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願いの実

ロイデン村。現在廃屋と化した一軒家を住処にしている。

「どうしようかね? 不老不死の実は存在しないとさ」

村の者から直接聞いたのでまず間違いないと。

確かめもせずに諦めて帰ろうとするらしくない魔女。

確か魔王様でも似たような話を聞かされたような気がします。


「一晩泊まって明日にでも戻ろうかね」

魔女は完全にやる気を失っている。

せっかくこんな山奥の田舎にまで来たのに無駄足になったと嘆く。

魔女なんだから自分で作ればいいとはさすがに言えない。

やる気を失った魔女を引き留めるにはどうしてもあのことを話しておく必要が。

ですがタイミングが難しくて。どうも言い出せずにいる。

しかしぐずぐずしていれば取り返しのつかないことに。

それだけは何としても避けなければなりません。


「それなら人探しをしましょう」

自然な流れで提案してみる。とは言え人探しはハイキングなどと違い高度なもの。

さすがに怪しまれてしまう。これはもう致し方ないこと。

「人探し? 人探しねえ…… 」

訝しむ魔女。それは当然か。突拍子もない話なのだから。

「そう人探し」

「人探しとは姫は誰をお求めに? 」

そう問われるとどこからどこまで話したらいいのか迷う。

確かこの魔女も元々はお助けキャラだったはず。

それなのにいつの間にか暇だからと暴走をはじめ様々な依頼を受けるように。

おかしな薬まで作り始めてしまう。これではどう信じていいか分からない。


「ああ…… はいはい。言わなくても王子様だね? 

姫はどこぞの王子に恋をして…… 」

勝手に話を作る魔女。そんな単純なはずがない。

ボクだってできるならゆっくり何も考えずにお留守番していたいよ。

ほんのちょこっと不老不死の実には興味がありましたが。

しかしやはり女神様の命令を実行しなければこの世界が危機にさらされる。


「違います! 」

「違うのかい? てっきり山奥に逃げ隠れた異国の王子に会いに来たのかと。

ロマンチックな話だよ」

どうものんびりでいけません。今はそんな状況にない。

ボクにしろ魔女にしろ今の緩い状況に慣れ現状を認識しづらくなっている。


「実は…… 逃亡者がこの辺りに隠れ住んでて…… 」

「逃亡者? この山奥のロイド村に? 」

とても信じられないと。一体何の話をしてるのかと首を振る。

「お願い! 一緒に探してもらえない? 」

ここまで真剣に頼み込まなくてもお助けキャラだから当然なんですが。

それでもすぐにはうんとは言わない。疑いの目を向けてくる。


「なぜ姫がそのようなことを? 」

「ボクの事情を知ってるでしょう? 」

「はあ。確か間抜けにも三つの肉体を掛け持ちしてる奇特な存在」

納得はしないが大体そんなところ。

ただ性格はその都度変わっている。


元々のボクに一番近いのはノア。無理することなく自然に振る舞える。

アーノ姫ではおしとやかに姫らしく。

魔王様の時は凶暴で情け容赦のない性格。

どうやらキャラごとに多少引きづられているのでしょう。


「はあそう言えばすっかり忘れてたね。いつでも力になるよ」

自分のことにかかりきりで役目を忘れていた魔女がようやく目覚める。

「女神様が探してこいと」

「女神様がかい? それはまた厄介な話だね」

魔女もついに積極的になる。

当初は使命に燃えていたのにいつの間にか閉じ込められるだけに。


魔王軍は魔王の命によって決して魔王様のもとへ連れて行かずに見守ることにした。

クマルが監視についたもののただの世話役に成り下がった。

だから魔女にしろクマルにしろボク自身にしろやることがなくなってしまった。

それでもクマルは食糧を届けたり見守りをしたりと忙しい。

当然そこまで頭がいい訳ではないことも関係してる。


その点魔女は下手に動けなくなり身動きが取れなくなってしまう。

ついには依頼を受けることに。

そうやってここまで来た。今こそお助けキャラとしての力を発揮してもらいたい。

こうして明日からどこにあるとも知らない不老不死の実探しをやめ人探しに移る。

さあこれで少しは楽になったでしょうか?



その頃。魔王様は。

手下を連れ不老不死の実について聞いて回る。

その甲斐あったのか不老不死の実にまで辿り着いた。

だがそれはただの噂に過ぎず振り出しに戻される。

だがそこでついに真実を知る者が現れた。


崖の側に住む夫婦の家にお邪魔することに。

「はいお茶だよ。ゆっくりして行ってね」

「いやその…… 」

魔王様はお茶を飲まないんだがな。猫舌だから水にしてくれないかな。

「気にしなくていいぞ。時間はたっぷりあるからな」

頼りになる男ですが果たして不老不死の実の真実は?


「おい! もったいつけずに教えろ! 」

もうイライラするな。のんびりお茶など飲んでられるか。

「あらま。お茶はお口に合いませんでしたか? それともお茶だけでは不満? 」

ボグ―!

怒りのあまりつい吠えてしまう。ああ情けない。これが魔王様?

「いいから早く頼む! 」

「おおそうだね。この噂は実は私たちが流したんだよ。

他所からの客を呼び込むためにね」

「ではまったくのでたらめだとそう言うのか? ふざけるな! 」

つい怒りから冷静さを失う。


「いや待ってくれ! 願いが一つ叶うだけだ」

「願いが? 」

「ああ…… あの実は不老不死にはなれない。

だが奇跡が起こせると言われている実は確かに実在する。

だからもし願えばもしかしたら叶えられるかもしれない」

これがこの村に伝わる伝説の一つだとか。

しかしどうしてこんなおかしなことになっているのだろうか?

 

問題はどのようにすれば願いが叶うのかは明確ではない点。

食べればいいのか? そこが不確からしい。

「とにかくその実をどうにかすればいいんだな? よし分かった。

これは感謝の気持ちだ。受け取るがいい」


魔札。これを手にするとモンスターどころか化け物に獣等まで寄り付かなくなる。

「ああ悪いね。だったら遠慮なく」

疑いもせずに怪しげな魔札を受け取る。まったく人のいい連中だ。


                 続く

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