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エピローグ前編

エピローグ。

女神様のキスで愚か者(主人公)が目を覚ます。

これにより異世界・ザンチペンスタンのカウントダウンが止まる。

愚か者の生還でそもそもの原因を取り除いたことにより消滅の危機から逃れた。

こうして異世界・ザンチペンスタンは再び平和で美しい世界を取り戻した。


その後の愚か者はと言うと……

また残業かよ! 深夜遅くまで働かせやがって! 

「お疲れ。これ飲んでよ」

上司はあの転落事件以来気を遣うようになった。

マスコミに散々叩かれたから懲りたのだろう。

「悪いっすね」

ありがたく受け取るがこれ炭酸水なんだよね。

できたら普通の水かコーヒーにして欲しいな。

まあ我がままではあるけれどそれが優しさじゃないのかな?

そんな風に堂々と文句が言えたらな……


残業を終え帰宅の途に就く。

今のところ睡眠は充分過ぎるほど。だからトラブルは起きないだろう。

希望的観測であり楽観視していてはまた同じようなことが起きないとも限らない。


工事の音が響く。どうやら近くでまだ工事をしてるらしい。

前回の失敗を教訓に駅へと続く大きな通りを選ぶ。

もう絶対に二度とあんな悲惨な目に遭うものか。

暗い夜道を近いからとショートカットはしない。

もう懲りたし学習してるんだよ。


どうやら大規模な工事がまだ続いているらしい。

そうだよな。人が落ちたからって工事は中止できない。

あれから一週間経っただけだもんな。長かったようで短かったそんな日々だった。


どうしてるのかな女神様は? あの生意気な妖精は?

皆忘れてしまっているようだった。

俺の救出劇に関わったおばちゃんに加害者の加賀。それと医者。

全員が全員女神様のことを覚えてない。

恐らく女神様が自分に関するところをきれいに消し去ったのだろう。


だから忘れたと言うか覚えてない。そもそもなかったことになっている。

妙な話だが俺の方が間違っているのではと思うことも。

でも違うよな? 俺はずっと異世界・ザンチペンスタンでやってきた。

勇者として姫として魔王様としての役割を全うした。

その記憶も鮮明にある。それはなぜか? 恐らく女神様とキスをしたから。

本来あり得ないような出来事は夢として処理され忘れてしまう。

しかし俺は女神様とキスしたことにより覚えている。

始まりの地からのことを鮮明に記憶している。それが何だか嬉しい。

ただ俺以外の誰も覚えてないとなるとイカレタ奴の妄想で処理されてしまいそう。


「おいそこ! 」

女神様のことを考えてぼうっとしてると大声で怒鳴られる。

「済みません…… 」

「あれ? あんたは俺が助けた急病人。おいおい元気していたか? 」

加賀が笑う。奴の記憶では俺を落としたマンホールの記憶はないらしい。

それは女神様の配慮。

確かに俺が生き返り罰も受けたがその罪悪感から逃れられないとの判断。

そうすると俺は誰に落とされたことになるのか? 誰が俺を救ったのか?

辻褄が合わなくなったがそれでも人々は気にする様子もなく次の事件へ。


「ああうん」

どうすればいいか難しい。俺たちはマンホール転落事故の被害者であり加害者。

本来決して交わってはいけない相手だ。

「そこは工事中だから気をつけろ」

「今度は何の工事? 」

「陥没が起きないようにほじくり返してるんだ。要するに点検作業って奴だ」

「うわ…… それは大変だ! 」

「まあな。だからこの辺を歩くなって。危ないぞ! 看板があるだろうが! 」

夜遅くまでご苦労なこと。さあ俺は一足先に帰らせてもらうか。


うわああ!

足元が暗く訳も分からずにつまずいてしまう。

「おっと…… だから気をつけろって! 」

「ありがとう」

こうして再びの危機をどうにか回避するのだった。

さあ帰ろう。


家へ。

無言の帰宅を試みるが何だか変だ。

まさか…… トラブル発生? これ以上は勘弁して欲しい。

女神様から始まりの地もザンチペンスタンも出禁扱いを受けている。

俺のせいではないとは言えこれ以上の災難は避けたい。


「お帰り! 遅かったじゃないか! 」

心配なのかあれから我が家に居座るおばちゃん。

甥っ子が心配なのは分かるがもう充分でしょう?


「そうだ。お前には今日いいものを持ってきてあげたよ」

うわ…… この言い方は里帰りした時とまったく同じ。

だとすると絶対にあれだよな。

「結構です! 断って来て下さい! 」

「まだ何も言ってないだろう? せっかちだね」

「どうせいつものあれでしょう? 俺にはきちんといるんだから」

「まあ。この子はもう焦って。それに今回はそっちじゃないって」

何でも有名人だと言う。本当かよ?


「ほれお前の大好きな○○ちゃんだ」

「ええっ? 誰? もしかして…… でも」

 「落ち着きなって。名前は…… あの…… 誰だったか度忘れした! 」

どうやらこれは彼女じゃないな。

「ほら奥の部屋にいるから。行っておいで」

おいおい何てことをしてるんだ? 俺まで犯罪の片棒を担がされるのか?

ただのお婆さんの悪ふざけでは済まないぞ。


「悪いなおばちゃん。俺には心に決めた人がいるんだ。だから…… 」

「はあ誰だいそれ? 」

「女神様だ! 俺には女神様しかいないんだ! 」

「女神様…… 」

そう言うと何とか思い出そうと思考を巡らす。

「女神様ってあんた正気かい? 」

どうやらもう諦めたらしい。

「正気も何も俺を救ってくれた方だ。恩義がある」

「でも実在しないよ? 」

「いやいつかどこかでまた会える気がして…… 」


出会いの予感がする。

やはり女神様のキスは格別。忘れようと思っても忘れられない。

きっと女神様は俺を気にってくれたんだろう。

愚か者なんて酷いこと言ってたけどたぶん照れ隠しさ。


「馬鹿者! 正気になりな! 女神様ってそれは実在しないよ」

「いやだからいたんだって。俺は助けてもらったしキスまでした」

これでいい。俺は本気だけど本気じゃない。

よく分からない女性を紹介されても困る。

俺にだって好みと言うものがある。そう女神様だ。

女神様に似た世界の絶世美女なら文句ない。

ただのよく分からない有名人は嫌なんだ。


「ほれ我がまま言ってないでとにかく行っておやり」

どうやら合わないと帰ってくれないらしい。

俺を心配して留まってたのはこれが目的だったんだな? お節介なんだから。

仕方ない。その有名人って人に会ってみますか。


「失礼します」

なぜか自分の家なのに畏まってしまう情けない俺。それにしても緊張するな。

うん? 誰と言うか何だ?

物体がこちらに飛び掛かって来る。

「お前は…… ノア! 」

ノアは地域猫で近所の家々で世話をされている。

だから人気も高くこの街のアイドル的存在。

ブラウンで目が青く鋭い。だが人懐っこくて触ってもらいたがるから人気は高い。

そんな地域猫のノアが我が家にやって来た。

おっと…… そう言うことじゃないだろう?


「いや離れてくれなくてさ。仕方なく家に上げたんだ」

「まずいって。ここは猫は禁止なんだから」

「一晩だけじゃないか。さあおいで」

ノアは叔母ちゃんに甘える。

何だてっきり女の人かと…… 

一騒動終えてようやく眠りにつく。


もう二度とあんなことはごめんだ。

女神様とはもう一度会いたいけどね。

おやすみなさい。


ああ女神様! もう一度だけ!


             エピローグ後編に続く

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