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十三日目

最終章。


十三日目。最終日。

笑っても泣いても今日で異世界・ザンチペンスタンが消滅するかが決する。

まさかまさかの延長三日目。

果たして絶望の世界に活路を見いだせるのか?

唯一の希望はクマル?


始まりの地。

「どうして? あれだけ忠告したのになぜいばらの道を選ぶのよ! 」

現在女神様お出かけ中。もしもの時のために現世に旅立った。

だから女神様がお戻りになるまで留守を任されている。


そんな始まりの地にお客様が一人。

「あらあらお姉様。随分余裕がないんですね? 」

「その呼び方は止しなさい! どう見てもあなたの方が老けて見えるんだから」

つい強く当たってしまう。ほぼ八つ当たり。

想像の上を行く彼らを見ているとイライラが募る。

それを彼女にぶつけても今更どうしようもない。でも彼女ならどうにかできた。

近くにいたのだからどうにでもなったはず。


「イライラしてる原因はどうせ彼のことでしょう? 」

お助けキャラの魔女は始まりの地へ戻っていた。

「そう! どうしてあいつはいつも最悪の選択をするのよ?

おかげでザンチペンスタンが消滅する。もうどうしたらいいの? 」

あいつとは女神様によって現世から転生した主人公。

三体に別れたもののその性格を引き継いでるのが勇者・ノアだ。


どうしたらいい? もう嫌!

余裕がなくつい飛び立とうとする。

しかしここは始まりの地。飛ぶことは許されない。

それは危険だからでもあるがここにいる以上は動き回る必要がない。


「お姉様も大変ですね」

「そうなの。あいつはここに来た時から問題児だった。

言いつけを守らずに寝てしまうし。勝手な行動ばかり。

迷惑が掛かるのは周りなのに。それが分からないらしい。本当に困ってしまう」

つい愚痴を零したくなる。

三体の元である彼がしっかりしていればこんな事態にはならなかった。

今更ながらに後悔している。女神様が甘やかすから……

私にも多少の責任はあり痛感しているところ。


「ザンチペンスタンが消滅してしまうと? しかし我らが魔王様が残ってますよ」

魔女はわざと癇に障ることを言う。

悪気はないのでしょうが軽口を叩くのは許されない。

「ふざけないで! あなただって本気ではないくせに! 無責任なんだから」

「しかしまだ僅かながら可能性があります」

「ウソでしょう? 冗談はやめて! どうやったらそんな奇跡が起こるの? 」

諦めモード。逆に魔女は楽観モード。これが意味するものとは?

 

「その僅かな可能性だって魔王によって脆くも崩れ去るに決まってる」

「果たしてそうでしょうかお姉様? 」

「気休めはもういい! 魔王がどんな存在かあなただってご存じでしょう?

過去にやり合った仲なんだから」

「ははは…… 昔のことはもう忘れました」

「はいはい。どうでもいいわ。そして可能性がありました。確かにそうです。

でもその僅かな可能性だって魔女であるあなたがいなければほぼ不可能。

これはあらかじめ決まってる未来ではないのでゼロに近い確率で免れることもある。

ですが今回のターンは魔王。主役はあくまで魔王。

アーノ姫とノアはおまけに過ぎないんですよ」

絶望の未来しか見えない。それは当然の帰結によるもの。


「それが一人…… いえ一匹だけ奇跡を起こす者が存在するのです」

魔女の気休めで場が盛り上がろうとも絶望と消滅の未来は変わらない。

「いるはずない! 」

「一人いますよ。お助けキャラである彼なら可能かもしれない」

「まさかそれは…… 」

「そうですお姉様。クマルがいるではありませんか。魔王の弱点であるクマル。

これまでにもいくつもの失敗を繰り返してきたクマル。

処分することは難しくなかったはず。それでも手元に置いた。

だから完璧でない魔王にはクマルは脅威でしかない。


どんなことがあっても主役は魔王。アーノ姫もノアも脇に追いやられる。

魔王軍の一員であるクマルこそが唯一残された望み。

魔王にも見えないところで弱点がある。


クマルですか…… あれはそのような存在ではない。

ただのお荷物で足手まとい。


運命の最終日。魔王様のターン。

「ははは! 愉快だ愉快だ! そうは思わないか? 」

「そうですね。これで悲願達成と言う訳ですな」

すべてがうまく行き理想の地獄の世界ができあがる。

「よし出発するぞ! 遅れるな! 」

第一の隠れ家から第二の隠れ家へ。


もはや戦う意味も逃げ隠れる意味もない。

「はい。ではお供はどうしましょうか? 」

右腕で忠実なしもべ。この魔王様に代わって指示をしよく尽くしてくれた。

その思いが届いたから今回の奇跡も起きたんだろう。

当然勇者や姫の意志の弱さがすべてではあるが。

なぜたかが一匹ぐらい始末できない? そんな覚悟もなしにこの世界で生き残れるか。

「適当に連れて行こう」

「お待ちください。せっかくの門出。もう少し真剣に」

まさかこの魔王様が責められるとはな?

だが今は気分がいい。ちょっとのことではびくともしないさ。


「よしならば全員連れて行こう」

細かいことはせずに大胆に豪快に。魔王様らしくだ。

「それはちょっと…… 」

「まったくどっちなんだ? はっきりしろ! 」

この際どっちでもよいのだが。

「あーもう分かった! 任せる。お前の好きにするがよい」

「ははあ! それでは出発いたしましょうか」


動き出した魔王軍。

カンペ―キがこの日のために作り上げた洞窟へ。


                 続く

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