最終回後編 悲しみのザンチペンスタン
間もなくタイムリミットの十二時。
カンペ―キ洞窟が真っ赤な炎に包まれ炎上。
五分を残し二人の体を焼き尽くす。
こうして勇者ノアとアーノ姫の物語はフィナーレを迎える。
炎に包まれた二人がどうなったか今のところ明かされてない。
ただこれにより異世界・ザンチペンスタンは消滅の危機から免れた。
カンペ―キ洞窟はそれから三日三晩燃え続けた。
その後悲しみの涙が一帯に降り注ぎ鎮火。
こうしてすべてが終わったかのように思えた……
その後のザンチペンスタン。
勇者・姫・魔王様の三体を駆使してザンチペンスタンを消滅の危機から救った。
そして勇者と姫の体を葬り去った魔王様が生き残る。
今まで不完全だったものが一つになったことで世界が安定する。
消し去った二体はそれぞれ戻され転生前の勇者ノアとアーノ姫に戻っていた。
「さあ行くぞ! 」
「おう! 」
魔王様はついに世界征服へと動き出す。
手始めに魔王城を再建し邪魔者の国王をアーノ姫を人質に討つ。
こうして広大な地域を支配する国王を滅ぼす。
強大で一番の戦力を叩いたことで続々と周りの国々を吸収。
次第に国と言える国が姿を消し残された者はバラバラに散らばってしまった。
「ははは! 人間どもこの魔王様に跪くのだ! 」
魔王様の弱点である魔剣も復活した魔王城の地下に封印。
そう簡単には外からは突破できない。逆に言えば内部からは可能。
魔王軍の厳重な管理によって再び奪われることはなかった。
「お助け! 魔王様! 」
命乞いをする情けない民を取り込みついにはこの世界の大いなる支配者となった。
「ははは! あははは! 」
こうして歯止めが利かなくなった魔王様は世界そのものを滅ぼそうとする。
「待て! 」
その時一筋の光が見えた。
「お前はまさか…… 」
「俺は勇者・ノアだ。お前を倒しにやって来た。大人しくしろ! 」
この世界を守ろうと立ち上がった救世主がいた。
その名も勇者・ノア。
「ふふふ…… 待っていたぞ。では最終決戦と行こうではないか」
魔王様対勇者・ノア。最期の戦いが始まる。
「おいどうした? 格段に腕を上げたな? 魔王様は嬉しいぞ」
「黙れ! 舐めやがって。これでフィニッシュだ! 」
プラチナソードを構える。
「これはな。イノシシさえ切り刻める代物さ」
「ほう凄そうだな。まあいい。掛かって来るがよい」
互角以上に渡り合うノア。しかし無敵の魔王様にいくらやったところで無意味。
無駄の極みでしかない。
「お前強いな。続ければもっと腕前は上がるだろう」
「うるさい! もっとまじめに戦え! それとももう諦めたか? 」
ノアは興奮してなぜ効果がないのかに考えが及ばないよう。
「お前は強い。いや強かった」
魔王様は嬉しそう。
「褒めるの勝手だが負けても言い訳するなよ? 」
「そんなみっともない真似するか。それよりもいいことを教えてやろう。
聞きたいか? 聞きたいだろ? 」
ふざけて相手の感情を逆なでする。それが魔王様のスタイルだろうがやり過ぎだ。
「知るか! とどめだ! 」
何度もプラチナソードで心臓を貫く。痛がって喚くもすぐに傷が塞がってしまう。
「なぜだ? なぜなんだ? 」
「ふふふ…… この魔王様に従っていればいいものを」
「なぜだ! 」
「最後に教えてやろう。この魔王様は不死身なのだ。
そもそも勝てるはずない。もし勝てるとすれば魔剣しかない」
「そんな…… 」
「よしではこの手で直々に葬ってやろう」
こうして勇者・ノアはあっけない最期を遂げる。
ノアが葬られ戦士がいなくなると世界は混沌。
魔王様による支配が始まった。
だがそれも一年が限界。
魔王様は当初の目的通り世界を混沌と地獄に塗り替えた。
辺りは火に包まれ人々は洪水に吞み込まれる。
消滅予定都市・ザンチペンスタンはあっけない最期を迎えた。
仮に消滅を免れてもその火種をそのままにしていれば時間が経てば当然こうなる。
これはもはやただの地獄でしかない。
回避すべき最悪の結末。誰が予期できただろうか?
ついに最後の生き残り幽閉されていたアーノ姫に魔王様の魔の手が迫る。
魔王城。
幽閉されていたアーノ姫の元へ。
「もう誰もいない…… あなたはなぜこのようなことを? 」
悲しみと怒りのアーノ姫。
「破壊を楽しむ魔王様だぞ? 当然ではないか。それよりも寛がれて何より」
「まさかこの私まで? 」
「残念だな。最期の一人まで根絶やしにしないと気が済まんのだ」
「では説得は無駄だと? 」
「そうだ。我慢してくれアーノ姫」
「ではあなたも道連れに! 」
隠し持っていた剣を手に魔王を討つ。
「これはまさか…… 」
「そうあなたが恐れていた聖剣。魔剣です」
ついに魔王様は討たれる。
アーノ姫によって魔王様は倒され消滅。
こうして最後の一人としてアーノ姫のみが生き残る。
ギリギリで勝利。
モンスター対人間の戦いは人間の勝利で幕を閉じる。
最終的に魔王様の支配から逃れた人間たちだったがその犠牲は甚大なものだった。
残された者を中心に盛り立てるがすべてを破壊されもう打つ手がなし。
消滅は免れても実質的に世界は終わってしまった。
こうして異世界・ザンチペンスタンは崩壊。
後味の悪い結末となった。
本編 <完>
次回から女神様が活躍する特別編へ。




