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最後の望み

カンペ―キ洞窟にはノアとアーノ姫に魔王様が集結。

そして何を血迷ったのか最後の晩餐を始めてしまう。

そこでは豪勢なお食事と高級ワインが振る舞われた。

特にクマルスペシャルの破壊力は半端なく魔王に代わりクマルを叱責したいほど。


ささやかな晩餐会を終えるとついに魔王が牙を剥く。

何と飲み物に強力な眠り薬を混ぜていたのだ。

卑劣な魔王の使いそうな手。それを読めなかった我々の負け。

しかも魔王は捨て身覚悟で飲ませようとした。

どの道食事にも大量の眠り薬が混入されていたらしいので回避はほぼ不可能。

ノアがおかしくなって初めて気づけるが遅効性なのでそれも無理。

初めから気をつけているしかない。

しかし招待を受けて一口も口を吐けないのはあり得ない。


コツコツ

コツコツ

杖の音が響き渡る。静寂を切り裂く杖と息遣いと足音。

最後のシークレットゲストが登場。

しかし決して招かれたのではない。

アーノ姫を守るためにやって来た。

ついに魔女登場。


ハアハア

ハアハア

「姫! 早く目覚めて! もう時間が! ああ苦しい」

息を切らしやって来たのは魔女だった。

この異世界・ザンチペンスタンでは異質な存在。

妖精が遣わした魔女と言う存在。


あらあら呑気に寝てるよ。このまま大人しく見守ろうかねえ……

おっとこうしてられなかった。起こさないとね。

でもアーノ姫は決して寝起きがよくありません。

寝ぼけて何を言ってるか分からない時がある。


「ホラ起きな! あんたしかこの世界を救えないんだよ」

「へへへ…… 何で? 」

「ほらこれを飲みな! 」

「きゃああ! 苦い! いやあ! 」

良薬は口に苦しと言いますがここまでまずいものを飲まされたら堪らない。

まずくて目が冴えるに決まってます。

「よし起きたね? さあ早く止めを刺しな」

こうして魔女の助けを得て復活を果たすアーノ姫。


「いいかいもう一度確認しておくよ。十二時の鐘が鳴ったらもうお終いだからね。

元の平和な世界に戻るにはあんたがその手で二人を倒すしかないんだよ。

怪我させても意味がない。止めを刺すんだよ。迷ってはいけない。

迷って痛い思いをさせることになる」

そう言いますけどまだ時間はたっぷりある。

二人を処分するのに五分もいらない。

二人はここにいて眠ってる。寝てる者に剣を突きさすのは残酷ですがこれも定め。


「ちょっと待ってよ! 何でノアまで? 」

確か魔女の大魔法を使えば二人はどうにか生き残れたはず。

「ごめんよ。そっちの方が確実なんだよ。いいかいよく聞きな。

確かにこの大魔法を解放すればノアを消せる。

でももし仮に大魔法の威力が弱ったらどうする? 

毎日ノアにバーニッシュエターナルをかけ続けることに。

それが無理だと二十四時間で消滅してしまう。

ノアを見えないよう欺いてもそれは一時的なもの。

威力が弱まれば再び消滅の危機に陥る。

だからこのまま二人を処分した方が楽なんだよ。消滅の危機から解放されるのさ」

毎日バーニッシュエターナルをかけ続ける方が現実離れしてる。


「それでも新たな解決策を見つけるまでどうにか…… 」

他の手を考えるも何一つ思い浮かばない。

「何を言うんだい! あんた姫だろう? だったら選ぶしかないよ」

「危険過ぎるからお勧めしないと? 」

「残念ですがそうなります。今朝は迷いがまだあったよ。でもここに二人いる。

このチャンスを逃すことはない。どうぞアーノ姫。ご決断ください」 

どうやら魔女は冗談じゃないらしい。

「ほらもう時間がありません。すべては姫の手に掛かってるんですよ? 」


もうあと三十分までになってしまった。

これを過ぎれば本当にこの異世界・ザンチペンスタンは魔王の手に。

どうすればいい? 

「ちなみに魔剣はあるのかい? 」

「はい。ノアが」

「では急いでノアを起こしな」

一時間を切った。もう本当に私たちには時間がない。

決断の時迫る。 

 

何ですかこれ……

ノアの手にある魔剣が発光する。

黄金色に輝く魔剣はそれはそれは美しくこの世のものとは思えないほど。

あの汚らわしい魔剣がここまで光り輝くなんてまるで奇跡。


「ほら早く! 」

つい見惚れてタイムリミットが迫ってることを忘れるぐらい。

「ねえこれで魔王を? 」

「そうだよ。でもその前にノアを」

大魔法を解放しバーニッシュエターナルまで使えるようになった魔女。

その力を継承しノアを消すはずがなぜか元の計画に戻ってしまった。


「もう二十分を切ったよ。手間取ることも考えて今から始めな」

「でも…… 」

そんなこと言われても無理に決まってる。

物語上ノアと姫がくっつくとかそう言うのとは関係ない。

ようやく会えたのに。二人は出会えたんですよ? それなのにほぼ何もなくて……

ただ叱って怒って感情を爆発させただけ。それは魔王に関してもそうだけど。

私たち何もしてない。愛を告白してさえいない。それをいきなり始末しろ何て……

 

「酷い! 酷過ぎる! 」

ついに涙が溢れる。今までどうにか堪えていたのにもう限界だ。

「甘えるなって! すべてはこの世界消滅を回避するためだろう?

こんな風に危機的状況に陥ったのは元を正せばあんたのせい。違うかい? 」

「ううう…… そうです。すべて私が悪いんです」

反論できずにただその場で倒れ込む。


                 続く

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