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絶望! 消えた魔王様

ついにこの時が来てしまった。

思い返せば始まりの地で眠くてつい夢を見たことがすべての元凶。

あの時女神様の言うことを聞いて我慢していればこんな事態にはならなかった。

悔しいよ。どうしてあの時止めてくれなかったのだろう?

女神様がもっとしっかり注意してくれれば。せめて妖精がもう少し使えたらな……

今更後悔したって仕方ない。でもこの瞬間を迎えて冷静ではいられない。

それだけでなく自分の過ちを認めたくない。つまらないプライドがある。

他の誰かのせいにしなければやってられないじゃないか。

それほどきつく辛いもの。


この手でアーノ姫を葬り去ること。

何の恨みもない愛すべき女性。

勇者と姫。

決して結ばれない二人の愛の物語は今決着の時を迎える。


問題はアーノ姫を手に掛けたとしても魔王様を倒さなければ無意味。

どうして未だに魔王様は姿を見せない? 

最終決戦の場所に選んだのは魔王様自身じゃないか。

それなのにどうしてこの場にいない?

もはや嫌な予感しかしない。絶対に外れて欲しいがでも的中するんだろうな。

最深部に閉じ込められた我々では魔王様を探し出すことなど不可能。

これは端から魔王様の策略だったのでは?

時が来れば現れる保証はどこにもない。

一体魔王様はどこにいると言うのだ?


「来ないで! お願い! 」

アーノ姫は冷静さを失い今何も考えられない状況に追い込まれてる。

「何で…… 運命の再会を果たしたのに拒絶するのか? なぜだ! 」

ここまで拒絶されては絶望的な気分になる。

考えれば考えるほどドツボに嵌っていく。そんな気がする。

「ごめんなさい…… でも私の気持ちも考えて」

アーノ姫は限界らしい。もう運命の再会などと言ってられない様子。

そんな甘ったるい考えは捨てたのだろう。

「ほら落ち着いて。まだ時間はある。最後の時まで一緒にいよう」

自分は何と愚かしい真似をしてるのだろう?

これ以上二人の絆を深めようとしてどうする?


「アーノ姫? 」

「分かってる。分かってるから何も言わないで! 」

もう彼女は覚悟を決めている。その覚悟を鈍らせてどうしようと言うのか?

何も言わずに手にかけるしかなかったじゃないか?

他に方法が見つからない以上急ぐに越したことはないのに。


自分にはもう考えてる余裕などない。

彼女に手をかけ魔王様のところまで行って…… 

それをすべて今夜中に済まさないといけない。

もしそれを怠ればこの世界は消滅する。それは誰にとっても同じこと。

過去の記憶があるアーノ姫であればあるほど簡単ではない。

どうする? どうすればいいんだ?

せっかく決意を新たにして吹っ切れたのにまだ拘る?

これ以上仲よくなっても意味がないんだ。

彼女が苦しい思いをするだけ。


「ねえ本当に回避方法はないの? 」

この期に及んでアーノ姫はどうにか助かろうとする。

やはりすべてのことを知ってしまってる以上これも想定内。

「ないんだ…… 妖精と女神様がどうにかしようと駆け回っていた。

でもそもそも初めから助かる道はなかったんだ。

あったのはこの世界が消滅の危機から逃れることだけ。

済まない…… もっと私がしっかりしていればどうにかなったかもしれないのに」

自分の償いきれない過ちを素直に告白した。


この世界が消滅するのもそれを阻止するのも私自身。

おかしな話だ。それは女神様もそう思ってるんだろうな。

女神様はこの世界を作ったと言われている。

女神様は創造主。この世界を作ったのは女神様。話を信じればそう言うことに。

そしてこの世界を無茶苦茶にしたのは私自身。救おうとしてるのもまた私だ。

寝て転生さえしなければこの世界を壊すことはなかった。

それだけでも充分後悔するだけのこと。

当然反省だって後悔だってしている。


「もういい」

どうにか二人で最善策をと最後まで諦めずにどうにかしようとしたが限界らしい。

「よくないよ。諦めるのか? 」

「だってあなただってそのつもりでしょう? 」

「確かにそうだけど…… 」

できるならもうとっくにやっている。感情を捨てて一気に。


最期の挨拶などすべきではなかった。

決意が鈍るだけ。いいことなど一つもない。

どうやらアーノ姫は改めて覚悟を決めたらしい。

自分はと言うとまだ何一つ決断できない。

情けない。情けないけどそれが人間と言うものさ。

格好をつけるがむなしいだけ。ああどうしたらいいんだ?

「私はいいの。後はあなたの決断次第。この身をすべてあなたに捧げる」


どうせこの世界が終わるなら同じこと。

その日が一日や二日延びるだけ。

それにまだ完全にアーノ姫が消えるかは不確かだ。

現世から逃れ言いつけ守れず三度も寝てしまい勇者だけでなく姫にも魔王様にも。

だからもしアーノ姫を手にかけても自分の中のアーノ姫の部分が消えるだけ。

アーノ姫本人が消えるとは限らない。元々のアーノ姫に戻っても不思議はない。


その辺のことは女神様も妖精も初めてのことで何一つ分かってないそう。

だからプラス思考で考えようと。アーノ姫自身はそこまで考えてると思えないが。

一つ言えるのはこの世界が消滅したら現世の私も勇者も姫も魔王様も終わり。

そんな常識と言うか当たり前の事を理解してながらそれでも動けない自分がいる。

どうしても決断できない。

目の前の彼女は自然だし冷静だ。でも心のどこかではきっと震えてるはず。

それは私が彼女だったからよく分かる。彼女の気持ちは痛いほど分かる。


「早く! もう時間がない」

そう出会ってから二時間が経とうとしている。

もうタイムリミットまで三時間を切った。

この間にアーノ姫と魔王様を消さなければ…… そうか消せばいいんだ?

いやそれが無理だから絶望してる訳で。もう打つ手がない。

果たして魔王様は約束通り現れるのか?


                 続く

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