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カンペ―キの失態

カンペ―キ洞窟。

ノアは最深部へ。アーノ姫もさきほど最深部の部屋へと招かれた。

残すはこの魔王様だけとなる。ただこちらにもやることがある。

それにタイムリミットまではまだ時間がある。焦らずじっくりと。


うん…… 何だか洞窟内が騒がしいような……

その瞬間コウモリの大群が襲ってきた。

「ぎゃああ! 」

羽音を立て一気に襲って来るコウモリ。縄張りに近づく者を集団で襲う。

数えれば恐らく百匹は優に超えるだろう。

そんなのが一気に襲って来るのだから不快。


「大丈夫ですか魔王様! 」

右腕で忠実なしもべが前に出るが狭すぎて動きが取れない。

元々洞窟は狭くて暗い。ジメジメしてもいる。それだけに滑りやすくもある。

結局避け切れずに滑るがどうにか肩を支えられて免れる。


「おいカンペ―キ! 二度とないようにと言っておいたよな? 」

「しかしコウモリのコントロールまでは…… 」

いつの間にか追い詰められるカンペ―キ。

確かにコウモリは野生でありどう教育することもできない。

それは分かってるがそれでも巣を駆除しておかなかったことに問題がある。

大したことではないと思って放っておけば最悪の事態を引き起こす。

たださすがにカンペ―キにすべてを負わせるのは間違っている。


「ここに責任者を呼んで来い! 」

怒りは相当なもの。当然ただ注意するだけでは収まるはずがない。

魔王軍の一員としての自覚があまりにも足りてない。

ここは分からせるためにも厳しくする。


許す訳には行かない。仮に許して見逃せば他の者に示しがつかない。

甘やかさずに厳しくする。それには拷問も辞さない。

「お待ちください! すべて私の責任でございます」

カンペ―キは言い訳をすることもなく処分を受けると譲らない。

上に立つ者はそれくらいでないといけない。見せ所だ。

立派だが果たして耐えられるかな?


「ほう…… 立派な心掛けだな。しかし魔王様がそれを許すと思うのか?

そんな甘い魔王様ではないわ」

めでたい日に水を差される。こんなことあってはならない。


「よしならばクマルよ。こ奴を痛めつけるがよい! 」

カンペ―キへの処分はクマルからのお仕置きがちょうどよい。

果たして受け入れるか? 完全に下に見ていたライバル。

その屈辱を受け入れればいかにカンペ―キでも心穏やかではないはず。

「へい! 魔王様の仰せのままに! 」

クマルは性格が変わったかのように笑いだす。最低だ。しかしそれでこそクマル。

ライバルを蹴落とすのに手段を選ばない。それほど非情。

余裕の笑み。と言うよりもカンペ―キに勝ったことが嬉しいのだろう。単純な奴。


ライバル視してるのはクマルだけ。カンペ―キは期待の若手。

周りからの期待と信頼は比べものにならないほど。

「魔王様それだけはおやめください! どうかお許しを! 」

手下たちはカンペ―キの健闘ぶりを称える。

「そうですよ。魔王様のために急ピッチで進めた結果ではありませんか」

忠誠なしもべたちが止めに入る。


「うるさい! 魔王命令に従えないというのか? 」

怒り狂う魔王様に対して恐れ戦く手下たち。

情けない話だが怒り狂った魔王様を止める手段はない。

「何卒撤回を! これでは手下どもが萎縮してしまいます」


右腕で忠誠なるしもべがどうにか抑えようとする。

要はカンペ―キに味方しているんだろうな。それではクマルが可哀想ではないか。

「まさかお前たちまで魔王様に逆らうのか? 」

「いえ滅相もございません。しかしご理解ください」

こう言われては魔王様だってどうすることもできない。

「分かった。今度だけは見逃してやろう。特別だからな」

めでたい日に何もそこまですることもないか。

「よしでは引き続き案内を頼むぞカンペ―キ」

「ははあ! 」

こうしてどうにか危機は回避されたがその火種はくすぶったまま。


「お前たちの意見がなければカンペ―キもただでは済まなかった。

だがもしこれがクマルでも同じようにしたか? 」

念のために聞いてみる。それですぐに頷くならこの判断は間違ってなかった事に。

「いえクマルならばすぐにでも賛成したかと…… 」

右腕は何と態度を翻した。それに同調する手下。

「そうですよね。クマルなら。なあ皆? 」

「そうですよ魔王様。疫病神のクマルなら当然処分すべきかと」

カンペ―キとはまるで違う反応。

魔王様のお気に入りで贔屓されていると思われてるのだろう。


「ふざけるなお前ら! いい加減にしろ! このクマル様を何だと思ってやがる」

大人しく見守ってたクマルが反論する。当然だよな。自分が侮辱されたのだから。

それだけカンペ―キが尊敬され評価されている証でもある。

逆にクマルは立場が弱い。嫌われてさえいる。

まあクマルの気持ちも分かるがどうすることもできないさ。


「よし続け! 洞窟内を散策するぞ! 」

カンペ―キの案内で一時間以上見て回った。

これ以上は進めないところまで来て満足し引き返す。


さあそろそろゲストも退屈してるところだろう。

そろそろ始めるとするかな。

魔王様によるファイヤーナイトの開始だ。


もう誰も止めることはできない最後の夜。

ついに運命の時迫る。


                    続く

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