不審人物を探せ!
引き続きアーノ姫のターン。
現在ロイデン村の廃屋と化した一軒家を勝手に使わせてもらっている。
魔王様も村へ。ここからは一層慎重に行動しなくては。
ドンドン
ドンドン
廃屋のはず…… なぜ叩く音が?
まさか風のいたずら? それとも何かしらの精?
前回は山の精の悩みごとを解決して喜ばれたっけ。
では今回もその手の現象? それとも霊的な何か?
ドンドン
ダンダン
ボクたちの存在に気づいたらしい。
もしかして入って行くところを見られでもした?
そう言えば嫌な視線を感じたような気が。
「どうしようかね? 」
魔女も迷っている。でもこのまま放っておく訳にも。
「お願い」
ここで仮に魔女が捕まってもボクさえ無事なら問題ありません。
魔女を置いて一人逃げてしまえばいい。
そんな非情な決断をする時がいつか来る。
「はいはい分かったよ。では念のために隠れてるんだよ」
もしこれが魔王軍だったら取り返しのつかないことになる。
乱暴者だからきっと家中を引っ掻き回し探し出してしまうことでしょう。
とにかく打てる手は打っておく。
ドンドン
ドンドン
どうやら相手は開けるまで叩き続けるらしい。
「はいはい。何だい? 」
「ああやっぱり居ついとったな。困るでそんことされたら」
山奥のロイデン村には登山客が迷い込みそのまま居つくケースがあるのだとか。
「悪いね。数日で出て行くからそれまで頼むよ…… 」
粘り強い交渉を続ける魔女。ここで引く訳には行かない。
「仕方ない。だったらそれまで好きにしてな。でも迷惑は掛けるなよ」
物分かりのいい住民で助かる。
せっかくなので色々お話を聞こうと張り切る魔女。
「ここには不老不死の実があると聞いてね。ご存じない? 」
もう思い切って聞くことにしたらしい。多少疑われても前に進む方を選んだ。
「ああん? 不老不死の実? 何だいそれ? 」
三人が三人とも聞いたことがないと言い張る。
彼らが演技してるようにもできるようにも見えない。
そうすると噂は噂でしかないのか。
「思い出して! いつかどこかで聞いたことがある? 違うかい? 」
必死に迫る魔女。どうにか話を聞き出そうとする。
そう言えば魔女は不老不死の実を本気で探していた。
一体何に使うのでしょう? どうせロクなことに使わない気がしますが。
何だか隠れるのも一苦労。会話がこもって聞き取りづらくて仕方ありません。
だから無意識に近づいてしまっていた。
「あれあんた一人じゃないのかい? 」
隠れるつもりがつい動いてしまい全体を隠せず奇妙な生物として受け止められた。
ほほほ…… 笑って見せるがまったく相手にしない。
村人は三人。お爺さんが二人とお婆さんが一人。
彼らはこの村の世話役だそうで面倒事を処理していくのだとか。
ボクにはあまり関わりのないこと。
それよりも肝心の愚か者をどうにか探し出さなければならない。
「最近村でおかしなことはありませんでしたか? 」
仕方ないので挨拶をする。
「あんたは娘さん? ちっとも似てないね」
遠慮のないお婆さんが魔女を傷つける。
「おいおい気の強いところ何かよく似てるじゃないか。動じないところとかもね」
お婆さんの失礼な態度をどうにかごまかそうと必死だ。
ですが似てるはずがない。ボクたちは親子でもないし親戚でさえない。
ただの魔女と弟子と言う立場を強調する。実際は姫とお助けキャラですがね。
「何だお子さんでもなければお孫さんでもないのね。それは悪かったさ」
そう言って笑う。まあいいかこれくらいのこと。
「それで…… 」
「ああ…… それなら一人だけ心当たりが。ホラあの人だよ」
ターゲットは何でも男らしい。
「前会った時は何ともなかったんだが急におかしな呪文を唱えてね。
あれはきっと憑りつかれてるんだよ」
「そうそう。あれは絶対に何かある。俺はそう思う」
噂の彼を紹介してもらおうと思ったのですが村の者を売るようで心苦しいと。
何でも村唯一の発明家だそう。そこまで分かればたどり着けるでしょう。
こうして一歩前進。
急いでその男を探すことに。
その頃。宮殿では話し合いが行われていた。
「帰って早々に済まない。どうしても話しておきたいことがあって…… 」
祭りから戻ってきたボクは国王の相談に乗る。
「どうされました? 」
「それが…… いつの間にかなくなってしまったんだ」
国王がはっきりしない。その中身が大事なのであってそれなしでは話は進まない。
分かってると言うのにまだ時間稼ぎをするつもりらしい。
「お願いします国王様! 一体何がなくなったと言うのですか? 」
どうせ大したものではないと勝手に決めつけていたがまさかのあれ?
「ほらなかろう? これは私のせいではない。それだけは分かってくれ」
まったく何を言ってるんだろう。
「国王様? まさか本当に魔剣をなくしたとおっしゃるのですか? 」
ただ頷くだけ。決して自分の口では言おうとも認めようともしない。
往生際が悪いが相談した以上取り戻すことも可能と考えてるはず。
「魔剣を持ち出した者がいるようなんだ。それが誰なのか皆目見当がつかない」
必死に探すもないとそう言うだけ。
とにかく消失の経緯を話してもらうことに。
それによるとどうも男ではなく女ではないかとの結論。
いくら国王でも魔王退治の剣を失くせば裁きを受けることになる。
「明後日までに探してきて欲しい」
いきなり期限を決めて探し出すように命令する。
「これはあの…… 」
「王命である! 急いで探し出してくれ隊長! 」
とんでもない国王もいたもの。なぜボクがそこまで尻拭いしなければならない?
「どうだ。やってくれるな? 」
もはや頼みと言うより強制に近い。いくら断ろうとしても無駄らしい。
「ははあ! 仰せの通りに! 」
畏まって応じる。
まったく困った国王だ。こんな時に何をさせるんだよ。
姫と魔王様が現世からの愚か者探しをしているって時に。
それだけでなく不老不死の実までだからな。
対してボクは消えた魔剣の行方を探る羽目になるとは情けない。
これも日頃の行いが悪いからこうなるんだろうなと勝手に納得。
またしても難題を押し付けられた。
確か前回は魔剣が収められてるコレクションルームの鍵がなくて探して回った。
しかも宮殿内に留まらずメイドの故郷まで出向いたっけ。
とにかくコレクションルームを探ってみるとするか。
魔剣が消えた現場へ。
続く




