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魔王軍の急襲

フィナーレを思い描きながら散歩。

さあどうしてやるかな。ふふふ…… 魔王様らしく派手にやるのがいいだろう。

それが二人の希望と勝手に思ってるがどうか?

完全に分離してから二人の気持ちを汲めずにいる。


「魔王様! 」

焦った様子で走ってきた。何かあったらしい。

「どうした騒々しい? 考えがまとまらないではないか! 」

もうほぼ完成されていたのに急に話しかけるものだから忘れてしまう。

これを最近では老化や眠り病の影響だと勘違いされる。

だが違う。魔王様はそこまで情けなくはない。ただ記憶が飛んだだけ。

言い訳もしづらい状況。強く当たることでごまかすしかない。


「申し訳ありません! しかし一大事でございます! 」

「ああん? 落盤でもあったか? 」

だがモンスターには大した影響ないはず。不死身でないが人間ほどやわでもない。

「いえ違います。奇襲です! 」

そう言って急いで戻るように懇願されてしまう。

指示を出せと言うことらしい。面倒だから適当にやって欲しい。

こっちは最後の仕上げで忙しいのだから。


「待て! 奇襲だと? 今奇襲と言ったな? 何がどうなっている? 」

想定外のことに説明を求める。

「国王軍の部隊が突撃してきました。今カンペ―キが応戦してますが…… 」

くそ! こんな時に…… ついに我慢しきれずに突っ込んで来たか?

あれほど自重するようにノアが頑張っていたのに。愚か者どもめ。

確かにこのまま放っておけばアーノ姫は消されるだろう。

しかしそれを望んだのは他でもないアーノ姫自身。意志を無駄にできない。

せっかく二人とも決心がついたと言うのに本当にこいつらは何を考えてるんだ?

まさか世界が消滅しないと分からないのか?


「しかしなぜここの隠れ家が分かった? 」

新たな隠れ家は人が近づかないようひっそり作られたはず。

だから気づかれる訳がない。まさかどこかで情報が漏れてるのか?

「恐れながら…… 魔王様の行進を見た者が知らせたのかと」

どうやら調子に乗り過ぎたらしい。

せっかく作った新たな隠れ家だがここは諦めるかな。

「よし応戦しろ! この魔王様直々に指揮を執る」

モンスターの恐ろしさを見せつけてやる。我が魔王軍は不死身だ。

こうして闇夜の決戦が始まる。


うぎゃああ!

お助け!

国王軍対魔王軍の戦いは激化。どうしても後手に回る。

「何をしている? なぜぶちのめさない? 」

「それが…… 敵の兵力が上回っておりまして」

国王軍は隣国の援助を受け兵士の数を倍近くまで増やし火力も半端ない。

これではいくらモンスターでも狙い撃ちされてはお終い。

元々個の力に頼っていたので数では国王軍の方が上。それが倍近く膨れ上がった。

それだけではない。急襲だから当然のことだが準備がまったくできてない状況。

洞窟内に分散させたためにいつまで経っても揃わない。

このままでは突破されるのも時間の問題。

せっかくの新たな隠れ家が一瞬のうちに灰と化すだろう。


「よいか。カンペ―キ部隊が堪えてる間に兵を結集しろ! 」

「ダメです。間もなくカンペ―キ部隊も突破されるかと。

敵をあまりにも舐め過ぎていた。油断したがためにこの屈辱。

この恨み晴らすものか。よしこうなればクマル兄弟を呼ぼう。


「おい! 至急クマル兄弟に緊急招集を掛けろ」

役立たずとは言え数ではクマル兄弟は有力なはず。

カンペ―キと二分する勢力。数の論理で乗り切る作戦。

今回の急襲にはもってこいの人材。

「いえクマル兄弟は本当に使えませんよ。戦う前に脅しとしてはいいでしょうが」

手下たちは誰一人として信頼もしてなければ期待もしてない。

「ではどうしろと言うんだ? 」

「それは私どもにも分かりかねます」

もう打つ手がないらしい。ここは大人しく降参するしかないのか?


ぎゃああ!

モンスターの叫びと砲弾の嵐。それが終わったら部隊が突っ込んでくる。

「突撃! 魔王を取っ捕まえろ! 」

勇ましい国王軍の兵士。恐れ知らずで突っ込む。

敵はこの魔王様を標的にしている。

ならば話が早い。この魔王様自ら参戦しようではないか。

「お待ちください! 何をなさるのですか? 」

手下どもに止められる。しかし狙いがこの魔王様なら相手してやるしかない。


「行くぞ! 無敵の魔王様を見せてやる! 」

「お待ちください! 行ってはなりません! 」

前戦で戦おうとするが当然止めらえる。彼らもそこまでバカじゃない。

「お待ちを! 魔王様! 」

「うるさい! これ以上壊されて堪るか! 」

もはや自棄だ。手下を振り払い前線へ。


「うん…… どうした様子がおかしぞ? 」

「魔王様…… なぜこのようなところに? 」

前線のモンスターが驚き慌てる。

「よし来るがいい! この魔王様が蹴散らせてやる」

だがちっとも反応がない。

砲撃もなし。兵士もなし。怖気づいたはずもあるまいしどうしたと言うんだ?


「カンペ―キ? 一体何が? 」

「魔王様…… どうやら敵側は本気ではないらしいのです」

うん? ここまでしておいてなぜ? 

「申し上げます! 国王軍の使者が到着しました」

喧噪の中に一人の男がやって来た。

「魔王様だ! どのような用件だ? 」

魔王様直々に話を聞くことに。

「国王様よりアーノ姫を無事に帰して頂きたいとのことです」

国王からの親書を読み上げる。

「うーむ。分かった。明日の朝までに準備すると伝えてくれ」

こうして国王軍との全面戦争は回避された。

カンペ―キを従えて再び安全な洞窟内へ戻る。


ふふふ…… 馬鹿め! 誰がアーノ姫を渡すものか。

今夜中に始末してしまう算段。もはや人質の役割は果たしてない。

すべては明日分かることだがな。


日が暮れ。最期の晩餐へと移る。


                  続く

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