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ノアを連れ戻しに宮殿へ

カンペ―キ洞窟。

「ではこれでアーノ姫。私は任務に戻ります。どうかお気をつけて」

格好をつけるノアをただ見つめるだけ。説得のしようもない。

行ってしまう。ノアが行ってしまう。でもどうすることもできない。

このバトンはあなたからの思いを繋いだもの。

それなのにそれなのに無責任にもこの場を離れようと言うの?

一体ノアはどうしてしまったと言うのでしょう? 


こうして前日の記憶を失ったノアを引き留めることは叶わなかった。

肝心な時に勇者・ノアが逃げ帰ってしまう。

まさかの事態に頭が痛い。

さあどうしよう? ここは一人でも……

ううん。それではまったく意味がない。

私がノアと魔王を抹殺しなければこの世界は終わってしまう。

異世界・ザンチペンスタンは再び消滅の危機を迎えることに。

一人で最終目的地に向かっても何の意味もない。

三人揃わなければまったくの無駄に。

さあ急いでノアを連れ戻しに行きましょう。


現在まだ昼前。十二時の鐘が鳴るまでには充分時間がある。

さあノアを連れ帰るとしましょう。

急いで馬車を捕まえて宮殿に戻ろうとするが……

その肝心の馬車が見当たらない。

ここはクマルタクシーを利用するしかなさそう。

手を三回叩くとクマルが姿を見せる。

監視役のクマルは渋々背中に乗せてくれた。


「ホラ行くぞ! 」

「ちょっと…… もう少し丁寧に扱いなさいよ。魔王様に言いつけるわよ」

「まったくわがままな女だな。まったくこれが一国の姫とは信じられないぜ」

悪口と嫌味で返す召使い。ただ本心は別のところにあるよう。


「それよりも急いで! 宮殿に用があるの」

どうして大人しくしてられないのでしょう?

魔王にしろノアにしろルール無視で勝手な行動ばかり。

「ヘイヘイお姫様。それで今日のご予定は? 」

もう降参とばかりに丁寧な対応に切り替わる。

クマルに言っても無駄だとは思うけど一人で考え込むよりは打ち明ける方がいい。


予定を聞かれると詰まってしまう。

「ちょっとね…… 」

「おいおい。隠しごとかよ? 信頼関係がものを言うんだぜ。

俺たちの間に隠しごとはなしにしてもらいたいな」

クマルは適当なんだから。こんな時ばかり正論を吐くから困ってしまう。

正直に言うしかなさそう。


このままだと機嫌を損ねて宮殿を通り越すかもしれない。

魔王の命令はきちんと守ってもこのアーノ姫様の命令には文句を言う。

忠実な魔王のしもべではあっても忠実な私の家来ではない。

あくまで魔王あってのこと。魔王の言いつけを守ってるに過ぎません。

でもクマルは本当にそうなのでしょうか? 

彼の態度を見るとまた別の感情があるような気がします。


「実は今日中に二人ほど始末しないといけないの。だから協力して」

現状を理解してもらいたけれど詳しくは語れない。

その対象は魔王だから。

だってクマルは魔王の忠実な部下の一人だから……

「ははは! それは物騒だな。俺が協力してやってもいいんだぜ」

クマルは軽口を叩く。それがどう言う結果を招くか思い知らせたい気分に。

「本気? 本当にお任せしてよろしいのですか? 」

「おいおい改まらなくてもよ。俺たちの仲だろう? 」

心強いですが間抜けなのは間違いない。


「では遠慮なく魔王の始末頼みます。何も私の手を煩わせなくてもいいでしょう」

ついにクマルに衝撃の真実を告白する。

「おいおい冗談だよな? 」

笑ってるが暗い。らしくないクマル。

「いいから手伝いなさい! あなたはボクを運んでくれさえすればいい」

頼み込むのではなく命令する。

「できるかよそんなこと! 」

クマルはどうやらまだ魔王に忠誠を誓う義理堅い男らしい。


「できなければこの世界が崩壊するの。そして消滅するでしょう。

もう甘えてはダメ! クマル! あなたは難しく考えずただ命令に従えばいいの」

説得に掛かる。そしてなぜか言い包められてしまう。

「分かったよ」

こう言うところがクマルの長所。なぜかあっさり信じてしまう。

それは私が純粋無垢であどけなさが残るお嬢様だからつい騙される。

悪いと思いながらも手足として使う。

これもすべてこの世界のため。決して自分だけのためではありません。

クマルもきっと分かっていくれる。

こうしてクマルに連れられて宮殿に戻る。


宮殿。

久しぶりの宮殿とは言えのんびりしてはいられない。

ノアの姿が。ちょうど戻ってきたところ。

ノア……

呼びかけようとした次の瞬間ノアに近づく影。

「ノアお帰りなさい。さあ一緒にお昼でも」

積極的に誘うのはノアの幼馴染のブシュ―。

どうやら彼女はまだ故郷に帰ってなかったらしい。

だらしないノアは言われるがまま従う。


「ノア! 今はそんなことをしてる時ではありません! 」

ようやく二人が再会できたのに諦められない。

「姫…… アーノ姫…… なぜ私なんかのために? 」

驚きようが尋常じゃない。

「まさかあなた本当はすべて覚えてる? だけど今になって怖気づいた」

ノアの気持ちもよく分かる。

逃げたいのでしょう。だからってもう時間がない。

今日中に始末されるために最終目的地の洞窟へ向かう。

それが運命でも最後まで抵抗するのがノアでしょう。


「済まないアーノ姫。しかしボクにはやはり無理なんだ」

格好をつけるが今更感が拭えない。

「ほら何も考えないで一緒に来て! 」

「それはボクにはちょっと…… 」

この期に及んで拒否する。

たとえ拒否できても許されることではない。


                続く

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