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それぞれの一日

魔王軍の住処。

さあどうするか? いつもの奴をやってみるか。

ボグ―! ボグ―! ボグ―!

試しに雄たけび三連発するも何の反応もない。


この魔王様を無視するとはいい度胸だ。ただで済むと思っているのか?

ははは…… 無反応だ。どれほどやっても変わらない。空しい。空し過ぎる。

これほど張り合いがないとは…… 分かっていたが辛いものがある。

大体魔王軍などうるさくてどうしようもなかったが今振り返ると悪くない。

いつも失敗ばかりする情けないクマルを呼びつけて叱れないのが苦痛だ。


ふう…… 意外にも堪える。

そうだ。もう手下に気づかれることもないだろうからボグ―は止めるか。

口癖のようにいつも言っていたから。

それから魔王様と自分で言うのもな…… 俺様ぐらいがちょうどいい。

ただ慣れと言うものがある。すぐにとは行かない。


ではここからは魔王様としてどう過ごすべきかを考える。 

やはり残り一日を満喫するには女の子たちを呼ぶのがいい。

すべてを忘れてパーっとはしゃぎたい。

それが今ある願望。だがそれは不可能。誰も来やしない。

残念だが仕方ない。ここは諦めて見守るとしよう。

うん? 感傷的になってないか? ははは…… 魔王様がそんなことでどうする?


よくよく考えれば魔王様にとってこの世界の崩壊は喜ばしいこと。

どうにかして阻止しようなどと考え協力すべきではなかった。

人間世界に足を踏み入れ交流を深めたことで気持ちが揺れ動いていた。

それは魔王様に乗り移る以前から。


本質は魔王軍にしろ魔王様にしろ破壊と恐怖で人間を支配。

だからもしこの世界が崩壊するとしてもそれは望んだこと。

恐れる必要もない。人間のように愚かにも走り回る必要も無い。

ただ魔王様らしく堂々と振る舞えばいい。

壊れ行く世界を見届けるのが魔王様の使命。そう思えれば気持ちも楽になる。

だからこそここは汚い手を使わずに正々堂々と戦いたい。

奴らがこの魔王様を倒すと言うなら素直にやられようではないか。


ふふふ…… だがな。本当に奴らはこの魔王様を倒せるか?

勇者・ノアにしろアーノ姫にしろそんな簡単には行かない。

よし心の準備はできた。後は最終決戦の場であるカンペ―キ洞窟へと向かおう。

おっとその前に寝るかな。まだ時間はたっぷりある。焦りは禁物。


ははは! さあ魔王様は決心したぞ!

後はお前たち次第だ。もし三日目が訪れるならその時は躊躇しない。

こうして少しの間眠ることにした。すべては眠り病によるもの。



宿屋にて勇者・ノア。

飯も食い腹ごしらえも済ました。

女神様はどうにかしろと無責任に言うけれどもできることとできないことがある。

今更一人になる以外の解決策を考えろと言われてもな。

一人になるにしても相手を倒し消滅させること以外で一人になれればな。

でもそんな妄想に囚われて手を下さなければ世界は消滅してしまう。


消滅予定都市はその名の通り三日後にはきれいさっぱりなくなるだろう。

そうなってもボクたちには分からないんだろうな。

とにかく女神様の言いつけをきちんと守らなければ。それが明日は求められる。

覚悟はしてるつもりだがいざその状況になれば翻すかもしれない。


キラリと光るものを取り出す。

そう秘密兵器である極秘の剣である魔剣を手に取る。

ずっしり重いその剣はついに伝説の勇者の手へ。

国王様から魔王様を切り刻む剣を手に入れた。

うん。重いな。ずっしり重いから扱いが難しい。

ここ何年も使用していなかった魔剣。

魔王様を消滅させることのできる唯一の剣。

だが果たして本当にボクは使えるのか?

戸惑って躊躇うのではないか? そんな嫌な予感がする。

絶対に怯んではいけないのにそのタブーを犯そうとしている。


ひとまず重さに耐えられるか確かめてみる。

一太刀。感覚を体に覚え込ませる。

これで多少は慣れるだろう。でも相手があの魔王様だからな。

恐怖で動けなくなってはいけない。素振りを忘れずに繰り返す。


さあ日が暮れる前に洞窟へ向かうとしよう。

こうして勇者・ノアを先頭に魔王様と姫が続く。

今生き残りを賭けた最終決戦が始まる。



その頃始まりの地。

「どうしましょうどうしましょう女神様? 」

大慌ての妖精。

<落ち着きなさい! もう彼らも戻って来ることはないのです>

元々ここは始まりの地。

干渉するのは最初。初めに異世界やその他の仕組みについて詳しく述べるだけ。

睡眠不足で寝てしまわなければ彼も今までの転生者の一人に過ぎなかった。

それが妖精にしろ女神様にしろそれ以降も関わるのは異例中の異例。

こんなこと普通はあり得ない。だから忙しい毎日を送る羽目に。


<いいですか? 我々には見守る義務と責任があるのです。

この異世界がどうなろうとも決して取り乱さずに職務を遂行する。

当たり前のことですがそれが守られない。

感情移入して転生者を優遇してしまうなど何とも愚かしいこと>

「しかし女神様…… 」

世界が爆発しようとそれを最後の時まで見守るのがここにいる者の務め。

<落ち着きなさい。まだどこかに方法があるはず>

希望は捨てていない。それは三人も同じ。

ここで挫けては助かる者も助からない。


「方法? ならばすぐにでも呼び寄せて…… 」

<いえ…… もうその力はないと言ったでしょう? >

「女神様…… 」

<心配なのは理解できます。ですからやれることをすべき>

「やれること? 」

もうほとんど何も残されていない。でも一つだけ。

同様に異世界へ飛んだ者をがいた。

「あああいつらですね」

一度だけ夢を見たがために苦労してる。

一人はクマルによって閉じ込められもう一人に所在が不明だが問題ないでしょう。

<ではこの二人へきちんとアドバイスできるように頑張っていきましょう>

切り替えの早い女神様。それに対し思うとこがあるのか妖精は割り切れない様子。


<いいですか? 仮に消滅の危機を逃れても彼らを見逃せば意味がありません。

さあ我がままを言わずに>

「はい…… 」

こうして始まりの地もどうにかまとまる。


                 続く

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