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第一エリアを北西に進め!

カンペ―キ洞窟・第一エリア。

さあ捜索開始!

一体アーノ姫はどこへ行ってしまったのだろう?

国王と姫の再会を経てついに我々もと言う時に姿を消す。

再会を果たし一緒にカンペ―キ洞窟へと考えていたのに。

勝手に一人で行ってしまう。


約束の場所に向かったのだろうがそれがどこなのか覚えていない。

思い出すしかない。姫はどこに? 魔王様はどこに?

うーん。うーん。全然思い出せないぞ。

我々の出会いの場所。即ち最終決戦の地。


東か? 西か? それとも南か?

東にも南にも記憶があるが確か東は魔王様の隠れ家がある方だったよな。

それだと南? いや南は除外してもいいか。これ以上南には行けない。

だとすれば西か? 北か?

おかしな消去法で二つに絞ったがどうもそれ以上は難しい。

とりあえず北西に進むとしよう。もはや投げやり。


ここに来たのは二回目。前回は幼馴染のブシュ―と別の入り口から。

だからまったく参考にならない。

そもそも捕まって解放されるまで大人しくしてたからな。


ランタンの灯りを頼りに地図を見る。

この地図は初日にお助けキャラの妖精から貰った改訂版。

今じゃ女神様の代理をするほど偉くなった妖精様だ。

こんな時こそ一緒に協力しこの迷宮のようなカンペ―キ洞窟を攻略すべきだろう?

それが無理なら魔女を寄越したっていい。最後ぐらい何とかしろよな。


とにかく迷ったらお終いだ。慎重に道を選ぶ。

もう時間がないと言うのに手掛かり一つない絶望的な展開。

地図だけでどうにかなるほど甘くはない。


ただ洞窟を出るだけならこの地図があれば迷ってもどうにか。

しかし我々は今日中に出会わなければならない。

失敗すればこの世界は消滅してしまう。

それだけプレッシャーに感じれば焦りは相当なもの。

できるなら今すぐにでも抜け出したい。逃げ出したい。

不可能だって分かってるからこそ余計に現実逃避したくなる。

ははは…… まさか異世界で現実逃避するほど追い詰められるとはね。


改訂版には洞窟の地図もあるが大雑把なもの。

まさかこんな時に役に立つとは思わなかったがそれでも限定的だ。

この世界の全体図も載っている。

そのことをすっかり忘れていた。こんな事態に陥ることはほぼなかったからな。

恵まれていたんだろうな。

実際馬車やクマルを使って移動していたから不便は感じなかった。

地図がここまで不必要な異世界もそれは珍しい。


そうか我々は目的があって動いていたのではない。

女神様の指示でアーノ姫と魔王様と出会わないようにただ逃げ回っていただけ。

鬼のいない鬼ごっこを十日ほど立場を変えながら繰り返した。

決して出会ってはいけない二人が出会った時この世界は消滅する。

そんな風に脅されては行動するしかなかった。

だが今は違う。三人が出会わなければ時間切れで消滅してしまう。


北西に進む。

洞窟を左右にジグザグに進んでどうにか北西を維持する。

さあそろそろ姿を見せてくれ。どこだ? どこにいるアーノ姫?

もうこれ以上鬼ごっこはいい。はっきり言って飽きたよ。

ここにいますよ! あなたのお相手の勇者・ノアはここにいますよ。


カミュ―!

吸血化けネズミが姿を現す。

気性の荒い吸血化けネズミ。この洞窟にのみ生息する希少生物。

カンペ―キ報告でもこいつの対処法が載っていたな。

確か無敵ではないが時間が掛かるので始末が悪いとか。

こいつを倒せば色々と面倒なことになるらしい。

だからここは大人しく逃げることに。


ハアハア

ハアハア

姿が見えなくなるまで走り続ける。

これでどうにか撒くことができた。さあ新しい道を踏みだそう。


それにしても姫はどうしてるのかな?

なぜか迷うこともなく目的地に?

もう自分は姫じゃないから何一つ分からない。

昨日か一昨日だと言うのに随分昔のような気がする。

何だか懐かしくもあるし寂しくもある。

もう二度とあんな体験はしないんだろうな。


妖精も女神様も何も言ってなかったがそれでもよく考えれば分かる。

この異世界で出会った者たちはそれぞれ役割を演じていた。

それは私から見た場合。彼ら彼女らにはそれぞれの生活や社会がある。

そこに現世から迷い込んだ愚か者がどう言う訳か勇者・姫・魔王様に乗り移った。

もし乗り移ってなければそのまま異世界はのほほんんとしていられただろう。

あんなおかしな転生がなければこの世界は何事もなく平和に?


勇者が王命を受けさらわれた姫を救出しに魔王城にでも乗り込んだのだろう。

または秘密の隠れ家を襲撃し魔王様を倒してハッピーエンドにでもなったかな?

そんな異世界に転生して引っ掻き回すだけ引っ掻き回して物語が変わっていった。

そこでも当然皆が自由に動き回っていたはずだ。

魔王軍も国王軍も単純で十日も立たずしてすべてに決着したかもしれない。

だからこれはある意味イフの世界だ。

とは言え狂った責任は取らねばならない。


おっと…… 違った。どうしても変な方向へ逸れてしまう。

私がいない世界で起こったであろうこと。変わったとは言え人の動きに違いない。

だからアーノ姫は難しい難しくない以前に行ってしまった。

それはアーノ姫もこの世界を構成するコマに成り下がったとも言える。

ここで唯一異なる行動を取るのはこの勇者・ノアだけ。

それが嫌と言うほど身に染みる今回の出来事。

とは言えまだ僅かでも過去の記憶が残っていると信じたい。

異世界消滅回避のために動いてくれると。


最終目的地の待ち合わせの場所に一直線に進むアーノ姫。

それがまっすぐならまだ分かるが入り組んだ迷路だ。

それでもスタスタと歩いて恐らくもうたどり着いてるだろう。

対して俺はここの地図を手にしていたが大雑把で難解な上迷いやすい。

必ずしも一直線にたどり着きはしない。


迷宮化するカンペ―キ洞窟。


               続く

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