新章突入の前に
始まりの地。
愚か者二号たちと話し合いを終え戻ってきた。
どうやら女神様はまだのよう。
現世を飛び回り目的の地にて降臨されたのでしょう。
「ただいま帰りました…… 」
女神様もいないと言うのについいつもの癖で……
一応は忠実な女神様のしもべである妖精。
現世に旅立たれ留守を仰せつかったが時が時である以上動かざるを得ない。
こちらの用件は済ませた。
お二方とも賢明な判断をしたと思います。
問題は例の飲みものをどうやって調達するか。
ふう…… とは言えこれでほぼ任務を果たしたことになる。
後は三人組がどうなるか次第。しかも彼らには選択肢がない。
異世界の存続か消滅か?
その答えが出るのが明日からの三日間。そこですべて決まる。
できるならば三日と言わずに二日…… 一日で決着するのが望ましい。
不安定だった精神が固定されたことで改善される。
もはや簡単には入れ替わることができない。
新章突入。その前に。
現在の状況をざっと確認しておこう。
ここはどこかと言うともちろん異世界。
現世とはまったく異なる場所。
特に時間の進み具合が違っている。
異世界・ザンチペンスタンでは多くの種族が繁栄。
魔女にモンスターに人間。その他の動物。
この異世界を管理しているのが女神様。
結局は異世界・ザンチペンスタンは女神様が創造した世界。
なぜこの世界を創造されたのか?
それは現世より不幸にもお亡くなりになった方にもう一度チャンスを与えるため。
転生してきた者のためにこの世界が作られている。
そして女神様には人の生き死にをコントロールする能力が備わっている。
仮に想像を超えない程度の力だとしても生き返らすことぐらい何てことない。
もしこの異世界が狂い始めどうしようもなくなればその時は決断をする。
女神様にせよ妖精にせよ魔女もそう。思ってもみない力がある。
この世界は無念の最期を遂げた者にチャンスを与える場所。
ただ女神様の立場もある。
それは現世の国家や政治の考え方と似ているかもしれない。
つまりこの世界を永らえるにはどうすればいいのか?
平和で繁栄した世界をどう築き維持していくか。
それにはまず国家の在り方や捉え方をある程度知っておく必要がある。
世界そのものを一番とする考え方。
少し難しいが人はただの人でしかなく特別な者など存在しない。
もし減ったら補充すればいいだけと言う考え方。
その考え方に基づけば人はもっと言ってしまえば人類は価値がなくなることに。
人そのものを保護することはなくなるだろう。
だから人はただの動物の一種類でしかない。あるいは種族の一つ。
その他の生き物と比べれば話せたり社会を形成したりと脳も発達している。
それでも女神様は人類を優遇しないだろう。
世界あるいは国家優先で取り組めば人間など取り替え可能なものでしかなくなる。
それはもう人間でなくてもいい。人間っぽくさえあればいい。
女神様を満足させるただのおもちゃでしかない。
それに対して国民第一主義という考え方もある。
ここの者の繁栄が第一でありその成り立ちである国家や社会は重要視しない。
だからここに初めからいた者を徹底的に優遇する。
もし仮に後から入ってきた者がいても排除すべきと言う考え方。
まだ人間第一。人類を優遇するだけマシ。
ただここにいる者を優先して移住者を排除しようとする危険な考え方。
もちろんこれは決して珍しいことではない。閉じた国家では当然。
仮に受け入れてもそれはここの者のために手となり足となることを要求される。
それは当然であるものの少々危険な考え方でもある。
そして最後に転生者受け入れ主義。
変な主義でただ笑うしかない話だが転生者が優先される。
随分と歪な感じがするがそれが目的ならば仕方なく従うしかない。
この世界はその転生者のためにあるのであってそれ以上でもそれ以下でもない。
先駆者は追い出す? いやそこまで求めておらずただ転生者に体を与える存在に。
そんな空しい存在でしかないのが彼らと言う訳だ。
こうして三つに分けてみたがどれも一長一短がある。
この世界を作り上げたであろう女神様は果たしてどのような考え持っているのか?
やはり国家こそが大事だと思いいざこざを放置するのか?
元々の住民こそが優遇を受けるべきであって転生者はそのお手伝いをすればいい。
そんな考え方だったら転生者は優遇受けるどころか逆に翻弄されてしまうだろう。
今のところ三番目である転生者のために作ったが最有力。
そうそう。転生者も時が経てばザンチペンスタンの住民となる。
五年。少なくても十年経てばもはやその違いはなくなる。
だから転生者のみに与えられた最後の一日からも影響を受けない。
結局は女神様の考え方次第。
果たして本当に愚か者たちを助けるつもりはないのか?
愚か者一号。
三度寝ると言う失態を犯した愚か者だからどう考えても見放されているだろう。
ここで女神様の本音を探れたら。
とにかく今は女神様を信じてついて行くしかない。何だか微力で心許ない。
そして女神様と言えば我々を祝福する神だ。
女神様にはどのような力が秘められているのか?
果たして救われない魂に祝福を与えてくれるのだろうか?
もうここまで来ればどうにでもなれと言う気分。
女神様を信じて自分のやれることをやろうと思う。
それは即ちもう一人の自分を消すことだ。
自分と言う影を切り捨てると言うこと。
それが本当に耐えられるのか?
ただ耐えられなくなってももうどうにもならないのも事実。
今更ながらに後悔している。
どうして寝ようとしてる時に止めなかったのか?
どうしてこんなおかしな世界ができあがったのか?
すべての謎が解けた時奇跡が起きるかも知れない。
それに少しだけ期待している。
異世界・ザンチペンスタンにおいて最後の戦いが始まろうとしている。
ただどんな奇跡を起こすのかまったく見当がつかない。
ああ女神様もう少しだけ!
こうして女神様不在の中で運命の日を迎えることに。
新章突入。
最後の一日。勇者・ノア編スタート!
続く




