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謀反 裏切りのカンペ―キ

最期の晩餐を終え意思確認へ。

「これが最後だ。本当によいのだな? 」

頷く。二人とも意志は固いらしい。当然どうにもならないことではあるが。

これも魔王様からの慈悲だと思って欲しい。


「では続いて…… 」

突然の影。本来命令しなければ立ち入れないはずなのに奇妙だ。

「どうした? 呼びはせんぞ。早く持ち場に戻らんか! 」

どうも最近緩んでいるんだよな。

甘やかすから図に乗って立場も弁えずに勝手ばかり。


「早く姿を現せ! そこにいるのは分かっているのだぞ! 」

命令し誰も近づかせないようにしていた。ここは選ばれし者が集う場。

たとえ誰であろうと勝手なことはさせない。

「おい聞いておるのか? 」


うん…… 勘違いか。どうやら錯覚だったらしい。しかし何だかおかしいな。

それに嫌な胸騒ぎがする。これは悪いことが起きる前触れ。

待て待て。単純に魔王様の天下に近づいているので緊張してるだけだろう。

ははは…… 魔王様らしからぬ振る舞いであった。


コツコツ

コツコツ

ついに痺れを切らしたモンスターが姿を見せる。

どうやら勘違いではなかったらしい。当然か。まだ魔王様の勘は鈍ってない。

「お前は…… 」

「魔王覚悟! 」

「カンペ―キ? お前はカンペ―キではないか? 何の冗談だ? 」

姿を見せたのはカンペ―キ。あの優秀で若手のホープとまで言われた男。

完璧主義でなぜかクマルのライバルとされている。本人も嫌がっていた。

この魔王様の後継者とまで言われるカンペ―キがなぜこのような大それたことを?

まったく信じられない。


「魔王! もうお前には従えない! 」

カンペ―キは礼を欠きこの魔王様を打ち倒そうとする。

一人とはいい度胸だ。しかしこの魔王様は無敵なのだぞ?

それくらい聡明で頭の回転の速いカンペ―キなら当然心得てるはずなのに歯向かう。


「魔王! 抵抗せずにこの鉄槌を喰らうがいい! 」

そんな風に舐めた口を利くのにはそれなりの勝算があるからだろう。

しかもあのカンペ―キだ。そうすると……


カンペ―キの手には剣が握られている。これはまさか……

魔剣? 魔剣だと言うのか? なぜ奴が魔剣を持っているのだ?

あり得ない。そんなことあり得ない。そもそもノアが所持してたのではないのか?

無敵の魔王様の唯一の弱点。魔剣を手に迫るカンペ―キ。


そんな嘘だろ? 信じられない。

待ってくれ! そんなバカな…… 魔王様は無敵なんだぞ?

その上今はこの魔王様のターン。

本来無敵で完璧な魔王様がなぜこんな目に?


冗談ではない。もう少しだと言うのに。

悲願達成の前にこんな落とし穴があるとは思いもしなかった。

これでは悔やんでも悔やみきれない。

せっかくのチャンスを台無しにしてしまう。

まさか魔王様でも失敗に終わると言うのか?

誰もが予想も願いもしてない消滅エンドになってしまうのか?


「おい待て! なぜ謀反など? お前は優秀なカンペ―キだろう?

こんな間抜けなことするのはクマルぐらいで。しかもわざとやるはずもない。

なあカンペ―キよ。この魔王様を倒す前に理由を聞かせてくれないか? 」

あまりにもカンペ―キらしくない。全然納得が行かない。

「ははは…… まさか魔王様ともあろう者が命乞いですか? 」

「頼むよカンペ―キ。理由があるんだろ? お願いだ! 」

ここまで下手に出る必要はまったくないが余興の一つと考えればいい。

最後の晩餐に相応しいデザートとでも言えばいいか?

どうせこれが終われば最後の仕上げに掛かるのだから。楽しまなくてどうする?


「どうだカンペ―キ? 正々堂々と戦い倒して皆から認められたいだろう? 」

「それは確かに…… 」

カンペ―キはまだ迷っている。それだけ突発的なこと。

そうでなければこの魔王様が狙われるはずがない。

少なくても原因は今日に。今日の言動にあるはず。

どうやら気づかずに追い詰めたようだ。

たとえどんなに恨みが募っていたとしてもそれはそれ。

それ以上高まることもなくこんな謀反を起こされることはない。


「どうしたカンペ―キ? お前もやはり歴代の卑怯者の一人なのか?

情けないぞ。お前はそんな奴ではないだろう? 」

理由も聞きつつ改心してもらう算段。奴の性格を把握してるからこそできること。

「ふふふ…… いいだろう教えてやる。お前は今日叱りつけただろう?

そして罵りプライドを傷つけた。あのコウモリは人間を近づけないためのもの。

前にもそう言ったはずだ。必要なことだったんだ。

それなのにそれなのにお前はこともあろうにその処分をクマルにさせようとした。

だがお前は止められ仕方なく矛を降ろした。この私の屈辱を思い知れ! 」

そう言って魔剣を手に襲い掛かろうとする。


「まあ待て。その件についてはこちらも言い過ぎたと反省している。

だがなカンペ―キ。それくらいで謀反を起こすようでは到底トップには立てない。

いつもの冷静なお前はどうした? この魔王様を倒しトップに立ちたいんだろう?

なぜ堂々と勝負を挑まない? つまらないことで我を失ってどうする?

結局はお前も支配欲と征服欲に憑りつかれた愚か者と言うことになる。

そうだろうカンペ―キ? 魔王様は悲しいぞ」

「ふふふ…… 命乞いの次は説得と先輩としてのアドバイスですか?

もちろん心に留めておきますよ魔王様。

あなたが消えてからいかすつもりなのでご心配なく」

冷静なカンペ―キは魔王様の偉大さに屈服するかと思いきや暴走を始める。


どうやら埋めることのできない決定的な溝ができたのだろう。

この僅かな間で修復しようとしても不可能か。

残念だよカンペ―キ。もうお別れらしいな。


                  続く

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