表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

128/205

特別な日

運命の日前日。

どうやらまだ一日残っていたらしい。

これは想定外。一体何が? 考えられるのは一日ずれたことによるもの。

マンホール転落時が日付変更直前だったためと妖精が遅れたことが原因。

ただ確実ではない。神によってもたらされた祝福だとか。

三つに分かれたことで世界がおかしくなりそれが原因でこうなったとも。

すべては女神様からのギフトだとも。

もしかしたら他に消滅回避の方法が残されている?


三つの魂にこの世界の命運が懸かっている。

勇者・ノア。アーノ姫。魔王様。

さあ日が昇る。一体誰から目覚めるのだろうか?

残された一日をフルに使い最後の悪あがきをすべきだろうな。



朝。宿屋にて。

後一度馬車に乗りさえすればカンペ―キ洞窟に着く。

国王様を連れての極秘旅。さすがに慎重にもなる。これでもうまく行っている方。

「国王様? 国王様? 」

いくら話しかけてもロクに返事がない。一体どうしたのだろう?

まるで声が届いてないかのよう。あるいは魂が抜け落ちたかのよう。

当然そんなはずはない。だがいくら呼び掛けても同じ。

それは今からお世話になる運転手も同様。ただ話せずとも馬車で最終目的地に。


カンペ―キ洞窟。

開拓したカンペ―キには気の毒だが魔王様の新たな隠れ家とは真っ赤な嘘。

ここは最終決戦の場として魔王様が直々に指名した。

そのための準備をカンペ―キに。

あの慈悲深い女神様が言うには殺し合いは避けられないそう。

自分が助かるために他の者を討ち取る。

それが三人に課された試練であり使命でもある。


そう常に残るのは一人。正確には一人の人格が残る。

確率は三十三パーセント。

誰が生き残るにしても決して後味のいいものではない。

今までどうにか消滅しない方法を探ってきた。

もはや猶予はない。ここは覚悟だけは決めておく必要がある。

残りの一パーセントに賭けるなどほぼ不可能。

できるなら最初からやっている。


おかしいな。なぜか未だに反応がないんだよな。

「国王様! 国王様! 国王様…… 」

どれだけ呼びかけようとも反応することはなかった。



始まりの地。

あれここは…… 女神様の部屋?

またしても強制的に戻されたらしい。

<おおどうかこの迷える子羊をお救いください! >

祈りをやめない女神様。一体何だと言うのだろう?


「あのこれは…… 」

「あんたまた戻ってきたの? もう用はないでしょうに」

不機嫌で生意気な妖精が絡む。

「知らねえよ! 強制的に連れてこられたんだから」

もう訳が分からない。どうしてこうなったのか説明してもらいたい。


「女神様! 愚か者が戻って参りましたよ」

妖精が取り次ごうとするが女神様は一向に祈りをやめない。

「女神様? 女神様? 」

説明してもらおうと呼びかけるが反応がない。一心不乱に祈り続けている。


<失礼しました。一日増えて混乱してるところでしょう>

「なぜこのような事態に? 」

<はい。あなたの善行と努力のおかげで奇跡が起きたのです。

今日一日でどうにかできるほど甘くはないでしょう。

しかし努力は決して無駄にはなりません。

そう信じて今日一日を懸命に生きるのです。

親しい人とお別れするのもいいでしょう。

しかしこの最後の日は三人にしか訪れない特別な日なのです。

ですから人々は決して反応することはありません。

さあ元の世界にお戻りになり最後の日を満喫なさい>

女神様によってようやく謎が解ける。

さあ運命に従い最後の日を過ごすとしよう。


再び勇者・ノア。

異世界・ザンチペンスタン。

最後の三日間まで残り一日を切った。

早朝七時に目覚めた。

どうやら改めて朝から最後の一日を。

これも女神様の力によるものだろう。


今や人々はただの動く物体でしかなく触れることも話すこともできない。

これは主人公三人。勇者・ノアにアーノ姫そして魔王様の残された一日。

祝福すべき一日である。


女神様の話では好きな時に入れ替わることができるそうだ。

今は勇者・ノアだがアーノ姫にも魔王様にもなれる。

残り僅かな時間を最後の悪あがきに使うつもりだ。

しかしあれほど慌ただしかったのに今は静かでとても違和感がある。

この世界のどこかにすべてを元通りにする呪文か何かあるはずだ。

無理だとしても探してみようと思う。もはやそれぐらいしか打つ手はない。

それにはまずは腹ごしらえ。


宿には下ごしらえ済みの品々が置かれている。

まずはそれを温めて食す。

朝はまだ冷え冷えとする。だからスープをすする。

ズルズルと不快な音を立てる。

こんなこと現世でもよくやっていたな。

そうすると睨まれまではしないものの冷たい視線を送られる。

うーん。美味しい。熱々のスープはそれは最高で。

下ごしらえ済みの魚とステーキをお好みで焼いていく。

ミディアムだと嫌なのでレアと行きたいがその中間に抑える。

まずい失敗した。うーんやっぱり焼き過ぎだな。


おっとここで少しは野菜を取らないとな。

パリパリムシャムシャと草だかサラダだかを取る。

最後にオレンジアイスを一つ。

うーん沁みる。せっかく温まった体が台無しだよ。

さあ食事も済んだことだしそろそろ寝るかな。

食事後すぐに寝るのは体によくないのだがまあこの際仕方ないよね。

まずは一通りなってみてからどうするか具体的に決めることに。


こうしてアーノ姫を思い浮かべ寝ることに。


                  続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ