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急接近! 近すぎる二人の関係

引き続きアーノ姫のターン。

仕方ない次…… 

「ねえお姉さん。困ってることがあったら僕が…… 」

大人びた口調と態度。

さっきから気にはなっていたがどうもすべてを知ってるような。

「あなたまさか…… 」

「うん…… ボクはまだ子供だよ。難しい話は分からない」

追及しようとするがうまくかわされる。とてもただの子供には思えない。

そんな子がいるとするならそれは間違いなく我々が追い求めていた愚か者。

中々尻尾を掴ませてくれない慎重で大人びた男の子。


「ねえ一緒に来てくれない。絶対に悪い様にしないからさ」

子供相手に何を言ってるのでしょう?

格好悪いし情けないこと。でも目の前の獲物を狩らずにどうする?

今は姫ではなく崩壊を止めようとする一人の勇者として臨む。


どうにかしてこの子を連れ帰れたらな。

ただこの子自身に自覚がない場合も。

無意識に乗り移ってるとしたらどうすれば…… 

それでも心を鬼にして女神様に引き渡すべきでしょうか? 

どうすればいい? 悩みは尽きない。

でも急がないと魔王軍がやって来て厄介なことに。

ここはどうにか説得するしかない。


見つけたはいいがこれからどうすれば?

「そうだ。君のことを探してる人がいるんだけどな」

ボクは一体何をしてるのでしょう? 幼い子供を連れ去ろうとしてる?

いくら本当の姫様ではなくてもこれは決してやってはならないこと。


「お邪魔しますよ。ああ姫! こんなところに? 探したんだからね」

まずい。タイミング悪く魔女に。いやちょうどいいのか?

「この子が例の…… 」

これでいい。魔女は不老不死の実を求めてやって来た。

そのついに愚か者探しにも協力してもらっている。

判断は彼女に任せることに。


「本当かい? こんな年端も行かない坊やがね」

「恐らく…… ただ確証はまったくありません」

聞かれないように声を抑えて。


「どうしたのきれいなお姉さん? 」

男の子とは言えもう一人前。女性の扱いに慣れている。

彼もボクと同じように現世からの逃亡者。この異世界では異質な存在。

しかも片割れは魔王様に囚われどこかへ閉じ込められている。


「一緒に行こうか? 」

「うん。いいよ」

無邪気だ。本当に彼がこの世界を消滅させようとしてる破壊者なの?

ただ何も知らずに生きているだけのようにも。


こうして二人目を無事に確保。

これからどうするかを現在考え中。

魔女にすべて任せるか? 

魔王軍に捕まらずに村人にも疑われず。果たしてそんなことができるの?

ボクは当然魔王様とご対面はご法度。決して出会ってはいけない。

引き渡しもできやしない。ここはフーツにでも……


勝手に連れて行く訳にも行かないのでひとまず母親に挨拶。

「ちょっと何なの? ホラ来るんじゃない! 」

トラブル発生? 一体何が?



その頃魔王様は……

「化け物こっちだよ! ほらぼうっとしないで」

子供は正直だな。でもこれではロクな大人にならない。

いつの間にか性格が変わったと言う男の子を紹介してもらうことに。


「いや待て! そっちは…… 」

「ほら早く! あの家の子だからさ」

男の子が指し示した家はさっきまでアーノ姫が。恐らく今でも……

「ボグ―! ボグ―! ボグ―! 」

ボグ―の三連発で威嚇する。これで恐怖で足が竦んで動けないだろう。

魔王様と大人の怖さを思い知るがいい。


「おじさん。ふざけないで。こっちは真面目に案内してあげてるんだからさ」

情けないことに引っ張られていく。

「しかし…… 」

「ほら魔王様。何を我がまま言っておられるのですか? 」

何も知らない手下に両腕を取られる。

まったく最近のモンスターは礼儀がなってない。

これでは子供が真似してしまうではないか。


「ほら行きますよ魔王様」

有無を言わせずに噂の男の子の元へ。

まずい。まずいぞこれは。消滅の危機まで残り五十メートルを切った。


「ボグ―! ボグ―! ボグ―! 」

「はいはい魔王様。喜びの雄たけびは早いですよ。まだ分からないですからね」

「知ってるわ! それよりもフーツを待つべきでは? 」

「いえ。ここは早いところ済ませてしまいましょう」

こうして絶体絶命のピンチを迎える。


「うわ嫌だ! やめてくれ! 」

「往生際が悪いですよ魔王様」

まずい。逃げ切れない。

「おばさんあの…… 」

さっきまで話していた男の子の母親。

「ああ遊びに来たんだね。うん? あんたらは誰だい? 何しに来た? 」



その頃アーノ姫は……

「どうしよう? どうしよう? 」

ただ慌てるのみで何も解決策が思いつかない。

「ほら落ち着きな! 食い止めるから姫は奥に」


「裏口ならそっちだよ」

男の子はやはりただ者ではなさそう。考えを先回りして協力してくれる。

「ありがとう。ほら一緒に行きましょう」

「ううん」

首を振る。どうやら自分は残るそう。


「何を言ってるの? 」

「お姉さんだけでも逃げて。僕は大丈夫だから」

そうやって格好つける。でも魔王軍に囚われたらどんな仕打ちを受けるか。

「ほら姫様! この子は構わずに逃げて! 」

魔女が後を引き受けると。男の子も守って見せると。これなら安心か。


ドンドン

ドンドン

魔王軍が来襲。開けなければ叩き壊す勢い。

これは脅しか? でも頭が悪いので本気とも取れる。

「分かりました。ではこの子の世話をお願いしますね」

「大丈夫だって! 任せておきな! 」

忍びありませんがこれも消滅回避には仕方ないこと。

裏口から脱出を図る。

これで魔王様とご対面することはないでしょう。


危機は去った。

急いでロイデン村を後にする。



その頃魔王様は手下に押される形で突入。

「よしその者を捕まえろ! 」

手下が止めるのも聞かずに暴走を始める。

怯えた男の子。その隣では女性の姿が。


「お前は誰だ? 」

「失礼だね。私はアーノ姫だよ」

無理がある。その見た目では村の年寄りにしか見えない。

「嘘を吐くな! アーノ姫はもっと若くて美しいだろうが! 」

手下は囮で変わり身の魔女を追及する。


「失礼だね! アーノ姫だって言ってるだろう? それで何の用だい? 」

「そうだった。男の子を…… 」

「待て! 引き上げるぞ! 婆さん後を頼んだ! 」

手下を制して命令する。さすがにこれでは従わない訳には行かない。

「魔王様…… それでよろしいのですか? 」

「ほら帰るぞ! ぐずぐずするな! 」

すべては自分の我がまま。もう充分だ。

例の愚か者は魔女に任せておけばいい。


任務完了。村を去ることに。



                 続く

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