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救世主クマル

ロイデン村。

アーノ姫のターン。


村を当てもなく彷徨い歩いていた。

水をください。誰かボクにパンを。

つい弱音を吐く。でもそろそろ限界。

どれだけ歩いたか分かったものではない。

姫にしては体力も行動力もある方。でも地図が頭に入ってる訳ではない。

だから迷って当然。そしてついには体力の限界を迎えてしまう。

これはもう仕方ないこと。


もしこんな時に魔王様と出会えばこの世界は終わってしまう。

だから絶対近づいてはいけなし捕えられてもいけない。

愚か者を確保した今直ちにロイデン村を離れなければならない。

後のことを魔女と魔王様に託して逃げてきましたが……

どうしたのだろう? 魔女が姿を見せない。

まさか逃げきれずに捕まった? それとも拷問でも受けてる?

どうしても悪い方向に悪い方向にと考えてしまう。


それにしても遅いな。

「どうした困ってるのか? 」

この聞き覚えのある間抜けな声と翼の音。間違いないクマルだ。

どこからともなくクマルの声が聞こえる。

「あなたはクマル? クマルなのね! 」

「そう言うお前は姫なのか? アーノ姫なのか? 」

「ちょっとクマル…… 恥ずかしいでしょう? 」

「いや…… お前がふざけるからつい俺も。まったく世話の焼ける姫様だぜ」

恥ずかしさを隠そうと生意気な口を叩くクマル。

これは魔王様に報告かな?


魔王様の忠実なしもべで姫の世話係でもあるクマルの出現で危機回避。

「一応は魔王様から命令を受けてるからな。

何でも言うことを聞けと人使いが荒いんだよな」

あろうことか魔王様への批判を口にする。何て命知らずなのでしょう?

あれだけ守られているのに。恩を仇で返すんだから。


「よし戻るぞ! 」

「待って! まだ会えてないの」

「ああ魔女だな。待ってろ連れて来てやるから」

「待って…… 」

ダメだ。話を聞かずに行ってしまった。きちんと理解したのかな?


十分もしないで魔女と愚か者の二人が姿を見せる。

「これでいいんだろう? 」

「ありがとうクマル。さあ行きましょう」

「ちょっと待ってくれ! それでこいつは何者だ? 」

「魔王様からぜひ預かるようにとのご命令」

クマルを騙すのは心苦しいですがこれもこの世界を守るため。

そのためには多少の無理も我慢もする。


「よし分かった。二人を連れていってやるよ」

こうして無事例の男の子を見つけ出し村を脱出する。

うまく行った。これで任務完了。


後は女神様の判断を仰げばいい。

じっくりと時間を掛ければいい案も思いつくでしょう。

と言っても大体くっつけるか離すか消滅させるかの三択でしょうが。


「よし飛ばすぞ! 」

「わたしゃあ遠慮しておくよ。二人で行ってきな! 」

魔女は歩いて戻ると聞かない。

「でも…… かなり遠くありませんか? 」

「大丈夫だよ姫様。これくらいなんてことはないさ」

やせ我慢の魔女。お年寄りは一度言いだすと聞かないから放っておく。

残念ながら魔女とはここで別れてクマルに隠れ家まで送ってもらうことに。

さあもう時間がない。気を引き締めて行こう。



その頃勇者ノア。

馬車の中。

「居心地はいかがでしょうか国王様? 」

説得を振り切って姫との再会場所へと向かう。

おつきの者もつけずに完全なお忍びの旅だ。

「うむ。背中が痛むが問題なかろう。

これくらい姫と再会するのに引き換えれば何てことはない。


「本当に大丈夫なのか? 」

国王様は不安を払拭できずにいる。それも当然と言えば当然。

姫が消えてから何度か再会する機会があった。

その度に邪魔が入って流れてしまっていた。

今国王の願いを聞かないでいつ聞くと言うのか?

本当だったらボクが姫。アーノ姫ですと告白したい。

そして現在起きている詳細を伝え協力さえしてもらえたらな。


混乱を来すから今までは誰にも伝えなった。

だが国王なら相談相手には相応しい。

いや国王以上の相談相手などいないのではないかと考えている。


馬車をノロノロ走らせている。それは安全を考慮してのこと。

だがそれ以上にまだクマルの背中にいる姫。

これではさすがに会わせられない。ゆっくり馬車移動で時間を稼ぐ。

「では国王様お休みください。この隊長にすべてお任せください」

国王にいいところを見せようと張り切る。

だが不覚にも睡魔に襲われる。

これはまずい。こんな時に馬車が襲撃されでもしたらどうにもならない。

だから重くなった眼を懸命に開こうとするが逆に閉ざされていく。


ううう…… もうダメだ。眠くて……

抵抗虚しく夢の世界へと。



魔王様はモンスターを押さえつけるのに四苦八苦。

「魔王様! ガキがどこかに消えてしまいましたぜ」

手下の一人が騒ぎ立てる。

「おい静かにしろ! 我々の目的を忘れたのか? 」

「いえ滅相もございません」

「だったら目的を言ってみろ! 」

モンスターをたまには厳しくするのも悪くない。

「はい。我々の目的は不老不死の実を持ち帰ること」

「そうだ。だから今からでも遅くない。探しだそうではないか」

ついに不老不死の実を本格的に探すことに。

だ伝説の実がどこにあるのか分からない。


「あんの…… 」

頬がピンク色の男。呂律が回ってないところを見ると酒に酔ってるな。

無礼な奴だがこのまま放っておけば手下にぼこぼこにされてしまう。

ただの酔っぱらいを痛めつければその報復に魔王退治に発展しかねない。

魔王様がいくら不死身でも手下のモンスターまで不死身な訳ではない。

村人が団結でもされたら厄介。ここは穏便に済ませるべきだろう。

無用な争いは避けるべき。


                続く

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