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クマルスペシャル

カンペ―キ洞窟。

勇者・ノアにアーノ姫そして魔王様がついに運命の出会いを果たす。

この出会いは奇跡と言っていい。


「まずは…… 一杯どうだ? 」

グラスにたっぷり注いだ液体。

白濁してるところから白ワインと推測できる。

さすがは魔王だけあって食にうるさく飲み物にもこだわりがあるよう。

これを最後の晩餐のお供とは実に贅沢な一杯。


私も姫様でしたから多少の知識はある。

もし本物ならコレクター垂涎の一品と言うことでしょう。

白ワインですからね。年代物で渋くて飲めないなんてことはないでしょうが。

とは言えラベルやエチケットには気を配る必要がある。

おっとこれは前世の記憶によるもの。


白濁の中身は魔王を信じれば酒だろうが毒が入ってないとも限らない。

すぐに手を伸ばさない。まずは魔王が飲み干してから。

じっくり観察し様子を見る。それが賢い人間のやり方。

もう絶対に騙されない。昨日は結局魔王が姿を見せずにタイムアップとなった。

ここに姿を見せたのは諦めたとも取れるが何か仕掛けてあると考えるのが当然。

だからここは思い切って真意を測ることに。


「まさか毒を入れてないでしょうね? 」

「ははは! 情けない。一緒に最期の時を過ごそうと言うのにそんな無粋な。

お前たちはどうか知らんがこの魔王様はお前たちに親近感を覚えている。

同じ仲間で一緒に戦った友だとさえ思っている。違うかノア隊長? 」

ほぼ脅しのようにノアに迫る。

切り崩しやすい相手を選び説得に掛かる。上手い作戦ですが余計に目に余る。

「ちょっと! ノアを巻き込まないで! 」

「おいおい。奴とて勇者であり隊長であり主役の一人だろう? どうなんだ? 」

「そうですね魔王様…… 」

ダメ。これでは手下のモンスター。いいようにやられる。


「騙されないわよ! 」

「済まないアーノ姫。あなたのことを忘れた日はない。

だからこれ以上あなたといがみ合いたくない。分かってくれ」

勝手に告白する魔王。うまい手なんだから。これでは反論もできない。

口だけは達者だから判断を誤ってしまう。

いけない…… 何を弱気になってるのでしょう? 

それに魔王はいくら言い訳しても事実は変わらない。

晩餐会はやはりゲストではなくホストからがマナー。


「二人とも恐れることはないさ。ではこの魔王様から一杯」

盃を飲み干すと再び満たす。

うわ…… 魔王の後は嫌。強引にノアに勧める。

「では一杯」

こうしてノアは飲み干す。

「どう…… ノア? 」

観察するも異常はなさそう。これなら安心し飲める。

では盃をきれいに洗って拭いてから満たす。


「では一杯」

一気に飲み干す。

言われたように飲んでやった。さあこれで文句ないでしょう? 

魔王は不敵な笑みを浮かべる。


「ボグ―は? 」

「ボグ―! 」

ついからかいたくなってしまう。

ボクにしろボグ―にしろ一人三役にはとても重要な合言葉。

これを守れば切り替えの時に楽だから。たまに間違えてしまう場合もありますが。


「まったくまだこの魔王様を信用せんのか? 一緒に戦った仲間じゃないか」

魔王は仲間意識を持たせ信用させる作戦。

作戦である以上何か思惑があるに違いない。

魔王は侮れない。油断させてとんでもないことをしようとしてるに決まってる。


「そうだろ勇者・ノア? 」

ノアを取り込もうと躍起になっている。そうはいくものですか。

「確かに魔王の言うことには一理あるかな」

やる気もなく恐怖に支配され騙されそうになってる人間の末路は哀れなもの。

私がどうにかしなければ魔王に取り込まれるだけでなく道を見失う。

「もうノアは黙ってて! 私が交渉するんだから! 」

ただのおしとやかな上品でかわいくも美しいままではいられない。

私はこの世界を守る使命があるんだから。


決意を新たに魔王に立ち向かうがまだ人間の皮を被っている。

「ふん。要するにお前はこの魔王様が気に入らないのだな? 」

魔王は野望を隠し切れず焦ってる模様。一体どんな魂胆があるやら油断できない。

「いいから大人しくしてなさいよ! 」

「まあまあ。アーノ姫も少しは落ち着いて」

どうしてこう邪魔をするの? 勇者ノアは見かけだけ?


「そうだ。お酒も酌み交わしたことだ。最後の晩餐と行こうじゃないか」

手を叩くと手下のモンスターが皿を持ってやって来た。

そしてドンと壊れるのではないかと言うほどの力でテーブルの上に叩きつける。

これが俗に言うモンスターダンク。

どんどん雑に置かれていく。汁がこぼれようとお構いなし。

はねても割れても気にしてない様子。大雑把なところがモンスター料理にマッチ。

大胆で大雑把。ワイルドなモンスター料理。

でも今はこんなことしてる時ではないんだけどな。


「はい。ではこれで最後です」

クマルスペシャルを置いて出て行った。

どうやらクマルが担当したらしい。

「よしさあ食おう! 」

魔王が勧めるのでついつられて手を付けてしまう。


スープを一口。うーん落ち着くな。

勧められるままに平らげて行く。

うん。クマルスペシャル以外は食べられる。

ヤーミ! ヤーミ―!

酒も料理も一級品。さすがは魔王様セレクト。

相当食べ慣れているな。舌が肥えてるな。

驚きつつも納得する。


「デザートはどうだ? コウモリのヨーグルト和えなんか最高だぞ。

食べ過ぎと消化にはちょうどいい」

では遠慮なく一口。うん酸っぱいけど悪くありません。


               続く

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