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占い

「では手を見せてごらん」

魔女の手相占い開始。


「うん? あんた姫だね? 」

最初から知ってることをまるで今知ったかのように演じる。

本当に油断ならない。味方なら頼もしいですが。

「なぜそのことを? 」

こっちも付き合って大げさに驚く。それが礼儀。

「それに勇者だ! 」

まずい。すべてを見抜いている。

ただ本当に驚いたので声もない。

「これは何? 同時に魔王でもあるって出てるよ」

混乱するお婆さん。魔女にも不思議なことがあるのだろうか?


「はいはい。何だいい加減なんだ」

「馬鹿を言うんじゃないよ! これがあんたの現実。

そうだ過去を見たあげようね。過去から何か分かるかもしれない」

うわ…… 過去と言えば転生前の話。これはまずい。


「ええっと…… あんた男? 」

「何を言うんですの? ボクは正真正銘の姫。いい加減なことを言わないで! 」

さすがに魔女の言うことを信じる者はいない。

絶世の美女と謳われ魔王からも狙われてる姫が男のはずがない。

もしそんな変な噂が広がれば致命的。ボクはお終いだ。


「過去はいいですから未来を占っていただけませんか? 」

過去に囚われていては成長は望めない。

姫として少しでも成長できたらな。

「ううん未来か。それは不確定要素があり過ぎて難しいね。

抽象的なアドバイスになるがそれでもいいかい? 」

魔女は一応は断りを入れる。これで大外れしても文句言われずに済む。

予防線を張るなんてよく考えてる。


「では行くよ」

そう言うと真剣な表情になる。

「どうですボクの未来? 」

つい前のめりになる。

「ほら落ち着いて。興奮するんじゃないよまったく! 」

呆れ顔の魔女。でも誰だって未来は気になるもの。

訪れる未来が幸せでありますように。


「白馬に乗った王子が現れてさらっていく。それが嫌だったら一発お見舞いしな。

そうすれば王子もしつこく迫りはしないさ」

姫だから各国の王子から求婚されるのは当然と言えば当然。驚くことでもない。

「はあそれだけですか? もっと他には? 」

どんどん引き込まれていく。

「本当のことを言っていいかい? 」

顔が険しくなる。これは危険だ。

まさか今までのは余興? だとすればあまりにも悪ふざけが過ぎる。


「どうぞ。ボクどうなるの? 」

 早く知りたい。でも知りたくない。二つの相反する感情で押し潰れそうになる。

「あんたも知っての通り世界は滅亡するよ」

ボクだけでなくお付きの者まで固まる。一言も継げない。ただ黙ってるしかない。

それを見て付け加える。

「冗談さ。ただその可能性もゼロじゃないって話」

濁すがこっちはすべてを当てられてるので正直動揺している。


「もっとこう近い未来は? 」

「そうだね。ついに今夜勇者に出会ってしまう」

そうなれば当然何が起こるか分からない。

魔女の言うように世界が滅亡するかもしれない。

でもこの予測は自分たちが何もしなかった場合。

「ではどうすればいいのです? 」

縋る。もはや魔女にすべて頼り切っている状態。

「そうだね。もう屋敷には戻らないことだね。ここにいればいいさ」

「まさかそんなこと…… 」

「滅亡するよ。ここは魔王の手下にさらわれたとでも言っておくといいよ」

魔女から貴重なアドバイスをもらう。


「何を言ってるんですか! 」

さすがにお付きの者まで説得できない。

さあこれからどうする?

「まあまあ。ここはいったん落ち着いて。ほらお婆さんも」

なぜか好戦的なお付きの者。宥めるのもやっと。

「抵抗する者はこの杖の餌食になるよ! 」

大人げない魔女。

どちらも引くに引けない状態。どうしたらいい?


「もういいです。ボクお婆さんの招待を受けることにします」

これで無益な争いをせずに済む。

「ですが姫様! それには危険が伴います」

「大丈夫。心配はいりません。ボクは連れ去られたと言ってください」

「そんな姫様! そのようなことは姫様の名誉に関わります」

そうだった。噂になったらお終いだ。ではどうする?

「でしたらそのまま。魔女のお婆さんに囚われていると」

これなら文句ありませんよね? 他に方法はなさそう。


「待ってください! それでは私たちが無能扱いされ最悪処分されてしまいます」

「そうだって。悪いことは言わないから帰ろうぜ」

いつの間にか戻ってきた運転役の男が口を開く。


「でしたらこうしましょう。魔王の配下に襲われ負傷したので一週間滞在すると」

これなら角が立たない。

「それですとやっぱり私たちが見捨てたことに」

二人は処分を恐れて頑なだ。当然と言えば当然でしょうね。

しかし魔女の言うように戻れば確実に会ってしまう。


「国王様も心配されます。考えを改めてくださいませ! 」

「いいから早く出て行って! 」

つい感情的になってしまう。これでは姫失格? それともいつも通り?

「駄目です! そのような得体のしれない者の世話になるのは見過ごせません!」

これだけ説得しても駄目らしい。


「だったらあなたは残って。彼にすべてを頼みましょう」

戻ってきた男に大役を任せることに。適当に言い訳してね。

「それでは姫様の名誉が! 」

「ならば手紙を書きます。それを持って戻ってください」


こうして男にすべてを託すことに。


                続く

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