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従順なモンスター

カンペ―キ洞窟。第一エリアで苦戦中。

ふう…… 今何時だ? ダンジョンに潜ってから二時間近くが経ったはず。

距離にして二キロかそこら。同じところをぐるぐる歩き続けている。

このままでは目的の場所に到着する前にタイムオーバーとなってしまう。

そうなれば悲劇的結末を迎えることになる。

どうしてもそれだけは避けなければならない。


なぜこうなる? 勇者・ノアに試練。

焦るな。焦ってはいけない。冷静に冷静に。

モンスターがいないものだから余計に難易度が上がる。

さあどうするかな? 大声でも出して迎えに来てもらうか?

でもそれではあまりにも情けな過ぎる。

私は誇り高き勇者であり隊長でもあるのだから。


五度の探索で発見があった。

違和感がないか徹底的に調べ少しでもおかしいと思ったらその都度足を止めた。

その甲斐あって緑色の謎の光に目が留まった。

よく見ると壁が少しだけ光って輝いている。

ランタンを消しじっくり観察することに。

どうやらコケか何かが発光しているのだと推測。それとも塩の結晶か?

これが第一エリア突破のカギとなればいいが。


北西に向かうこと五度目でようやく突破口が開けた。

これは執念と言っていい。さすがに隠し扉とは冗談がきつい。

冒険者ビギナーの私にはまだ荷が重すぎる。

ダンジョンにしてもまだまだ暗さにさえ慣れてないんだから。


ブツブツ文句を言いながら光る壁をゆっくり押してみる。

ダメか。重くてさすがに簡単には動きそうにないな。

では一点に力を込めて思いっきり押す。


ガガガ!

轟音を立て隠し扉がゆっくり開いていく。

よしこれで第一エリア攻略できただろうか?


昼過ぎまで掛かるとはこれは急がないと。予定をオーバーしてしまっている。

でもその前に腹ごしらえをしないともう持たない。

そろそろお食事タイムとしますか。

本来だったら一日ぐらい食べなくたって死にはしない。

だが体力も気力も落ちればそうも言ってられない。


妖精のおにぎり。妖精がわざわざ持たせてくれたもの。

ありがたく頂くとしよう。

三個もあるからきっと腹も膨れるだろう。

さすがは妖精。サポートはサボったが多少役には立ってくれた。感謝しなければ。


ではさっそく。頂きますか。

うん? 中身は空っぽじゃないか。しかも塩さえない。具はどうした?

中身は恐らくジャム? 甘くて涙が出そう。どんな嫌がらせだよ。

それでも一個は無理やり食った。だがそれでもう限界。せめて塩をくれ。

まさか塩はここで精製しろとか言うんじゃ? それとも大量に流れる汗から?


ブルーシートを広げダンジョンでお食事をしていると邪魔が入る。

「おいお前? どこの者だ? そこで何をしてる? 」

カンペ―キの手下が姿を見せる。

二人組のモンスター。どうやらこの辺を見回っていたらしい。

ちょうどいい。何か持ってるといいな。


「おい! 聞いてるのかお前! ブルーシート広げやがって! 」

「悪い悪い。魔王様だ。カンペ―キはどうしてる? 」

どうしても魔王様気分が抜けない。堂々としてれば相手だって怯むはず。

「魔王様? へヘイ! それはとんだ失礼を! 」

必死に頭を下げる手下。うんよく教育されているな。

しかし少しは人を疑わなくちゃ。これではクマルと変わらない。

決して悪いことではないがモンスター界でやって行けるか不安になる。

何と言っても私は元魔王様だからな。


「塩はないか? 」

「はあ…… それでしたこれをどうぞ」

この洞窟で精製された塩だそう。かなり貴重で高価なのだとか。

うわ…… しょっぱい! これはさすがに濃度が強すぎる。

私の口には少々上品すぎるかな。

とは言えこれで問題は解決だ。

遠慮なく使わせてもらう。

ふうお腹いっぱい。

三つ全部食い尽くす。


「あのさ…… ついでにここに行きたいんだが」

遠慮なく目的地までの道のりを聞く。

「はいはい。それでしたらこの道を真っ直ぐ行ってください。

そこから突き当たって左に。その後くねくねした道を進んで右に。

そこが出口で第二ゾーンに繋がってるんです。

ただそこを抜けるには鍵が必要でして…… 」

「鍵ってこれのこと? 」

「はい。これを差し込んで回してください。

ガチャっと言う音がしたら開きますので」

親切過ぎるモンスターのお世話になることに。


「ありがとう。助かったよ」

一度では覚えられないので詳細をもう一度紙に記してもらう。

これで迷うことなくたどり着けるはずだ。

親切なモンスターは笑顔で見送ってくれた。

何て人のいい。モンスターの鑑みたいな奴らだ。

元魔王様として鼻が高い。


まずいなゆっくりしていたらもう二時を過ぎてしまった。

間もなく三時になろうかと言うところ。

これは本当に急がないと大変なことになるぞ。

ダンジョンの地図を片手に歩き出す。


分からなくなるまではとりあえず進む。

まっすぐ進み突き当たったら左だったよな。

これだけアバウトで大丈夫か少々不安になる。

とは言え従順なモンスターを信頼しないでどうする。

くねくね道を超え見えて来たところを右に曲がる。

うん。順調順調。今のところ迷うことなく進めている。


メモ通りに進む。

そうすると第二ゾーン入り口までたどり着いた。

どうやら彼らのアドバイスは的確だったらしい。


「そこの者! これ以上進んではならん! 災厄が訪れるぞ」

そう言って脅しをかける者。人間?

もうこの辺りには人間はいないと思っていたのに久しぶりの人間だ。

「あなたは一体何者ですか? 」

「フォフォフォ…… ただの迷い人だ」

そう言えばこいつの顔を見たことがあるような。

どこかで見たんだけどな? どこだったかな?


謎の迷い人の正体を探る。


                 続く

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