アーノ姫単独行動開始!
国王と謁見中。
勇者・ノアのターン。
目の前には笑顔の国王。これはぜったいに何かあるな。
「その方…… 魔剣を失くしたと聞いたぞ。真か? 」
どうやらもう国王のお耳に入ったらしい。
魔剣探しを命じられたがまさか国王がボクの失態に気づくとは。
いやあり得ないか。だとすると情報が漏れたことになる。
一体誰がそんな真似を? まさかこの隊長に不満のある者がいるとでも?
考えたくはないがいわゆる裏切り者が隊員にいると言うことになる。
「いえ… そのようなことは。ただの噂に過ぎません」
「本当か? どうも疑わしいな」
まずい。これではボクが追放されてしまう。
とても大事な時期にそれだけは何としても避けなければならない。
「まさか国王様ともあろう方がそのような不確かな噂を信じると言うのですか?」
この際多少疑われようと目をつけられようとこの場を乗り切ればそれでいい。
「それは隊長の言う通りだが…… 」
「そうですよ。つまらない噂など気にする必要ありません」
自分でも何を言ってるのか。魔剣があったとは言え失くした失態は消えない。
「しかしこれは信頼の置ける者から直接聞いた話だ。
まさかこの国王にウソを吐く気ではあるまいな? 」
「真に申し訳ございません! ただこの通り取り戻しました」
これ以上はダメだ。国王からの信頼を失ってしまう。
正直にすべて話す。そして自分の手で魔剣を取り戻したことを強調する。
しかし一体誰がそんな噂を流したんだ? まさかね…… あいつか?
「まあよい。では今度は決してなくすではないぞ」
「ははあ! 」
どうにか叱られるだけで済んだ。後でお仕置きを受けないよな?
「それでだが…… 聞いてるとは思うが姫探しを再開したいと思う」
三日後の早朝に国王と姫を会わせようと密かに考えてはいる。
魔王軍の動きもなく再び余計なことをしようとする国王。
「国王様は本気で会いたいのですか? 」
今まで我慢してきた国王にとってこれ以上のお預けは拷問だろうか?
でもできるならすべてが解決してからゆっくり再会してもらいたい。
「何を言う? 当然ではないか! 」
何度目かの計画。その都度邪魔が入っていた気がする。
「分かりました。それでは今度こそ国王様と姫様を会わせようではありませんか」
こうして夜遅くにようやく密会の場所が決まる。
魔王軍の目が届かずに国王様の安全が保たれる場所。
それがとても難しいのだが意外にもすぐに閃いた。
ボクたちが彷徨ったダンジョンがいい。あそこなら人の目もないはずだ。
さあ今日はこれくらいでいいだろう。
おやすみなさい。
姫も捜索中。
フーツと協力するだけでは埒が明かないので単独で調べることに。
ですが何から始めていいか迷っているところ。
とにかく女神様の言う愚か者の片割れは必ずこのロイデン村のどこかにいる。
それを突き止められるかに掛かっている。
ドンドン
ドンドン
とりあえず一軒一軒回って話を聞くが手掛かりどころか相手にもされない。
「はーい」
「実は…… 」
「ごめんなさい。私らは知らないんだよ。そう魔王様に伝えてくれるかい? 」
非協力的な村民。元々山奥の隔絶された世界ではよそ者は恐れられ嫌われる。
それがある意味普通のこと。ただどうも勘違いしている気がする。
ボクはアーノ姫であって魔王様ではない。
ただ魔王様にもなれるのであながち間違いでもない。
まさか嗅ぎ取ったか?
ドンドン
ドンドン
「悪いね。あまり他所の人に話すなって言われてるんだ。
本当に悪いね。でも私の辛い立場も分かってやってくれないか」
そう言われてしまえば反論できない。
ただ急に態度が変わったように見える。何かある?
「お姉さん…… あのね僕」
小さな男の子に話しかけられる。何か知ってる?
子供から聞くのはどうも。ただこれもこの世界のため。
やれることがあるならすべて試す。
「どうしたの? 」
優しく語りかける。いくら子供だからって油断はできないが。
「おいあんた! うちの子をどうしようってんだい! 連れて行く気だね? 」
母親らしき人物が血相を変えて飛んでくる。
「近づくんじゃないよ! 汚らわしい! 」
息子を守ろうと必死で言ってることは滅茶苦茶。酷い誤解を受ける。
どうしてこの美しい花のような姫が汚らわしいというのでしょう?
そんなことはあり得ない。撤回しなければただではおかない。
これ以上の侮辱は国王果ては国をも侮辱したことになる。
「少しだけでもいいのでお話を聞かせてください」
必死に頼み込むも決して縦に首を振ろうとしない。
「冗談じゃないよ! 忙しくて忙しくて。構ってられるかい」
どうやら村長辺りからお達しがあったのでしょう。
これ以上よそ者に関わるなと。あと少しと言うところで潔く身を引くことに。
「ほらこれ以上はダメだって言ってるだろう?
どうしてこの子は聞き分けが悪くなったんだろうね」
いつもいたずらばかりでウソまでつくんだからと子供を心配する。
「でも今夜もオオカミ来るよ。信じてってば! 」
男の子は面白い話を聞かせてくれた。
今この村ではオオカミがいて夜な夜な村を襲うとか。
「ほらいつまでそんなつまらないこと言わないの」
前はこうじゃなかったと嘆く心配性の母親。
可哀想に男の子は無理やり家に閉じ込められてしまう。
今はここに魔王様がいるから。事実出歩くのは勇気がいる。
仕方ない次の家。
続く




