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男の行方

異世界・ザンチペンスタン。

タイムアップによって主役がアーノ姫から魔王様へ。

「お願い! 約束だけは守って! 」

「約束? ああ契りを結ぶと言うあれか? ふふふ…… ははは! 」

「何を言ってるの? 約束したでしょう? 」

「ははは! 約束? 」

魔王様は浮かれに浮かれている。

情けないことにこれではクマルと大して変わらない。


「お願い! 」

「ふふふ…… 今は最高に気分がいい。

その程度の願いぐらい聞いてやらなくもない。

だが三日目。魔王様のターンになっても覚えていられるかは未知数だぞ」


魔王様が魔王様である理由。

強く非情で残酷。

それが魔王様のスタイル。魔王様が魔王様たる所以。

魔王様が約束を守るだろうか?

虐殺の限りを尽くすような気がする。


カウントゼロ!

抵抗虚しくアーノ姫のターン終了。

これにより魔王様の暗黒世界が決定的となった。

消滅してもしなくてもザンチペンスタンは滅んでしまう。

デストピア発動。

バッドエンドを迎えることに。



現世・仲町。

「あの…… 」

男の会社に行ってみるもまったく相手にされない。

忙しいと一時間以上待たされようやく話を聞くことに。

「ああ彼ね。残念だったよ。実に残念だったよ。うんうん」

他人事みたいな感想に終始。まさか名前さえ覚えていないのでは?

直属の上司のはずですがどうも関心が薄い。


「残念って…… まだ彼は…… 」

なぜ女神様がこのようなことを指摘しなければならないの?

それに今はこんなことをしてる場合じゃない。

「あなたが知り合いだと言うから通したし話もした。

もちろん彼の入院先だって我々は知ってますよ」

危うく不謹慎なことを言いそうになったので無理やりごまかす。

慌てたものだからお茶を零してしまう。分かりやすい人。

そもそも男を酷使して寝不足に陥らせたからこんな事態になってるんじゃない。

責任を取れとまでは言いません。ですが何かしらの責任を感じて欲しい。

そして責任を感じているなら全面的に協力してもらいたい。ただそれだけ。

居場所を早く教えて頂けると助かる。


「お願いです。彼はどこに? 」

「それは個人情報だから君には言えないんだ。何度言えば理解してくれるんだい」

ケイジと同じ反応をする。

「ですがすぐにでも駆けつけなければなりません」

あの愚か者のために必死になるがそれでも協力してくれる者はいない。

このままでは本当にタイムアップになってしまう。


せっかく現世まで来たと言うのに会えなければ何の意味もない。

無駄に無駄を重ねたことになる。

これでは犠牲になった面々は浮かばれない。


羽衣を奪われた少女。

命を奪われたであろうヒサン。

それから女神様の美しさに心を奪われたドライバー。


そこまでしてたどり着いたのにまさか彼に会えないなんて。

「あんたは若いけれど恋人かい? 」

どうも女神様は少女のように見られがち。

確かに理想の女神像に映るのでしょうがそれは見る者に任されている。

どうやらこの国の方は理想像を幼い少女に定めてるのでしょう。

ただの絶世の美女だけで充分なのですが。


女神様はどうしても人を引きつけてしまう。

それは男女関係なく誘われてしまう。惑わされてしまう。

ですから女神様は必要以上に現世と言うか下界にいてはならない。

人々の人生をも狂わせてしまう。それほどの魅力を持っている。

自覚してるつもりですがそれでも自分ではどうにも抑えきれず溢れ出てしまう。

そんな不器用な女神様を許して欲しい。決して意図があるのではない。

ごく自然に振る舞ってるに過ぎないのです。


「なあ恋人だろう? 」

黙っているとしつこく聞いて来る。

「いえ女神様です」

正直に答える。混乱は招きたくないですが嘘もつきたくありません。

「最近寝てないと思って心配してたがこんなおかしな姉ちゃんと遊んでたのね。

マンホールに落ちたのも納得だ」

不謹慎にも大笑いを上げる。

どうも皆さん納得してくれない。


「ですからあなた方が残業を強いるからマンホールに落ちたのではないですか?」

つい愚か者に代わってガツンと言ってしまう。

「ははは…… 酷いこと言うね。こっちは優良企業で通ってるんだよ?

失礼なことを抜かすんじゃない! 」

どうやら自覚があるらしく声を荒げる大人げない男。


「失礼しました。入院先を教えて頂ければすぐにでも立ち去りますので」

これ以上ここで話しても時間の無駄。

「だから教えられないんだって個人情報だから。

無闇に人に教えると俺が訴えられる訳」

どうでもいいことにこだわりを持つ。

「お願いします! もうあなたしかいないんです!

祝福を捧げることもできますよ」

譲歩する。愚か者を死に追いやった男に祝福など普通しない。

しかし今回は特別大サービス。


「へへへ…… お相手してくれるのかい? 」

ダメだ。女神様だからって舐められている。

これでは祝福を授けられない。

「まあ近くのどこかだとだけ言っておこうか」

「もっと具体的に? どこから近くなんですか? 」

どうにかして詳細を聞きだしたい。


「だから現場さ。マンホール落下現場付近の病院に緊急入院している」

具体的な話が出た。これでどうにかたどり着けるかもしれない。

「ああ姉ちゃん。来週は俺の相手もしてよ」

相変わらず女神様を舐め切った態度に出る最低男。

女神様の言うことがなぜ聞けないのでしょう?

祝福を授かるチャンスを失うなど愚か者でしかない。


「では最後に一つ。彼には家族は? 」

「ああ一人だって言ってたな。悪い。その手の話は社内ではしたがらないんだ」

どうやら男は秘密主義者らしい。


                  続く

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