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神待ち人

女神降臨。

ヒサンの犠牲により男たちの襲撃から逃れる。

ああ彼は果たして無事だったのでしょうか?

怪我などしてなければいいのですが。

自分を囮にして逃がそうだなんて格好をつけ過ぎです。

彼の力ではどう考えてもあの輩に立ち向かうのは不可能。

それなのに無茶して。この女神様を助けたばかりに悲惨な目に。

やはり彼を巻き込むべきではなった。

分かってたのに彼の優しさに甘えてしまった。


それでも前に進むしかない。もう時間がないのです。

あの愚か者が息を引きとる前に何としても見つけ出さなければなりません。

恐らく近くの病院で入院しているはず。現世は久しぶりですからね。

民を混乱させないためにも正体を隠さなくては。

ヒサンにさえ伏せた事実。最後まで正体が知られてはならない。


「言いたくなければそれでいい。だったら好きに名乗りな」

そう笑う懐の深いおばさん。親切にも服まで頂いた。

好意に甘えながら何一つ言えないのは本当に心苦しい。

「ワレは米…… 米の神であるぞ」

「ああ神話に出て来る…… 何とか姫だね」

「はい。それで米を届けねばなりません。どちらに向かえば? 」

「都会に届けるってんだったら仲町ってとこに行ってみな」

「仲町ですね? ありがとうございます」

ついに目的地が見つかった。さあ仲町まで!


果たしてこのまま闇雲に聞き回っていていいのか?

とにかく東進するしかなさそう。 

仲町の札を掲げて歩く。

するとすぐに引っ掛かるバカな男たち。


「おお姉ちゃん。仲町まで行きたいんだって? 連れて行ってやるよ」

息が臭く凶暴な面構えで笑顔も苦手。うん。この人なら信用できる。

「ありがとうございます」

礼儀正しく振る舞う。そうするとなぜか興奮気味に話しかけるドライバー。

「へへへ…… 遠慮することはない。俺もそっち方面だからよ」

大型トラックに乗り多くの車が行きかう道路へ。


「ここは? 」

「高速さ。見たことあるだろう? 」

「これは? 」

「自動で通るところ。本当に知らないの? どこから? 」

「神…… ごめんなさい。どこからかは言えないんです」

まさか女神様が舞い降りたとはとてもとても言えない。

大体言って信じてくれるなら苦労してません。

正体をひた隠しにしてここまでやって来た。今更言えない。


「何だ家出人か。神待ちね。なら話が早い」

そう言って薄気味悪い笑みを浮かべる。

どうも人選を間違えてしまった気もする。


「凄い! 」

あっと言う間に都会に。見たこともないような大きな建物が立ち並ぶ。

まさか人間は神に挑戦しようとしているのでしょうか?

バベルの塔など何と愚かしい人間たち?


「よーし仕事も済ましたし。さあお待ちかねのところに行こうか」

男から笑みが零れる。嬉しいとは少し違うかな。

女神様ですから本来なら相手の心を読むぐらい簡単。

しかしそれも現世に降り立った時に失われてしまった。


「どうしたんです? 」

「いや何…… さあ入ろうか」

男が示したところはカラフルでお洒落な建物。

目の前を男女が出たり入ったりと忙しない。


「さあここが仲町だ」

「いえ…… 聞いた話では地名のはずですが」

「そんなつれないこと言わずに我が女神様。どうぞお越しください! 」

男はそう言って再び笑い嫌らしい目つきで見る。


なぜこの男は女神様の正体を知っている? 一切名乗ってはいないのですよ。

まさか脅迫するつもりでは? ですが私に親切にしてくれたいい人のはず。

きっと何かの勘違い。女神様の目に狂いはない。


「へへへ…… 焦らすんだから。ほら女神様お手間を取らせずに」

「はい」

こうまで情熱的な誘いは珍しいのではないのでしょうか?

せっかくですから従うとしましょうか。

「へへへ…… そう来なくっちゃ! さあ行きましょう行きましょう」

強引に引っ張っていく。あれ? どうしたのだろう?

紳士顔が消えもはや我を失っている。涎を垂らし喚きだした。

これは失敗したのでしょうか?

しかしもう男にがっちり掴まれて逃げるに逃げられない。

まあ危険が生じても最悪逃げる方法ならいくらでもあるにはありますが。


「ホラ行くぞ! 」

「はいはい」

こうして女神様は得体の知れない男とカラフルで派手な建物へ。


「早くしろ! もう待ち切れない! 」

まずい。興奮している。これはどうすれば?

「あの本当にここが仲町? 」

しつこく確認する。

「そうだ。ここが仲町だ。早くしろ! 」

どんどん引きづられていく。

時間が…… 時間がない。もうこの際この男の言う通りにしましょうか?

男のこの自信はどこから?


「おいそこ何をやってるか! 」

「いえ…… 女と揉めて。問題ありませんぜ」

男が逃走しようとする。

「怪しい奴め。身分証を見せろ! この子はお前とどんな関係だ? 」

「お巡りさん。それはないですよ。彼女に格好悪いところは見せられない」

オマワリサン? どこかで聞いたような。


「早く身分証を! 」

「ほらよ! 」

きゃああ!

女神様を突き飛ばして逃げる最低男。

「大丈夫ですか。こら待て! 逃げるな不審者め! 」

「冗談じゃねえ! 俺が何をしたって言うんだ? 」

男を追って走って行ったオマワリサンが戻って来る。


「ああ君。家出かい? 署の方で詳しい話を聞くから」

こうして警察によって保護される。

まさか女神様が家出少女と間違えられて保護? あり得ません。

ですが助かったのも事実。

近くの交番で事情聴取を受けることに。


                    続く

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