魔王様毒殺
現世での消滅騒ぎもどうにか収まり残すはロイデン村にいる愚か者探し。
ロイデン村。魔王様集会場に乱入。
魔王様及び魔王軍のいきなりの派手な登場に困惑した表情を浮かべる村長以下。
「村長! 正直に答えろ! 化け物とは誰だ? 」
もう我慢できない。これ以上無駄な時間を費やせない。
「それは…… この村に伝わる伝説の怪物…… 」
適当なことを抜かして貴重な時間を奪っていく。
こいつらは何を考えているのだろう?
必死に話を作るが無意味だ。もうバレている。
「おいよく聞くんだ! 別に我々をどう思おうと勝手だし咎めるつもりもない。
ただ隠しごとや嘘はよくない」
「そんなことは…… 」
やはり自信がないものだからこれ以上言い訳できないらしい。
当然嘘な訳だからな。まったくつまらない嘘ばかり吐きやがって。
「もう一度言う。我々には隠しごとも嘘も通用しない。だから正直に答えてくれ」
こんな風に迫ること自体稀なこと。それだけ焦っている証拠。
「嘘などついてない。そうだろう皆? 」
「ああ。ワシらはそんな噓つきじゃない! 」
胸を張って嘘を吐く。とんでもない野郎ども。
「それこそ嘘だ! 嘘だ! 」
益々感情的になってしまう。このままではいざこざが起きかねない。
「落ち着いて。そうですね…… 誰もあなたとは言ってませんよ」
村長の隣の女性が苦笑いで白々しい嘘を。どうもこいつらは誰一人信用ならない。
「ほら落ち着いて。お茶でも一杯」
引きつった笑顔で勧める。これは何かあるか?
まさか毒でも入ってるんじゃないだろうな?
疑わしいがもちろん魔王様は不死身だから問題ない。勝手に入れるがいい。
「どうぞお茶でも…… 」
そう言ってお茶を勧めるので遠慮なく。ただ猫舌だからゆっくりだ。
魔王様は不死身で無敵だが魔王軍がそうとは限らない。
「渋いな。まあよい」
「ちっ! しぶといね」
どうやら本気らしい。どちらがモンスターか分かったものではない。
「ううう…… 魔王様…… 」
苦しそうに喉を抑え崩れ落ちる手下。一服盛られたな?
本気で毒殺する気だったらしい。とても信じられないが現実。
手の込んだ人間どもだ。しかし魔王様にはその手は通用しないぞ。
当然魔王軍も不死身ではないが普通の人間とも違う。
苦しんでいたモンスターは徐々に回復。
「あれこのおじさん誰? 初めて見る顔だね」
三人組の男の子たちが集会所に姿を見せる。
「こら! あっちに行ってなさい! 」
子供を守ろうと必死だ。だがそう簡単には見逃してやるものか。
「おいお前ら…… 怪物って誰のことを言ってる? 正直に答えるんだ! 」
大人がダメなら子供から。やってることは最低だがそれでも情報が得られれば。
「お前たち聞いてるのか? 」
「ああ化け物だ! おっかない顔をしてんなー」
一人が言うと二人目もつられるように。そして帰れコール。
三人の小さな勇者によって魔王様も形無し。子供には敵わないな。
「教えてくれ。化け物はこの魔王様でいいんだな? 」
「ああお前だよ! 化け物なら早くやられて来い! 」
とんでもない子供だな。だがこれは大人の話を聞いただけに過ぎず悪気はない。
ただ悪気はなくてもお仕置きぐらいはしなくてはいけない。
さあどうしてやろうかな?
「村長。どうやら怪物は我々のようだが。違うのか? 」
「待ってください…… 子供の言うことを真に受けるんですか? 」
「どっちだって構わない。それよりも最近おかしな者を見かけなかったか? 」
もう隠す必要もない。早くどうにかしたい。
それでも何もしようとしないから村民に対して怒りが爆発する。
「急におかしくなった奴なら知ってるよ」
子供が興味を抱くものでもないが一応は念のために。
「誰だ? 村長か? 」
「いや違う。俺の友達がいつも静かだったのに突然暴れ出して…… 」
格好をつけてるがまだまだ子供。現実と夢の区別がつかないのだろう。
「それはどこの誰だ? 」
当てにはできないがここまで来たら最後まで聞いてやろう。
「俺の近所の子。大人しかったのに急に怒り出して…… 」
友達の突然の変化に心を痛めてるらしい。
「よしその子のところまで案内してくれ」
「いいよ。どうせやることもないから」
「ではすぐに案内を任せる! 」
幼い男の子を連れ回すいけない魔王様の構図。少々情けない気もする。
その頃宮殿では。
ついに魔剣を発見。これで心配ごとが一つ減ったな。
とりあえず切れ味を確かめる。
ふう…… 精神を統一して目を瞑る。
瞑想を終え誰もいない中庭で闇雲に振り続ける。
五十も素振りをしたところで手に豆ができたのに気づいた。
ふう…… 疲れたな。さあこれくらいでいい。
連続攻撃を仕掛ける。
何と言っても相手は実体がない影。影を相手に何度も振り下ろす。
人間を相手にすることもあるが今は集中力を高めたいので一人で振り続ける。
「勝! 絶対に勝つ! 」
今度は決心を胸に目に見えない敵と対峙する。
この修業はとても高度ではあるが傍から見ると間抜けに映るらしい。
そこが最大の欠点。
「ああ。いたいた。こんなところで遊んでるんだから」
現れたのは幼馴染の彼女。
「お前な…… 田舎に帰るんじゃなかったのかよ? 」
いつまで経っても宮殿に留まる幼馴染。
おかしな噂を流されても困るので早く帰って欲しいのが本音。
とは言え寂しくなるような気も。だから強くは言えない。
「国王様が呼んでるよ」
「国王様が? 」
うわ…… まずいな魔剣発見の報告するのを忘れていた。
急いで国王の元へ。
続く




