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魔王様対カンペ―キ

裏切りのカンペ―キにより予測不能な事態に陥る。

せっかくの魔王様の天下が寸前のところで阻止されてしまう。

まさかカンペ―キが裏切るとは思いもしなかった。いやそんなこともないか。

どうやら些細なことから怒りを買い修復不可能なまでの溝が生まれたのだろう。

それが埋まることはこの僅かな期間では難しい。

残念だよカンペ―キ。もうお別れか。


「よしそこまでの決意があるなら正直に告白しよう。

この世界は残念ながら明日には消滅する。そうだな残り一時間と言ったところか。

それでも無駄なことをしようとするのか? お前もそこまで愚かではあるまい? 」

ついに真実を述べる。最後まで胸の内にしまっておこうと思ったが無理らしい。

まあどうせあと一時間ぐらいのこと。パニックにならなければそれでいい。


「ウソを吐くな魔王! この期に及んでまだそのような戯言を? 」

納得が行ってない。常識では測れない事態が起きているから無理もないか。

このことを告げたのはクマル以来だ。

クマルのことだからどうせ他の者に知られても誰も信じてもらえないと放置。

その結果大きな問題にもならずに今に至る。

カンペ―キは恐れている。もし真実ならまったくの無意味となってしまう。

反乱を起こし魔王様を倒しても明日消滅するならやる意味がまったくない。

逆に皆を危険に晒していることになる。


「ふふふ…… これが戯言ならどれだけいいか? 」

別にハッタリでも脅しでもない。だから自然体。見抜けるはずがない。

それどころかワクワクさえしている。

魔王様にとってこの世界の消滅や崩壊はこの上のない楽しみ。

できるなら自分の手で。もちろん魔王軍を使って徐々に。

それができなかったのは国王によって魔剣を奪われたから。

もはや弱点である魔剣を握られていては大人しくするしかなかった。

だからこの世界は平和に。それに慣れた魔王様たちがひっそりと暮らすことに。

それが何年か続いて今この世界に新たな危機が訪れる。

そこに魔王様に転生したボクとボグ―の存在が重なってこのような最期に。


「いい加減なことを言うな! 」

「ふふふ…… どうやら魔王様のありがたいお言葉を聞き入れはしないようだな。

ならばこの者どもに聞くがよい。きっと魔王様が正しいと示してくれるはずだ」

ノアとアーノ姫に振る。


「確かに概ねそんなところ。残念だけど消滅は間違いない。そうでしょう? 。

「ああ。我々三人はどうにか阻止しようと動き回ったがうまく行かずにこうなった」

諦めの二人。もう覚悟はできたらしい。


魔王様による支配と世界そのものの崩壊または消滅を比べた時まだマシなのが前者。

カンペ―キにしても成功すればまだ反乱の可能性は残される。

ただここで下手を打つとそれする無理になる。

究極の選択とは言え魔王様やモンスターと交渉すればまだ何とか生き残れる確率が。


「待ってくれ! 今お前たちを助けてやると言ってもか? 」

カンペ―キは交換条件を出す。まったく意味が分からない。往生際の悪い奴だ。

「もう無理なの…… 」

「そう言うことだ愚か者よ! 

お前も大人しくこの世界が崩壊するのを見届けるがいい」

「おいそこのお前? お前が魔王様の弱点を教えこの魔剣に導いた。

お前ならどうにかできるんじゃないのか? 」

ノアを唆す。だが覚悟を決めた以上動くことはない。

往生際の悪いカンペ―キ。ここは黙らせるとするか。


「ボグ―! ボグ―! ボグ―! 」

ボグ―三連発で戦意を喪失させる。しかし握った魔剣を放すことはなかった。

惜しい。どうやらまだ試練があるのだろう。


「待ってくれ! 本気なのか? 」

「当たり前だろうが! 」

「だったらこれを使ってくれ。それでこの私の胸を貫いてくれ。頼む! 」

そう言ってダンジョンでくすねただろうナイフを投げるノア。

どうやら奴も本気らしい。


「ちょっとノア! 」

「アーノ姫。こうすればあなたは助かる。さあ言うことを聞いてくれ」

ついに覚醒した恐らく主人公のノア。もはや恐怖に囚われることはない。

「おいどう言うことだ? 」

カンペ―キはもはや戦意を喪失している。


「早く拾って俺を貫いてすぐに魔剣で魔王を! そうすればこの世界は消滅しない」

「ほう。それを私に託すのか? 知らんぞ。この私とて本質は魔王と変わらない。

世界征服をするだろうな。それでも? 」

カンペ―キはどうしても確認がしたい。完璧が仇になっている。動けないのだ。

「いいから早くしろ! 」

「ダメよノア! 私! このアーノ姫を討つの! 」

二人が互いに庇い合う。と言うかいち早くやられようとする。

おかしな状況が生まれる。さすがに傍観してる訳にも行かない。


「どっちなんだ? 」

混乱するカンペ―キに迫る二人。

もはや訳が分からない。こちらでも状況が把握しにくい。

ただ皆真面目にはやってるのだろうな。


「待てカンペ―キ! これが何か知ってるだろう? 」

クマルについでにもってきてもらった壺。

ちょうど引っ越しだから不自然でもない。

「まさかこれは…… 」

「ふふふ…… お前ほどの者ならこれが何なのか当然知ってるな?

お前はこの魔王様に忠誠を誓ったんだよ。そしてこの心臓を捧げた。

覚えてるだろう? 人間では即死でもモンスターなら比較的簡単に取り出せる。

壺で管理すれば問題ない。


さあどうする? 地獄の苦しみを味わうか?

この魔王様もバカじゃない。反乱の兆候を読み取っていたわ。

だがな。敢えておくびにも出さない。それが魔王様だ。

どうする? もう一度忠誠を誓うか? それとも地獄の苦しみを味わうか? 」


魔王様対カンペ―キ決着の時。


                   続く

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