魔剣の行方 宮殿内捜索
ロイデン村にはどんな願いでも一つだけ叶う願いの実があるそう。
これを口に含めば願いが叶うと言われる毒でその代償は計り知れない。
そもそもこの村のどこに生えてるかも不明。
消滅が近い今そんなことに割く時間は恐らくないだろう。
「最後に一つ。この村で最近様子のおかしい者を見なかったか? 」
不老不死の実はあくまできっかけに過ぎない。
我々は伝説の実などではなく愚か者の片割れ探しに力を注ぐ。
「小さい子が急に言うことを聞かなくなったぐらいかな。
大人はとなると急に変わったって話はないね」
「ああそうだな。初めからおかしな者が悪化したかまでは分からんがな」
老夫婦にはまったく心当たりがないと。まあ当然と言えば当然か。
転生者が乗り移ったのは最近のことだからな。
噂になるまでにはさすがに時間が掛かるか?
どうやら収穫はなさそうだ。
礼を言って外へ。
手下には急いで願いの実を探すように指示する。
見つけたら住処に持ち帰るようにと言い含めた。
ここまですれば問題ないだろう。消滅までに見つかればいいのだが。
どうであれもう一つの方に集中できる。即ち現世からの旅人探し。
愚か者の片割れの現在地を探る。
うーん。今のところ手がかりがまったくない。一体どこに隠れているんだ?
このロイデン村にいると女神様は言うが本当に正しいのか?
疑いたくはないがここまで動きがないのはやっぱりおかしい。
このまま本当に信じていいものか不安になる。
この世界に散らばった異分子を排除することが我々の共通の目的。
彼らを放っておけばいずれ世界が崩壊してしまう。
それだけは何としても避けなければならない。
そう意気込むがこれが極悪非道な魔王様のすることなのかと思い悩むことも。
とにかく早くその者を探しださなければ落ち着かない。
見えないターゲットをいかに早く探し出すかがカギとなる。
ヒソヒソ
ヒソヒソ
どうも外を歩いてると噂されてる気がして落ち着かない。
ここには魔王様やモンスターは珍しいのだろうか?
まあ当然か。本来モンスターは人間から畏怖の対象として見られている。
この村のように迷信深ければより一層避けられ恐れられるのだろう。
当然分かり合えないのは百も承知。
とは言えただの客でもあるのだから少しは歓迎して欲しいものだ。
それがどんなに我がままな願望だとしても。
まずはもう一度話を聞いてみるかな。
その辺の者から順に聞いて回るが誰も首を振るだけでまともに答えようとしない。
うーんどうしたらいい?
その頃宮殿では魔剣が消えたと大騒ぎ。
果たしてどこに行ってしまったのか?
王命により魔剣の捜索に当たっているが……
自覚はないもののどうやらボク自身が持ち出したらしい。
これはまずいことになったぞ。
ボクは記憶がない。曖昧レベルではなくまったくないのだ。
それなのに探さなくてはならない状況。
王命だから無視もできない。そもそも魔剣がなければ魔王様は倒せない。
それは何を意味するかと言うと死だ。ボクだけではない。
この世界そのものが終わってしまう。
そうなる前に何としても探し出さなければならない。
最悪なことにお助けキャラの妖精がいない。
女神様のところで動きを止められてしまっている。
だからボクが魔王様や姫になってる時にどこでどうしたかの把握ができない。
これは思ってもみなかった緊急事態。
いやどちらかと言うと前々から危惧していたこと。
よりにもよって今と言う最悪のタイミングで起こってしまった。
意識のない中での行動は自分ではどうしようもない。
他の信頼できる者に頼るしかない。
それにはある程度の事実と正体に仕組み等を告白する必要がある。
だからそれには信頼の置ける人物がいいがボクが隊長に上り詰めた以上難しい。
当然気が狂ったと囚われて幽閉されかねない。
だから慎重にもなるのだが協力者に適任なのは元隊長ぐらいだが野心がある。
さすがに弱点をさらけ出すのはまずい。
そうすると同部屋で同郷の奴とかだがあまり当てにならないしな。
最終的には幼馴染のブシュ―になるのかな?
でも邪険に扱って村に戻るように言ったから無理だろうし。
さあ誰に相談すべきかもはや候補がいない。
せめてこの宮殿内にあるのか? それともどこか別のところにあるのか?
それさえも不確かな状況。
まずは国王へ報告だ。
謁見。
「どうした魔剣は見つかったのか? 」
「それがどうやら持ち出した者がいるようなのです…… 」
一応は報告の形を取る。だがその犯人は自分だからやり辛い。
「そんな愚か者がいると言うのか? 」
国王は大変お怒りになられてる様子。気持ちは分かるが少しは抑えて欲しい。
「はい。今その者を全力で探してるところでございます」
「まったく何と言う奴だ! ひっ捕らえてこい! 」
国王は怒りに任せて言い放つ。これは本当にまずい展開。
やはり姫のこともあって神経質になっておられる。
「それでは萎縮してしまいます。ボクが密かに接触し説得して見せます」
自信を見せる。これで国王も信頼してくださるだろう。
「よしではお前にすべて任せよう。とにかく急いで魔剣を取り戻すのだ! 」
国王の態度が軟化した。
「ありがたき幸せ! 必ずや見つけて参ります! 」
これで僅かでも余裕ができた。
後は持ち出した本人に聞いてみる。
と言ってもボクなのでそれも不可能。
ふう…… どうしてこうなった?
急いで捜索に当たる。
続く




