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消滅までのカウントダウン

十二日目。アーノ姫のターン。

現在カンペ―キ洞窟の最深部にて最期の時を迎えようとしている。

タイムリミットまで残り僅か。間もなく十二時の鐘が鳴る。

そうなればこの世界はもはや地獄と化すでしょう。

ですが打つ手がない。

魔剣で魔王を倒せても肝心のノアを葬らなければ意味がない。


ついに涙が溢れる。今までどうにか堪えていたがもう限界。

緊張とプレッシャーで我慢しきれずに泣き崩れてしまう。

「ダメ…… 私にはできない」

「ほら面倒臭いね! これ以上喚くならぶっ叩くよ! 」

魔女も必死。でもこっちだって辛いし苦しい。それくらい分かって欲しい。

「いいかい? 泣こうが喚こうがこのままだとこの世界は終わっちまうんだよ。

ノアがどうした? 格好いい男ならいくらでもいるだろ? それこそ王子だって」

説得されてもどうしようもないこともある。

あれほど一緒にいたのに私の気持ちを一ミリも理解していない。

だってノアですよ…… ノアをこの手に掛ける罪をお許しください。どうか……


「もう十五分を切ったよ。あんたがしないってならそれも運命かもしれないね」

「そんな突き放す言い方しないで! 」

「我がままを言うんじゃないよ! 私はお助けキャラの魔女だからね。

仮にこの世界がどうなろうと構わない。消滅しても別の世界で暮らせばいいのさ。

でもお前は違う。お前たちは違うだろう?

奴を倒したからってそれは消滅を免れるだけで元に戻るかもしれないだろう?

そうすればすべて解決。だからもう迷わずに倒すんだ。

最愛の者だろうと関係ない。それが運命。運命からは誰も逃れられない」

大げさに格好をつける魔女。でもそんなことぐらいもちろん承知してます。


分かってるんです。この追い込まれた状態ではどうすることもできない。

それこそずっと魔女の庇護の元のんびり生活してきた。

もちろん覚悟はできてますがどうしても体が動かない。

嫌で嫌でどうしようもない。もう心が張り裂けそう。


「いいかいもう一度言うよ? お前にしかできない。今はお前しかできないんだ。

アーノ姫のターン。アーノ姫が主役だからね。

ハーン。その目は分かるよ。いつだって主役だって言いたいんだろう?

あんたは姫様だからね。幼い頃からそれはそれは大事に育てられただろうさ。

それこそあの国王から目に入れても痛くないほどかわいがられてね。

魔王から狙われて異国の王子から求婚を受け逆に迷ってしまうぐらい。

ルックスだってそれは申し分ない訳だ。上品で国民からも人気が高い。

うん。そうだろうそうだろう。あんたは主役さ。

でもそれは元のアーノ姫であって転生してきたあんたじゃない」

「そんなの分かってる…… ただ決断できないだけ」

言い訳だと充分理解してる上でそれでも……

「はい。もう好きにしな。これ以上話しても時間の無駄。

私は信じてるよ。あんたがこの世界を救うんだって」

大魔法を使ってカウントダウン開始する。


現在残り三百秒。

ナンバーが減っていきゼロになったら明日。

アーノ姫のターンが終わる。そして地獄の魔王様のターンへと。

これを大魔法を使って変えるのは不可能。

だからもう本当にこれが最後。

そう言って最期の時を見守ることもなく行ってしまった。

今魔女を追いかけてる時ではない。

急いで使命を果たさなければ。私にしかできないことを為さなければならない。


どんどんカウントは進んでいく。

進めば進むほど手がつかない。分かりやすく見せてくれたが逆効果だった気が。

「ねえ! いるんでしょう? 返事をして! 」

ダメだ。やっぱり私を見捨てて行ってしまった。

ここまで見放されるなんて…… 私どうしたらいいの?


とりあえずノアを倒すしかない。すべては私に掛かってる。

魔王の策略でノアは眠らされている。魔王の捨て身攻撃が功を奏した。

武器になるもの…… ですがここには鈍器は当然のことながら剣さえない。

残り五分を切りノアにはできるだけ痛くて辛い思いをさせたくない。

ここが洞窟でなければいくらでも凶器を手に入れられただろう。

カンペ―キの手下から武器を奪うのは至難の業。

彼らはそもそも洞窟の手前の方にいる。

今から行っても魔女同様タイムアップは目に見えてる。

さあ困った。一体どうやって眠る無防備なノアを始末すればいい?


残り九十秒。もう百を切ってしまった。

祈りながら前を向く。

凶器…… どうすればいいの?

剣もなければ重そうなものも見当たらない。


八十秒。

早い。早すぎる。なぜこんなにも時が過ぎて行くのでしょう?

この世界に来てアーノ姫になって退屈な毎日をどう楽しく過ごすかを考えていた。

もう時間がどんどんなくなっていく。

もう諦めるしかない?


その時だった。運命に導かれるようにノアが立ち上がった。

どうやら最後の最後を立ち会うつもりらしい。

律儀と言うよりは間抜けな展開。

大人しく寝ていれば苦しい思いをせずに済むのに。

残念です。実に残念。


「姫? アーノ姫? 」

もう時間がない。本当にない。

さあどうする? どうすればいい?

「何やってるんだアーノ姫! 相手は俺じゃない。早く! 決心が揺らぐ前に!」

ノアのアドバイスを受けて復活する。


「ふふふ…… 大人しくしていればいいものを愚かな者どもだ」

魔王様まで復活してしまった。

「ほら早くしろ! 次のターンになっちまうぞ。ははは…… 」

余裕の大笑いで挑発する魔王。これも作戦の内でしょうがどうしても気になる。

「うるさいわね! やればいいんでしょう? やれば…… 」

ただでさえ時間がないと言うのに魔王の相手までしてられない。

大人しく魔剣で切られなさいよ。

大体魔剣って普通魔王の剣でしょう? どうして魔王を封じる剣な訳?

「この剣で仕留めてあげるから黙りなさい! 」

つい無駄口を叩いてしまう。頭にくる挑発にこれ以上乗ってはダメ。

冷静に冷静に。ふう…… 深呼吸。


カウントは百を切った。もう三分もない。

迫る消滅の時。


                 続く

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