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お助けキャラの限界

最後の三日間・最終日。

魔王様のターン。


カンペ―キ洞窟。

「ボグ―! 」

「ははは! また魔王様みたいなことを今回は絶対に引っ掛からんぞ! 」

魔王軍は気が緩みっぱなし。モンスターの天下となったこともあり緩んでいる。

最近の魔王様が厳しくしないから舐めている部分も。

バカな奴らだ。大人しく素直に晩餐会の準備をしていればいいものを。

調子に乗ってふざけてるから取り返しのつかないことになるのだ。

だが魔王様だからイチイチ注意などしてやらない。

従わぬ者にはその体で償ってもらう。運が悪ければもっと大事なもので。


「うん? まさかこの魔王様に逆らう気か? 」

魔王様登場に誰も声が出ない。

「なぜ魔王様が…… 」

「貴様らふざけているな? そんなことでは大事な晩餐会を任せられない。

悪いが消えてもらうぞ! 」

規律の乱れた魔王軍を魔王様のカリスマで立て直す。


「お待ちください! こいつらは何も。責任は私が取ります」

魔王様に助命を求める責任者。今日は素晴らしい日。魔王様は上機嫌。

だから魔王様もそこまで怒りも処罰もしないだろうと高を括っている。

だがそれは今までの魔王様。本来の魔王様は冷酷無比だ。

そのことを忘れている。仮に思い出したところでもう遅いのだが。


「ではさっそく責任を取ってもらおうか。消えろ! 」

躊躇わずに責任者を抹殺する。復活の魔王様。

「うわああ! 」

「甘い奴も情けない奴も我が魔王軍には不要だ。誰か責任者となりもてなすのだ」

機嫌がすこぶるいいはずの魔王様がなぜか容赦ないと思ってるんだろうな。

そこに理由など存在してはならない。

魔王様は常に恐怖の対象でなければならない。

無慈悲で残酷なのが本来の魔王様なのだ。


「なぜ? 魔王様…… 」

信じられないと恐怖と呆気で固まってしまう。

「そうだな。貴様らには言ってなかったな。昨日までの魔王様は偽物だ。

情けないことに処分も襲撃もせず日和見をしておった。でももうそれは昨日まで。

今日からはいつもの魔王様に戻る。


すこぶる機嫌がいいので責任者一人を消しただけに留めた。

貴様らは魔王様の慈悲に応えるんだ。さあ急いで支度しないか! 」

「へい魔王様! 」

ついに魔王様は覚醒した。もう迷いがない。

ふふふ…… それでいい。それでいいんだ。



始まりの地。

「それにしても退屈ですね姉様。何もないと言うのも辛いものです」

魔女は役目を終え始まりの地に戻され寛いでいる。

大魔法を復活させた今の魔女なら魔王様さえも凌駕するだろう。

「でもいくら不平等でもあなたを戻すのはまずかったんじゃないの? 」

「女神様の判断でしょうか? いやでも違うか」

魔女はここのシステムを理解している。

「それにしても平和ですね」

そう言って思いっきりため息を吐く。

失礼でしょう? 私に言ってもどうにもならないのに。


「ねえどうだった愚か者は? 」

さっきまでアーノ姫の元にいた。

相談役として機能していたとはとても思えないが温かく見守っていた。

今だって何とかしたいと封印した大魔法を使ってどうにかしようと。

でもそれは許されない。お助けキャラには限界がある。

それはノアのサポート役の私も同じ。辛いですがただ見守るしかない。

異世界の行く末を見守るしかない。


「そうだ姉様。新世界はどうなってますか? 」

皺くちゃなやせ細った体にボロボロの歯を覗かせる。

魔女は若い頃からこのまま。スタイルの変更はない。

最近の魔女は見た目だけに拘ってかわいらしい幼女タイプの女の子ばかり。

それは幼いからでもなく若いからでもない。魔法を使ってごまかしてるだけ。

常に嘆かわしいと愚痴りますがそれは妖精である私も同じなので黙ってしまう。

別に媚びてはいない。そもそも何に媚びようと言うのです?


妖精は年を取らない。歳月が過ぎようともそのまま。

当然僅かながらの変化はあります。でもそれも化粧やメイクでどうにでもなる。

もう私がいくつでどうして存在するのかも忘れただ女神様の元に。

そうやってずっと仕えてればろくでなしや愚か者とも出会う。ほとんどが男性。

どうも妖精の見た目から下に見て舐めてるのが言葉の節々から伝わって来る。

今回も愚か者一号が言いつけを守らずに引っ掻き回してこんな事態に。

ああ何でこうなるのか? 自分でもまったく分かりません。


「聞いてますか姉様? 姉様? 」

「もちろん。スクイーラは平和な国。恐らく善人しか育ってないでしょう」

自信がある。できるならザンチペンスタンは消滅して欲しくない。

現世の者がスクイーラに行けば周りの者が毒されそのまま世界は滅亡してしまう。

そうなったら女神様だって悲しむ。


「善人しかって? それはいくらなんでも誇張し過ぎでは? 」

「いえそれそうでもないの。スクイーラは特別な世界。

お互いに尊重し合って生きている」

「ですが悲惨なネズミに転生するようになっていたはずですが」

「そう人間だけなら一見理想的な世界。

でも全体…… スクイーラ全体ではそうは行かない」

人間にとって代わろうとする動きを見せている。

偽りで生温い人間に代わり支配しようとするものが。

邪悪な生き物が登場しようとしている。

しかし人間が力を持つよりはマシと捉えなられないこともない。


「今のところ問題はありません。他の生物の動向をチェックする必要がある程度」

「そうですか。ならばやはりザンチペンスタンは消滅させられませんね」

魔女もそうだし私だってできるなら消滅させたくない。

でもそれは私たちにはどうすることもできない。

異世界・ザンチペンスタンの運命は三人に託された。


                   続く

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