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カウントフォー フーツ登場!

女神様に励まされ異世界へ。

魔王軍拠点の宿。

宿と言っても村に一軒しかなく食堂と宿が一体になってる。

当然だが我々以外にお客はいない。

今はまだシーズンではないからこんなんものだと呑気な主人。


あと三日…… どうする? どうすればいい?

いやいや魔王様がこれしきのことで音を上げてどうする?

ここはひとまず深呼吸。誰にも気づかれてはいけない。

ボグ―!

まずい。ついいつもの癖で雄叫びを上げてしまった。


「魔王様? 魔王様? 」

どうやらさっきから呼ばれていたらしい。ついぼうっとしていた。

「済まん済まん。それでどうだ? 」

「村に散らばったモンスターが戻って参りました。ただ手掛かりはゼロです」

報告を受けてもどうも女神様からの件が頭から離れない。

だからなのか他のことがどうでもよくなりつい疎かになってしまう。


「面倒だ。村ごと焼き尽くせ! 」

こうすれば絶対にターゲットは消失する。

これ以上ないくらいの作戦? 

大胆でそれでいて隙が無い。魔王様には相応しい非情さ。

「しかし魔王様いくらなんでもやり過ぎではないかと」

この魔王様に意見を言うとは何と命知らずな。

「黙れ! 時間がないのだ。反対する者は同様に焼き尽くすぞ! 」

有無を言わせない。


ここまで魔王様に染まるとははっきり言って思ってもみなかった。

何日も魔王様で居るとついこんな風に乱暴になってしまう。

ああもうコントロールできない。何て酷い魔王様なのだろう?

ただこれでもうこの魔王様を疑う者はいないだろう。


「落ち着いてください魔王様! 」

フーツが生意気を言う。

今までクマルとカンペ―キに隠れて目立たない存在だったフーツ。

それは魔王様自ら厳しくも優しくもせずにただ放置していたから。

そのフーツが今回の旅を率いるリーダーに任命されどんどん存在感を増していく。

多少目にかけたし陰ながら期待もした。だから彼の成長には感慨深いものがある。

クマルやカンペ―キにはない静けさがある。目立たないがいい味を出している。


「フーツよ。魔王様の命令に従えないと言うのか? ああん! 」

反抗的な奴はこの魔王軍に必要ない。

「滅相もございません。ただもう間もなく判明するかと。

ですのであまり感情的にならずに堪えてください」

「よい。それでよい。しかしなフーツよ。もう時間がない。

明日までに見つけ出さなければ戻るつもりだ。

もし明日までに見つからなければ…… 分かっているな? 」

無茶を言うってるのは重々承知。だがこれ以上は時間を無駄にできない。

どうにかして奴を捕まえて解決を図ってから三日後に備える。


「しかし魔王様それはあまりに無理が…… 」

「後始末を頼んだぞ。分かったな? 」

「ははあ! お任せください! 」

フーツに任せておけば心配ないだろう。

多少強引になったとしても見つけ出さなくてはいけない。


難航する愚か者探し。

よしここは魔王様自ら動くとするか。

今日は緊急の集会があると言っていたな。そこでならいくらか聞けるだろう。

それでも絶対に気を抜いてはならない。姫に接触しないよう注意しないとな。


魔王様は集会所へ。



再びの始まりの地。

目の前には何やら真剣な表情で話し合いをしている女神様と妖精。

どうも現世の話をしてるようだが何かあったのかな?

「あの…… まだ何か? 」

<言い忘れたことがありましたので再度お越し頂きました>

焦りが見え隠れするらしくない女神様。察するに現世で何かあったのだろう。

でもそれを悟らせないようにと微笑みを湛える。


<最後の三日間についてです。まず勇者のあなたから。一日目は勇者で固定。

もしここで二人を消滅させればあなたは生き残ります。

二人を犠牲にして勇者であるあなたが生き残るのです>

女神様は分かりやすく教える。しかしもっと別の言い方がありそうだが。


「生き残ってそれから? 」

<異世界でこの後の人生を満喫するのです。そうなればもう出る幕はありません>

どのみち妖精とも女神様ともあと三日でお別れ。

それだけでも相当ショックなこと。理解者がいなくなるのは相当辛い。

「それは残念です」


<私たちのことはどうでもいいのです。それよりもご自分のことを考えなさい。

一度も会ったことのない二人にそこまで愛着はないとは思いますが。

ですがそれでも二人を消滅させるのは堪えます。どれだけ苦しいか。

どれだけ耐えようと耐えられるものではないのです。

これは女神様が言うことではありませんね?

もし勇者で失敗し二十四時間以内に二人を消滅させなければ新たな世界に。

そこでは恐らくアーノ姫として勇者と魔王を倒すことになるでしょう。

とても女性の力では難しい。何と言っても魔王は魔剣以外では倒せません。

そこでも二人は別な者として存在します。仮にそこでも無理なら三日目に。

魔王として二人を消滅させるでしょう。それも二十四時間以内に>


最後の三日間の話を延々と続ける女神様。


<もし合計で七十二時間以内に二人を倒し完全な一人にならなければ……

いえ絶対に一人にならなければならないのです。

そうでないと異世界はそこで消滅してしまいます>

より具体的にその状況が浮かぶ。

果たしてボクはどうすればいいのか?

 

<迷える子羊よ。さあ己の思うように生きなさい。

勇者として尊敬される生き方も姫として幸せな生活を送るのもいいでしょう。

時には魔王様として好き勝手にやりたいでしょう? 選ぶのです>

あと三日でケリをつける。それが女神様の提案。


あの日あの時眠気によって引き起こした珍現象。その代償を払うのは当然の帰結。

覚悟はできている。ただ近づけば近づくほど決心が揺らいでしまうのもまた事実。

なぜこんなことになってしまったのだろう?


カウント・フォー

 

                  続く

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