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眠くてつい…… 

新たな世界。

うん? ここは……

目の前には叩き起こそうとする者の姿が。

何人たりとも俺の眠りを妨げる者は許さない。

それが女神様であろうと誰であろうと。


「おい何をやってるお前! いい加減旅立つんだよ! 」

確かマンホールから落ちて女神様がいて気持ちよさそうなベッドが……

そうかすべて夢だったらしい。変だと思ったんだよね。

ははは…… おかしな夢を見るな。

「まさかまた出張ですか? 今月はない。来月だって言ったじゃないですか?

あれほど何回も確認したのに間違っていた?

もう知りませんからね。どうなっても責任を負いませんよ」

「戯言はそれだけか? 」

怒りの表情の爺さん。

あれおかしいな。まだ夢なのか? おかしな世界に迷い込んでしまったらしい。


「その…… ここどこですか? 」

それが一番聞きたいこと。

ただ気持ちよく寝ていたはず。恐らく会社の仮眠室か家かで。

「いいから来るのじゃ! 」

「うわちょっと…… 痛い痛い! 」

強引に引きずられていく。俺が一体何をしたって言うんだよ? 

「ほれ他の者は旅立ったぞ。お主もいい加減諦めんか! 」

説教して考えを改めさせようとする。


「行くがいい勇者よ。我が村を! そして世界を救うのじゃ! 」

どうやら俺はどこかの村の勇者らしい。

この話どこかで聞いたような…… 女神様が言ってなかったっけ?

もしかして本当に転生したの? どうも実感が湧かないんだよな。


ついに訳も分からずに旅立つことに。

困難に立ち向かう姿。それは素晴らしい。

「行ってらっしゃい! 頑張ってね! 」

手を振る民衆。ほとんどが村の子供たち。

あるいはお年寄り。ここも高齢社会の成れの果て。

別に俺には関係ないことだけどね。


「これを私だと思っていつまでも元気に! 」

そう言うと人目も憚らずに抱きつく少女。

見た目はかわいいが何となく恐怖を感じる。

たぶん勇者はこの子に振り回されたんだろうな。

勇者の恋人? あるいは幼馴染だろうか。

お守りを手渡される。

「ありがとう。行ってきます! 」

「絶対に戻って来て! きっとだよ」

いつまでもいつまでも手を振り別れを惜しむ。


慌ただしい出発の儀式を済ましついに旅立つ。

ところで俺ってどこに向かってるんだっけ?

目的はおろか方角も分からないので適当に歩みを進めることに。

こっちだっけ? まあ何とかなるでしょう。

しかしすぐに道はなくなり森になる。

まさかここが目的地? いや違うな。ただ道を間違えただけだろう。

ここは一度村に戻るのがいい。


「ただいま」

「おう勇者や! さっそく戻って来たかって…… 何をしておる? 」

「ははは…… 準備運動です」

下手な言い訳でごまかす。

これでは先が思いやられると自覚している。


では改めて出発。

「行ってきます! 」

こうして村を通り過ぎ旅立つ。

「あいつ本当に大丈夫かの? 」

「問題ないですって。やる時はやりますから」

どうも疑われてるらしい。当然か。

しかし心配しなくていい。必ず役目を果たすぞ。

一歩を踏み出したところで急に意識を失う。



始まりの地。

「ふと目を覚ますとまたしても女神様のところ。どうやら夢だったらしい。

出発の夢って何か意味があるのかな? まさか旅行したいとか?

確かに一年以上旅行には行ってない。

泊まりがけで行くのは出張ぐらいなもの。

心のどこかで飢えている? 欲している? そうに違いない。


<遅くなりました>

女神様が来たので起きることに。

<まさかあなた寝てませんよね? >

「いえただ今後のことを考えていただけです」

<不安な気持ちはよく分かります>

「それで何かありましたか女神様? 」

<それがもう少し時間を要するとのこと。我慢できますか? >

「もちろん。運動でもして待ってますよ」

<申し訳ありません。こちらの不手際であなたに不快な思いをさせてしまって>

女神様は謝るが悪いのは遅れている案内役であって女神様ではない。


「そうだ女神様。このベッドは何でしょうか? 」

気にならないと言ったらウソになる。女神様は何かを恐れている気がする。

<これは転生用の装置で夢を見るようになってるんです。

その後その夢の主人公の世界に送られる仕組み。だから絶対に勝手に寝ないこと。

もし違う夢を見れば大変なことになりますよ>


「ちなみに女神様と一緒に寝ればいいのでしょうか? 」

<いえ一人用です。そうだ私は忙しいので大人しく待っていてくださいね>

そう言うと走って行ってしまった。随分忙しいんだな女神様も。


女神様はあんなこと言ってたけどたぶん大丈夫だろう。

でも寝るのはさすがにもうやめておくか。言いつけを守るのが大人。

無闇に禁を犯して酷い目に遭うほど俺は馬鹿じゃない。


               続く

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