日暮れ 復活のノア
囚われのブシュ―を見捨ててカンペ―キ洞窟へ急ぐ。
「ノア! 消滅する前に私たちで食い止めるの。もうそれしかない」
優しくゆっくり説く。それで少しでも耳を傾けてくれたらな。
「だけどこの世界が…… 」
「そう。明後日にはこの世界は消滅するでしょう。それは逃れられない運命。
でもその運命を変えられるのも私たちだけ。いえノアあなたの力に掛かってるの。
だから協力して。お願いノア! 」
説得を試みる。でも心の弱ったノアを立ち直らせるのは簡単じゃない。
ノーマルの彼はコントロール不能の上に何を考えてるか分かり辛い。
とりあえず訳の分からない方舟作りはやめさせる。時間の無駄。
現実逃避してもいい。ですが今は急ぐ時。
「ブシュ―が囚われてしまった。助けなけくては…… 」
「大丈夫。危害加えるつもりならその場で。だから国王に伝えろと言ったのです。
身代わりのブシュ―を人質に国王に無理難題を押しつける気でしょう。
だから心配しないで。ブシュ―は姫として丁重に扱われているはず。
交渉に臨むにしてもまだ時間がある。
この世界を消滅から救った後であなたが自分の手で助け出せばいい」
希望を持たせることでやる気を復活させる。
「本気なのですかアーノ姫? 」
「私は嘘を言いません! さあ行きましょう。この世界の未来のために! 」
「分かりました! 行きましょうアーノ姫! 」
ようやく本来の勇者・ノアに戻った。これで消滅の危機を回避できる。
さあ急がなければもう日暮れ。
ノアが復活した今もう私たちに障害はない。
あるとすればタイムリミットぐらいでしょうか。
それだって最深部に着いてしまえばこっちのもの。
もうこれ以上余計なトラブルも障害もなければ……
「誰だ! お前たち何をしてる? 」
いた。私たちの障害となり得るもの。
「お届けものです! カンペ―キさんへとなってますね」
この作戦は意外にも有効。
彼らは頭が悪いし。一度一つのことに集中すると他のことが疎かになる。
「ほう珍しいな。それで誰からだ? 」
「はい。クマル様からでございます」
私の役割はここまで。後はノアに任せましょう。
「ふざけるな! クマルだと? その野郎の名を聞くだけで頭が痛くなるぜ」
小物のくせにクマルを馬鹿にする。
でもおかしいな? 幹部のクマルが尊敬されず疎かにされるあまりか憎悪まで。
一体何が? 何となく分かりますけど。
カンペ―キとはライバル関係だったから。そのせいで対立して否定的なの?
「送り返せ! 」
怒り狂う手下。
「それよりもこの洞窟の地図ある? 」
クマルなどこの際どうでもいい。
「悪いな。今作ってるところさ」
「ではここを通してくれないかな? 」
懇願するノア。さあ穏便に済むでしょうか?
「嫌だね! これは魔王様のためのものだ! 勝手な真似は許さんぞ! 」
頑な。仕方ありません。ここは復活の勇者・ノアに任せましょう。
ドクズの手下が落としていったナイフで切り刻む。
少々残酷にも見えますがこれも戦い方の一つ。
一匹が消えるともう一匹と増えていく。
「何をしてる? 怪しい奴らめ! 」
ダメだ逃げ切れない。どんどんモンスターが集結してくる。
こんな時にノアがしっかりしてればな……
すぐに囲まれて降参寸前にまでなる。
ただはっきり言って降参して許してくれるような奴らではない。
だって彼らは人間を捕まえては宴に供している。
それほど残酷無比。大体モンスターに感情はない?
ただ翼を広げた捕食者でしかありません。
歩くことも可能らしいですがそれでも化け物に変わりありません。
「お許しを! どうかお許しを! 」
諦めのノアは土下座を始める。
もう情けないんだから。ここまでしてそれで許してくるれはずないでしょう?
考えれば分かりそうなもの。
「おいどうしたそこ! 」
騒ぎを嗅ぎつけた男。カンペ―キ?
何とカンペ―キが姿を見せる。
これはもしかしたら何とかなるかもしれない。
とりあえず事情を説明することに。
カンペ―キは紳士。しかも頼りになる存在。クマルよりもよっぽど信用できる。
その能力を高く評価され若手の最有力候補とまで言われています。
クマルみたいに運だけで突き進んだ者とは違う。
「ああ迷子ですか? 」
きちんと話を聞く紳士的なカンペ―キ。それこそクマルとは根本的に違う。
クマルだと適当に扱ってクマルスペシャルにしてしまう。
「頼むよ! どうしても洞窟が見たいんだ! 」
ノアは必死に粘る。
「目的をお願いします。まさかただの洞窟見学ではありませんよね? 」
紳士で頼りにはなるが魔王様の命令に忠実なのもやはりカンペ―キ。
まさか魔王様を打倒するためとは言えないし。
「正直に言うと魔王様に用がありまして…… 」
「魔王様だと? 約束はしているのか? 」
「はい。実は魔王様からの招待を受けていまして。それで…… 」
正直なノア。果たして信じてくれるか?
ただ招待したのも計画したのも魔王様なので堂々としていられる。
嘘を吐いてない分ノアの思惑を見抜けない。
「そのお荷物は? 」
「はい。魔王様に披露するお土産のようなものです」
「今の言葉すべて真実だな? 信じるぞ! 」
「もちろん真実です」
ノアは曇りのない眼で見つめる。
ここまですればカンペ―キも通さざるを得ない。
「はい。分かりました。ついて来て下さい」
最終関門のカンペ―キを攻略。
「ほら急いで。迷っても知りませんよ」
カンペ―キの後を追いかける。これで最短で例の場所にたどり着くだろう。
再び最終目的地へ。緊張してきた。
続く




