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最後の挨拶 クマルとの別れ

カンペ―キ洞窟。最深部。

現在時刻は七時過ぎ。


最期の晩餐。

十三日目と言うこともありこれが正真正銘最期の晩餐となる。

「クソ! 魔剣さえあれば魔王などあっという間に倒せるのに…… 」

ノアが悔しそうにつぶやく。あまりこちらを刺激しないようにと必死。

「ふふふ…… バカな奴だ。そんなものを持ち込めるはずがないだろう。

だからこの洞窟を住処に選んだのだ。最終決戦にも丁度いいと。


「魔王様…… 見回りに行って参ります。ではごゆっくり」

カンペ―キが問題ないことを確認し見回りに戻る。

まあいいか。ただの紹介に呼んだだけだからな。

「ああカンペ―キ。クマルを呼ぶように伝えてくれ」

「しかしクマルは魔王様の命令で現在離れていますが」

「おおそうだったな。だがせっかくだから頼んだぞ」

こうしてカンペ―キに伝言を頼み席に着く。


ブツブツ

ブツブツ

「どうしたんだ奴は? 目が据わってるぞ。今までの情けない姿とかけ離れてる」

「大丈夫。きっとノアは正気を取り戻す」

今更希望的観測を述べられてもな。

まあどっちでもよい。最期の時に冷静になれるほど人間はできていないだろう。


「ねえ魔剣はどこに? 一度手に取ってじっくり見せてもらいたいな」

アーノ姫は諦めていない。まだ粘るらしい。

「ははは…… 知らんな。知っていたとしても教えてやれんわ」

さすがに魔剣だけはいけない。無敵の魔王様にも弱点がある。

ノアでなくてもアーノ姫でも危険だ。この魔剣は持ち主を選ばない。

もし突き刺されでもしたらお終い。だが主役はあくまで魔王様。

そのような失態を演じることはない。もはやどうすることもできないはずだ。


「ケチなんだから。それでも魔王様? 」

「おいおい。どれほど譲歩したと思っているんだ? 」

「分かってます。もちろん魔王様には大変感謝してますよ」

「ああそれでいいんだ。それでいい。しかしもう七時を過ぎた。準備しておけよ」

なぜこの魔王様が気を使ってやらなければならないんだ?


それから一時間が経過。そろそろクマルがやって来る頃だろう。

奴もアーノ姫と少なからず縁がある。最期に会わせてやるのも優しさ。

「魔王様お呼びですか? 」

ついにクマルが登場。

「うむ。頼んでおいた例のものの準備はできてるな? 」

「へい手抜かりはありやせんぜ! 」

「よしでは最期の挨拶でもしろ。魔王様は席を外す。きちんと監視もするんだぞ」

そうして歩きに出る。ここはクマルにすべて任せよう。


「俺お前を忘れないからな」

「ありがとうクマル。あなたがいたから…… 」

そう言って二人は別れの挨拶を交わす。

うん…… いくら非情な魔王様でもアーノ姫にしろクマルにしろ放っておけない。

やはりクマルが気になる。陰ながら見守るとしよう。


ははは! どこまで甘やかすのだろう? これで二人が逃げ出しでもしたら……

いやそんなことはあり得ないか。彼らには希望はない。

自分たちが逃げ切ってももう間もなくこの世界は消滅する。

彼らは生き残る方法を自ら放棄した愚か者だ。

そして何とこの魔王様にすべてを託す。

まったく本当に情けない奴らだ。しかしこの魔王様はそんなに甘くない。

明日になれば甘さを捨てた完全な魔王様が完成するはず。

そうなれば恐らくどのような力も及ばない。完全な魔王様となる。


五分経過したところで姿を現す。

「私もクマルのこと忘れないからね」

「アーノ姫! どうぞご無事で! 」

まだ続けてるよこいつら? 

「おいそろそろいいかクマル? 」

「ははあ! ありがたき計らいに感謝致します」

意外にも真面目なクマル。恐らく本来の能力が発揮されようとしてるのだろう。

いつも失敗ばかりの落ち零れだったがどうやらアーノ姫と関わった事で覚醒した?

今更遅い気もするが使い勝手のいいクマルが成長してくれるのは嬉しい。


「よしでは下がるがいい」

「アーノ姫? 」

「クマル…… 」

クマルは往生際が悪い。アーノ姫もどうしていいのか分からないらしい。

このまましておくのも一興だが立場がある。

クマルはあくまで魔王軍。アーノ姫に現を抜かしてどうする?

アーノ姫には情けない勇者・ノアがいるのだ。クマル如きではどうにもならない。


「ほら何をしておる? すぐに下がらぬか! 例の準備を任せたからな」

「お任せください魔王様! 」

こうしてクマルとアーノ姫は別れを惜しみつつ自分の職務を全うする。

クマルが消え静まり返る。


ついに十時となった。

あと二時間もしないうちにノアとアーノ姫は処刑場に送られる。

即ちクマルが用意した例のブツで葬られることになる。

クマルはそのことに気づいてる様子はない。

残念だが彼には最後の大仕事が待っている。


「どうした静かだな? お前たちがいいと言うなら急ぐがどうする? 」

僅かな可能性に賭けてるようだが無駄だ。

仮に魔剣を手に入れてももう一人始末しないといけない。

「冗談は止して? まだ時間がある」

アーノ姫はまだだと言い張る。どう考えても無駄なのに何を考えてるんだろう?


「クソ! 魔剣さえあれば…… 」

ノアは未だにこの魔王様を倒そうと狙っている。

完全に廃人になった訳ではない。ある程度は警戒すべきだろうな。


「まあいい。お前たちの意思の確認をしたい」

「何を? 」

「本当にいいんだな? 」

「ふざけないで今更! 他に方法がないのを知っているくせに」

「ははは…… ただの最終確認だ。お前はどうだ? 」

「もう覚悟はできている」

意外にも勇者ノアがまともに戻っている。最期の時を迎えて覚醒したか?


最終確認を終え次の段階へ。


                 続く

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