クマルは可哀想なぐらい信頼されていない。

この魔王様が高く買ってると言うのに。

普段の言動で判断させるからな。仕方ない部分がある。

ははは…… 魔王様がたかがモンスター一匹に同情してどうする?

ここは優遇も同情もなしだ。フラットに見るべきだろう。


確かにまともな判断ならばカンペ―キを選ぶだろうさ。

だがきっと魔王様のために尽くしてくれると信じている。

作戦失敗に向けて全力で引っ掻き回してくれるはず。それがクマルだから。

我々を混乱させる天性の能力を備えている。

おっと…… 少々買い被り過ぎかな?

 

「戻りました! 」

そう言うと跪いて機嫌を窺う。

うんそれでいい。それでこそクマルだ。

「挨拶はよい。それよりも魔女のメモを寄越せ! 」

「はいこちらです。あれ…… なぜそのような? 」

うわ…… 疑われてしまう。つい見ていたものだからポロっと。

今後は気を付けなければ。もしクマルでなかったらごまかせない。


「お前の喜びようと慌てようを見れば大体の予想が付く。

お前は余計なことを考えずに早くすればいいんだ! 」

魔王様らしく有無を言わせずに恐怖で支配する。

「へへい! 仰せの通りに! 」


アーノ姫の潜伏先候補が三か所書かれたもの。

そうかここに姫が? これは思いもよらぬ場所に潜んでいるようだ。

魔女の情報網は魔王様のそれをはるかに凌ぐもの。

「うむ。ご苦労だったな。下がっていいぞ」

どうするかはこっちで決めるとしよう。

「魔王様。どうぞご指示を! 」

「よし手分けしてこの三つの候補先を探してこい。分ったな? 」

「はい! 」

こうして無駄な捜索が始まった。



勇者・ノア。

その頃宮殿では姫救出作戦が話し合われていた。

「急襲すると言うのは? 」

隊長が進言する。

「しかしどこにいるか分からんのだぞ? 」

国王はお休みになっているので代理の爺さんが。

彼は先代の国王からの信頼が厚く現国王が即位されてから相談役としても。

頭も切れるし面倒見もいいとの噂。

「大丈夫。囮を使いましょう」

隊長はどうも見当違いをしているような気が。


「おい待て待て! 何も奴らはこの国を乗っ取ろうと姫をさらったのではない」

「まさか違うと? では何のために…… 」

「お前らは当然知らんだろうが魔王との戦いは今に始まったのではない。

それは先代や先々代の王から。激しい争いを繰り広げていた。

魔王は美しい者に目がない。己が醜いものだからつい惹かれてしまうのだろう。

アーノ姫は魔王に目を付けられてしまったのだ」

「では囮は無意味だと? 」

「ああいたずらに囮を使ってもその者を危険に晒すだけ。

他にないか? 誰でもいい! 姫様が魔王の手に落ちた今急がねば大変なことに。

もうすでに手遅れかもしれんがな」


爺さんは諦めた様子。確かに絶体絶命の状況。

傍から見ればそう見えて当然。でも相手はあのクマル。

失敗こそすれど成功はしない。彼に任せておけばこの後も問題ない。

ただこれ以上失敗を続けるとクマルの立場が危ういが。

そこだけは気を付けるべき点。


「落ち着いてください! アーノ姫はきっと無事ですよ」

「根拠もなく適当なことを抜かすな! 」

「そうだぞお前。少しおかしいぞお前」

爺さんの怒りに同調する隊長。

おかしいだと? そんなことあるか! 当然適当でもなければ根拠もある。

ボクが無事なのが何よりの証拠。

とは言えそんなこと口が裂けても言えないから困ってる。

余裕とは裏腹におかしな状況。常識に囚われ過ぎ。

仕方がない。ここはもう少し無責任に行こう。


「きっと大丈夫。仮に魔王に囚われてもすぐに何かされることはないでしょう。

せっかちな魔王にはとても見えませんからね」

どうにかして落ち着かせたい。現状問題がない以上いたずらに騒いでどうする?

「冷静だな。よしお前には隊長になってもらう」

「はああ? いえ結構です」

目立っては元も子もない。丁重にお断りする。


「口答えするでない! これは命令だ! お前に拒否権はない。従ってもらうぞ」

「はあ…… 」

「お待ちください! 奴には到底無理ですよ。まだ荷が重い。この私にお任せを」

隊長は必死。実力を示そうとしている。

「ボクとしてもそちらの方が…… 」

「黙りなさい! もう決めたことだ。大人しく従ってもらう」

こう言われては断れない。

隊長の座を追われた男は恨めしそうに睨む。

おいおいボクのせいじゃないって。不可抗力。


こうしていつの間にか魔王討伐部隊の隊長へと抜擢された。

あーあもう本当に面倒臭いな。なぜこんなことに?

長くなるといけないと口を出したのがマイナスに働く。

やってられない。


              続く

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