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離島生活

離れ小島で一人ぼっち。

それが島流しにあった愚か者の現実。

「あの済みません…… 」

妖精として対峙するにはリスクがあり過ぎる。

「おお! うまそうだ。へへへ…… 」

もう離島生活には慣れたのか次々と大きな魚をゲットしていく。

こっちのことなどまるで見えてないかのよう。


何だかムカつくわね。誰のせいでこの世界が消滅すると思ってるのよ?

あんたたちじゃない! 現世からやって来た愚か者ども!

主にマンホール落ちの人だけど。でもどちらも許さない。

指示に従わず勝手に寝てしまった愚か者に代わりないのだから。

怒りが沸々と湧いて来る。

この怒りを誰にぶつけるべきか?


「何かありましたか? 」

「おお空飛ぶ妖精。珍しいな」

おかしなことを言う男。狂ってしまった? もう限界?

一人ぼっちのサバイバル生活でおかしくなりつつある。

 

「ちょと! きちんと撃退したんでしょうね? 」

彼には魔王様より任務が与えられている。

「おいおい! 俺を誰だと思ってるんだ? 」

この島に上陸しようと異国の地の奴らが目を光らせている。

彼らを排除するのがもう一つの役目。

当たり前ですが撃退しなければ彼自身が危ない。

だから嫌でも任に当たることになる。


「改めまして。私は…… 」

「ああそう言えばいたな。それで何の用だ? 」

「まず初めにあなたをどうお呼びしたらいいのかしら? 」

今回は女神様の代行として。だからある程度上品に振る舞う。

それはいつも通り。しかし相手がどうしようもなければ本性が出てしまう。

そうなる前に抑えながら冷静に対処する。

「ああん? 適当でいいよ」

「でしたら分かりやすく愚か者二号さんとお呼びしましょう」

「はいはい。それで用件は? 」

「こちらから好きな方法を選んで頂きたいんですが」


選択肢を提示する。

このまま異世界が崩壊するのを見届ける。

それとも二人が一人になるか。

二人が決して交わらないように警戒して暮らすか。

相手を倒して自分だけが生き残るか。

その他にも思いつくだけの方法がいくつかある。

この世界の崩壊を防ぐと言うだけなら他にもまだ。

手っ取り早いのは依頼して二人を始末させるか。

拒めば当然この世界のために決断することになる。


「どうする? あなたの好きにするといい」

判断を委ねる。当然本人が納得しなければ意味がない。

それは彼だけでなくもう一人も。

本当だったら二人と同時に話し合う方が効率的。

ただそれをしないのはあまりに危険だから。

消滅されては敵わない。


「うーん…… いきなりそんなことを言われてもな…… 」

頭を掻く呑気な男。

魔王の手下クマルに捕まり小さな島での生活を余儀なくされた。

「早く決めなさい! 遅くても今日中に決めて! 」

「おいおいそれはいくらなんでも無茶苦茶。早すぎる! 」


賞金稼ぎは何も理解してない。理解してもその判断に迷うのが人間の性。

特に現世からやって来た者はどうしても決められない。決めきれない。

判断を他人に委ねてしまう傾向にある。それはたとえ勇者であろう同じ。

こんなクレイジーな賞金稼ぎでさえそうなのだから普通のサラリーマンでは尚更。


「よく聞くの? もし期限までに実行しなかったらどうなると思う? 」

脅しをかけるがそれでも冗談半分に捉えてるよう。本気が窺えない。

「この世界が消滅してしまうの。もちろんあなたも跡形もなくチリと化す。

それがどれだけ恐ろしく残酷かあなたにだって分るでしょう? 」

まだその期限までには時間がある。あるにはあるがそれでも今日中に決めたい。

それが思惑であり狙い。


「冗談だよな? そんなことある訳ないだろ? 」

この期に及んでまだ本気にしないようではもうダメだろう。

「冗談ならどれだけいいか? すべてはあなたの行いによるもの。

そのせいで巻き込まれる者の身にもなりなさい!

これは冗談でもなければ夢でもない。あなたの招いたことでしょう?

罪に対して罰が重すぎるのは事実。

ですがそれはこの異世界の真実である以上避けられない」

愚か者の賞金稼ぎを説得する。どうにか踏みとどまるには彼の協力が不可欠。


「そうだけど俺…… 」

「これは女神様から頼まれたこと。もう逃れられないわよ! 」

こうして賞金稼ぎは決断を迫られることに。

「ううう…… どうしても決めろと言うんだな? 」

「呆れた。何度もそう言ってるじゃない! 」

確認を一つ一つ取る諦め気味の賞金稼ぎ。


「よし分かった! 言う通りにしよう。それでお前はどれがいいと考えてる? 」

愚か者の賞金稼ぎはまだ選べない。いやこれでは最後まで判断できないだろう。

しかし妖精にとってもこの異世界にとっても大きな一歩であるのは変わらない。

「はいはい。だったら私があなたに最適解をお教えしましょう」

余裕が出て来たので少々ふざけることも。


「やはり一番いいのは相手を抹殺すること。

そうすれば今後一切異世界が消滅することはない。

それはあなただけでなくこの世界に住む者にとって平和を意味する。

さああなた自身で元凶の相手を葬るのです」

これが一般的。一番確実で簡単な方法。

「それはさすがにちょっと…… 」

ここに来て拒否しだす情けな過ぎる男。どうしようもないな。


「仕方がないわね。それだった合体するしかないみたい」

「合体? そんなことできるのか? 信じられない」

驚くのも無理はない。でもそれが異世界。

「一つだけ方法がある。同時に同じものを食べればいい。

そうすれば合体は完成。難しくないかと」

「合体か…… 」

「何をためらってるの? 元々一つの体だった。

それがこの異世界に来て分離した。

その原因はあなたが無闇に寝てしまったから。

だから元に戻るだけ。一番合理的」

これが唯一人を殺さずにそれでいて安全な方法。


「うーん…… どうするかな? 」

「ほら早く! 他にもあるけど面倒だし確実じゃない。決断しなさいよ! 」

迫る妖精。賞金稼ぎの男は渋々合意する。

「分かったよ。分った。元の体を傷つけるのは忍びない。

だから合体するぜ。合体でよろしく」

こうして約束を取りつけることに成功。


「ではついて来て! 」

「おいおい! 強引だな」

妖精は賞金稼ぎを連れてもう一人の男のもとへ。

こうして彼らの犠牲によって新たな消滅の危機から逃れる。


                  続く

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