新章突入! 勇者・ノア編スタート!
新章突入。
【勇者・ノア編】(最終章の場合あり)
<十一日目>
始まりの地。
現在女神様不在。不慣れな妖精が女神様の真似事をする。
ついに運命の日がやって来た。短いような長いようなそんな日々。
最後の最後までどうにか消滅を回避しようと動き回った。
それは妖精も女神様も。
妖精によれば我々が異世界で奮闘してる間に女神様も現世へと旅立った。
鳳凰の姿をした女神様が降臨したのだからそれは物凄いことだろう。
どのような考えがあってなのかただの人間でしかないボクには思いもつかない。
きっと我々のためにあっと驚くようなマル秘作戦があるに違いない。
妖精を問いただせば吐くだろうがここはギリギリまで信じてみよう。
ボクにはボクの使命がある。それを果たせばいいさ。
「では行って来るがよい愚か者よ! 言いつけ通りきちんとケリをつけるんだよ。
間違っても情に流されないこと! それは即ち異世界の消滅に繋がる。
忘れないで! それだけは忘れないで! 」
少々厳しめな妖精。不安からか苛立ちが隠せないでいる。
まだまだ女神様のようには行かない。
最後のエール。これでお別れかと思うと寂しくなる。
「いい? きちんと後始末するんだからね? 怖気ずくなよ! 」
「分かってるって! それが異世界を消滅から救う最終手段なんだから。
何があろうと意地でも実行するさ! 」
心配を掛けないように強く言う。
「でもきっと躊躇う。それでもどうにか役目を果たすように」
「おいおい心配し過ぎだって。ボクが信じられないのか? 」
「あのねえ! 信じられる訳ないでしょう? どこをどうやったら信じられるの?
三度も寝て異世界を混乱させた愚か者のくせに。少しは反省しなさい! 」
またしても蒸し返す。せっかく気持ちよく旅立とうと言う時に余計なことを。
まだまだ女神様のような慈悲深さを身に着けられてないらしい。
ただの代理で留守番役ではこれが限界か。
「そう言うなって。それよりお前もついて来いよ。一人じゃ寂しいよ。
お前だってボクを導くお助けキャラだろう? 最後ぐらいさ…… 」
我がままを言って見る。実際一人は寂しいし不安なんだよね。
一人で運命に立ち向かうのにはまだ荷が重い気がする。
その辺のところを妖精はどう考えてるんだろうか?
「甘えないで! 最後ぐらい一人で戦いなさい! 私だって忙しいの! 」
「はいはい」
「きちんと最後までやりなさい! あなたが罪悪感に苛まれることはないの。
これはあなたたちの未来が掛かっている。消滅を回避するのがあなたの使命。
それだけは絶対に忘れないで! それだけは! それだけは! 」
何度も何度も繰り返す。まるでボクが絶対失敗するかのように。
そんなはずないじゃか? ボクは勇者でその上隊長。失敗はあり得ない。
仮にどんなことがあったって約束は守るつもりだ。
「分かってるって! だから心配するなって! 時間が無くなるからもう行く」
こうして最後の睡眠に入る。
ついに消滅予定都市・ザンチペンスタンに降り立った勇者・ノア。
最後の箱舟に乗って異世界から脱出せよ!
うんここは?
隣りには国王の姿がある。
「おい出発するぞ! 急いで支度をせんか! 」
どうやら予定よりも五分ほど遅れてるらしい。細かいな……
朝早くに例の場所でアーノ姫と落ち合う予定。
馬車に乗り魔王軍の新隠れ家であるカンペ―キ洞窟を目指す。
ここには現在カンペ―キの部隊が詰めている。
「嬉しいぞ。ようやく会えるのだからな。
姫は無事だろうな? アーノはもういるか? 」
国王は大はしゃぎ。気持ちは痛いほど分かる。何日ぶりかだから。
アーノ姫と国王の再会。父と娘の感動の再会の場面だからな。
それは言葉では表せないぐらい喜ばしいことなのだろう。
ボクだってそれは同じ。いつもは会わないように会わないようにしていた。
遭遇確率を下げる努力もしてきた。ニアミスなんかもあった。
狭い世界で三体を駆使すれば当然そんな綱渡りな場面も。
だがそれでも何とかこの日まで避けて来た。
回避できたのは努力もあったが運もあった。
決して出会ってはいけない二人がついにそのタブーを打ち破る時が来たのだ。
夢にまで見たアーノ姫。一体どれほど美しいのだろうか?
ただの勇者と姫。そこにロマンスを求めるとしても限界がある。
何と言っても一日だからな。
しかもその一日の内にアーノ姫を手に掛けなければならない。
それがボクに課された使命。それは決して避けることのできない宿命。
ああできるならこんなことはしたくない。でもしなければ消滅は避けられない。
そう我々は決して結ばれない二人。夢を見る方が間違っている。
ボクか…… 今までは三役を演じた関係でボクで統一してきた。
でももうそれもお終い。ここは新たにしようと思う。
だがいくら何でも俺では似合わない。
ここは大人っぽく私としよう。
それが勇者であり隊長にも相応しい。
私が隊長の勇者ノアであります。
うん。やっぱり格好いいな。
「聞いておるのかノア隊長? 」
「お任せください国王様! もう間もなくです! 」
落ち着いて欲しい。今騒がれて見つかりでもしたら大変だ。
何と言ってもお忍びなのだから。カンペ―キ部隊がどこにいるか分からない。
正体が知られでもしたら襲われるのは必至。
だが当然そうなってもボクは国王を助けない。
一国王を助けてどうなると言うのだ?
それよりもこの世界を守ることの方がどれだけ大事か。
だからもしそのような最悪の事態に陥っても見捨てる覚悟がある。
それは大変薄情で非情なこととは言え仕方ない。
うーん。もうそうなれば決断するしかない。今はそうならないよう祈るしかない。
待ち合わせ場所。
安全面も考えて洞窟には入らないように。
洞窟から少し離れた森で約束している。
これもすべて隊長である私が計画したこと。
森に近づく者はいないか? 国王を狙う者はいないか?
目を凝らし監視を怠らない。
奴らが近づけば臭いも鳴き声もする。風圧だって感じるだろうさ。
それがないところを見るとどうやらまだ見つかってないらしい。
「ではそろそろお時間です国王様」
一声かけてから離れる。国王を一人にするのは危険だがこれも自身が望んだこと。
続く




