最終関門突破! ついにアーノ姫の元へ
うぐぐぐ!
カンペ―キ洞窟の最後の砦の番人がトイレに行ってる隙を狙って突破を図る。
両方の意味で少々汚く品もないがこれも戦い方。
他に思いつかない以上は仕方がない。
もう少しだ。あと少しでアーノ姫に出会える。夢にまで見た光景。
この閉ざされた扉を開けばアーノ姫の元へ。最深部へとたどり着ける。
どうやら扉には鍵などはなく単純に力を込めればいいだけのよう。
後ろに引くのでもなければ前に押すのでもない。
鉄の塊を下から上に引っ張り上げるだけ。
シンプルで分かりやすいがそれだけに重さも半端ない。
恐らく五十キロはあるだろうか?
それを少しずつ少しずつ上げる。
音を立てないようにゆっくりゆっくり。
ただ持ち上げるよりも手間も時間もかかる。ああ何て重いのだろう?
確かに今日の私は無敵だろうさ。それは先の戦いでも証明されている。
それでも重いものは重いし痛いものは痛い。
無敵でも不死身でも持ち上げる力が上がったのでもコツを掴んだのでもない。
地道にゆっくりゆっくり持ち上げて行く。
それこそ気の遠くなる作業。どんどん貴重な時間が奪われていく。
取っ手に逆手で力を加える。
まずいな。このままでは化け物が戻って来てしまう。
その恐怖と戦いながら格闘すること五分。
これで残り五分を切ったことになる。猶予は僅かだ。
十センチ二十センチと上げて行く。
ダメだ…… もう無理!
三十センチになったところで動かなくなった。
どんなに力を込めてもこれ以上は上がらない。これが限界のようだ。
さあ気づかれる前に突破しなければ見つかったらボコボコにされる。
それでも不死身だから痛みは伴うが生きてはいるだろうな。
ドスンドスン
ドンドン
地響きがする。これは奴がトイレから出て来た合図。もう時間がない。
本当に時間がないぞ。うわ…… 来るな! 来ないでくれ!
焦る気持ちをどうにか抑えようとするが逆におかしくなってしまう。
自分よ落ち着け! もう大丈夫なはずだ。
ふう…… まずは深呼吸して心を落ち着かせる。
開いた隙間から最深部に繋がる道へ転がる。
そしてすぐに鉄の扉を降ろして元に戻す。音を立てないように慎重に。
なるべく急いで大胆にそれでいて静かにを心掛ける。
持ち上げたことにより開いた空間が降ろされたことで元通りに。
どうやらまだ奴には気づかれてないようだ。
そうだろう。少々の音では奴の地響きクラスの足音にかき消されるからな。
違和感に気がつかずに再び番人へと戻った哀れな化け物。
こうして興奮とプレッシャーの中でどうにか突破する。
危なかった。とても危なかった。さあここからが本当の戦いだ。
最深部に繋がる直線路を歩き始める。
もう間もなくだ。間もなくすれば最深部。
即ちアーノ姫が待っている。
ああ待ちに待ったご対面の瞬間。本当だったら早朝に果せていたんだ。
国王を優先したあまりに後回しになってしまった。
さあ踏み出そう。光の溢れるウイニングロードを。
直線路はすぐに終点となる。
後はこの扉を開ければいい。
鍵もなければ何の仕掛けもないであろう扉に手を掛ける。
ああこの日をどれだけ待ち焦がれたか?
せめて一度だけと願わない日はなかった。
そして今その願いが叶うのだ。ああ本当にどれだけ待っただろう?
もう無理だって何度思ったことか? それでも諦めずにここまで来た。
おっと感傷に浸ってる暇はない。アーノ姫をこれ以上待たせてはいけない。
扉を思いっきり押す。取っ手を掴んで思いっきり押す。
そうすれば扉は開かれる。
眩しい。ここがどうやらカンペ―キ洞窟の最深部らしい。
どう言う仕組みかまでは分からないが眩しいほどに光輝いている。
ここが最終目的地の最深部。
扉の向こうにはアーノ姫が……
だが予想に反してどこにも見当たらない。
これは一体どう言うことだろう? そろそろ七時になる頃。
急がないともう五時間しかない。
洞窟の最深部には確か……
そう最深部は部屋のはず。しかもこんな細長い部屋ではない。
ここはあくまで最深部の中の最深部へと繋がる道でしかないのだ。
さあ再び光り輝くウイニングロードを超え最後の道もゆっくりと歩み出す。
そしてついにたどり着いた本当の終着点。
扉を抜ければ最後の部屋に届く。
ようこそ最深部へ。招待を受けたかのよう。
息を吸い深呼吸。それを終えると目を閉じる。
きっとこの扉の先にはアーノ姫が待っている。そうに違いない。
七時が過ぎ準備万端。
もう邪魔もなければ迷いもない。
さあ行こう。新たな世界に旅立つのだ。
こうして気合を入れて己を鼓舞する。
扉に手を掛ける。
うーん感動的だ。涙が自然と溢れるほどの衝撃。
だが開けた扉の奥に誰も存在していなかった。
真っ白な小さな世界。そこには誰もいない。ただ真っ白な世界が広がるだけ。
希望など一つもない。ただ絶望が広がるだけ。
傷心のまま前に進む。
そうすると計ったように扉が閉じてしまう。
うわ…… やられた! 私はこんなところに用はない。
誰もいない世界に閉じ込められてしまう。どうして? なぜこうなった?
嵌められたのか?
うわああ!
もう誰に気兼ねすることなく大声が出せる。
そうこうしてる内にどんどん時間だけが過ぎて行く。
ついに八時になった。残り四時間を切ったことに。
打つ手なしの中でタイムリミットが迫って来る。
果たしてアーノ姫はどこに?
続く




