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忘れ物

ついに愚か者に繋がる手掛かりを発見。

潮夜と名乗る謎の女の登場により物語が動き出す。

何と彼女は愚か者が転院した先に勤務していると。

今日は疲れたと男に愚痴る彼女の話から偶然にも発覚。


「そろそろお食事にしましょうか」

呑気に夕食の話をする。もうこちらを見ていない。

決して悪気があるとは思えませんが女神様を無視する形に。

これでは祝福も加護もあったものではない。

あたかも自分たちだけの空間を演出しているかのように。


「あの…… 関係者なんですが」

加賀が食い下がる。ですが余計なことを言って気分を害されたら厄介。

果たしてうまく行く? そこまで不器用ではないが閉め忘れるぐらいですから。 

「はあ? どのようなご関係ですか? 」

明らかに訝しがってる。彼女は加賀だけでなく女神様の存在も怪しむような動き。

何と言うことでしょう? まさか女神様まで疑うなどあり得ない。


「実は…… 」

自分は加害者で謝罪のために居所を知りたいと告白する加賀。

これでうまく行くなら問題ないのですが簡単ではない。

「あの転落事故を…… ですがそれは関係者とは言えない。

どちらかと言えば加害者であるあなたを近づけられません。

それは分かるでしょう? 」

加賀を説得する。いつもこの手の対応には慣れてるらしい。

それは事件の場合であって事故でも近づけられないのだろうか?


「とにかくそう言うことですからお教えできません」

徐々に不機嫌になっていく。ただ勤務先を教えてもらえるだけでいい。

それさえも拒否する周到なところを見るとまだ疑われているのでしょう。

あるいは個人情報だから?


「なあいくら掛ったんだ? 」

「それが信じられないほど高いの。きっと遠回りしたんだと思う。嫌になる」

男に愚痴を零す女性。もう完全に二人きりの世界に入ってしまった。

前方へ歩き出しいつの間にか人ごみに紛れ込む二人。

もしこのまま放っておけばせっかくの手掛かりを失うことになる。


「ちょっと待って…… 被害者の身元引受人なの! 」

それは異世界での話。多少違っても彼の気持ちもきちんと汲んでるので問題ない。

決してトラブルになるようなことはない。

「もうしつこいな! 家族以外は仮に恋人でもお教えしません。

どうしても知りたいなら警察を使えばいいでしょう? 」

潮夜は決して口を割ろうとしない。これは骨が折れそう。

時間が掛かり過ぎては消滅まで間に合わなくなる。

ノロノロしてる余裕はないのに困りましたね。

ここは正直に告白して協力を得る方が得策でしょう。

しかし果たしてうまく行くのか正直不安なところがある。


「実は何を隠そう女神様でして。被害者を救うために現世に降り立った。

どうかこの女神様にすべてを話して頂けませんか? 」

もうここで手をこまいてる訳には行きません。すべて正直に話して協力を得る。

「行こう! ははは…… 女神様だってっさ? もう滅茶苦茶なんだから」

「そうだな仕方ないか。俺たちはこれで」

「嘘? 信じてるの? 」

「ああ…… 俺にとっては理想の女神様だからな。もう過去の話だがな」


男は手を振ろうとすると潮夜に引っ掻かれてしまう。

「何するんだ? 痛いだろうが? 」

「私と言う者がありながら…… 悔しい! 」

再び始まる痴話喧嘩。もう見ていられない。

ですが彼女は間違いなく愚か者の居場所を知っている。

もう彼女から情報収集するしかない。


「待て! 待て! すべては過去の話さ」

男は格好をつけて言い訳する。酷いもの。こんなので騙されるはず……

あらあら。潮夜は納得したのか甘えて寄りかかる。


「女神様どうしましょうか? 」

加賀は指示を待つ。できるなら彼に任せたい。でも無理そうですからね。

「では俺たちはこれで」

何だかんだ仲のいい二人。末永くお幸せに。

女神様から祝福を与えようか…… いえいえそんなことしてる余裕はない。


彼女の元へしつこく。

待って! 待ってください! 

潮夜が睨む。せっかくの二人っきりの時間を誰にも邪魔されたくないらしい。

こちらとしてもたかが下界の男女にそこまでの興味はない。

それに叫んだのは別の人。男の声だったはず。

もちろん加賀でもない。では一体誰?

睨みつけてるのは女神様への嫉妬からか? 再び取られると思ってるのでしょう。

しかし彼と付き合っていたはずもなくただ現場近くまで乗せてもらっただけ。


おーい! おーい! 

明らかに後方から呼ばれているのが分かる。

しかし誰を呼んでるのか呼ばれているのかまでははっきりしない。

駅へ駆けて来たのは見知らぬ男性。またこの段階で新たな登場人物?

これ以上複雑にされても困ります。


「お客さん! 忘れものですよ。帽子を落としていきましたよ」

どうやら彼女を乗せた運転手らしい。

「ありがとうございます」

そう言うとイライラ気味だった態度を一転。

こうして運転手さんの機転で忘れ物を回避できた。

何て素晴らしいことでしょう。彼は彼女の救世主? 

そこまで大げさではないでしょうが。


最近忘れ物が多くなってるのでお気をつけください。

そう言うと急いで戻って行った。

「うんうん。立派ですね。そうは思いませんか? 」

「何を呑気なことを。さあ急ぎますよ女神様! 」

加賀の目が輝いた。これは何かある。

「ちょっと…… 」

「いいからついて来て下さい女神様」

加賀は運転手の後を追いかける。

一体どうしたと言うのでしょう?


                続く

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